2話 拒絶
僕は、目覚めると暗闇の中にいた。
苦しい、ここはどこだ?
真っ暗で何も見えない。
僕は、理解が出来ず混乱し、焦る。
「我に破壊と力を示せ、エクスファイア‼」
僕はとっさに魔術を使った。
次の瞬間、辺り一帯が吹き飛ぶ。
焦っていたとはいえ、自らの行いは間違いなく失敗であった。
爆風と共に、僕は日のあたる外の世界へと吹き飛んだ。
体中が痛い、さっきの行いは自殺行為に等しい。
「ここは……」
ここは墓場だった。
ウェストヘイル、僕の故郷だ。
「確か、僕はさっきまで首都のスタックにいたはずだ……母は?そうだ、僕は母を生き返らせたくて……」
墓の名前を見る。
目に移った文字に絶句した。
(ヴェルフリッツ・バーイヤー ここに眠る)
冗談の様な状況に僕は焦る。
「とりあえず、屋敷に行こう、父がいるはずだ」
これは一体どういうことだろうか夢ではないのか?
僕は記憶を頼りに、屋敷へと向かった。
屋敷に着き、衛兵が目に入ってきた。
「お前は誰だ?怪しいやつめ」
衛兵が僕を見ながら、槍を持つ手に力を入れたのがわかった。
「僕は、ヴェルフリッツ・バーイヤー。父に会わせてくれませんか?」
僕の言葉に衛兵は一瞬ギョッとしたような表情をする。
しかし、すぐに衛兵は、動揺を振り払い僕に言った。
「小僧、ヴェルフリッツ様はもういない、変な遊びなどに付き合ってはいられないんだ、ここから去るがいい」
僕は引き下がれない、僕は本当のことを言っているのに。
「お願いです、通して下さい」
僕は必死に頭を下げた。
その時。
「何事だ?騒がしい」
僕の父、オクトー・バーイヤーが現れた。
長い髭をたくわえ、白髪交じりの茶色い髪を生やしている。
「お父様、僕です……」
そう言いかけた瞬間、頬に痛みを感じた。
僕は驚き頬に触れた、血が流れている。
「その冷たき切っ先で全てを貫け、アイスランス‼」
オクトー・バーイヤーがそう言った瞬間。
僕の周りに氷の槍が無数に展開し、僕は、その槍に全身を貫かれ、気を失った。
「オクトー伯さま、いかがなさいましょう?」
衛兵がそう言うと。
「川にでも投げ込んでおけ、我が息子、ヴェルフリッツは死んだのだ。愚弄する者は許さない」
オクトー・バーイヤーはそうつぶやいた。
「お父様、何かあったのですか?」
奥から教会の治癒術師の姿をした女の子が現れ、オクトーに尋ねる。
「いや、何もない。レーヌ遅れぬように首都へ……」
オクトー・バーイヤーと少女はそう言いながら屋敷の奥へと消えて行った。