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12話 クディア商会の悪夢

 イルギットの元にたどり着く。


 僕は息を切らし肩で呼吸をしていた。


 イルギットは驚いた様に目を見開く。


「ヴェルフ、確かお前は教会で治療を受けていたはずだ、後1か月は動けないと言われていたはずだが……1日で起き上がって大丈夫なのか?」


 そんなことはどうでもいいのだ、ガランが心配だ。


「イルギットよく聞いてくれ」

 僕は夜道での襲撃のこと、あれはガランを狙っての攻撃であったことなどをイルギットに伝えた。


「つまり、相手の標的はアールド国の輸送部隊の妨害。アースルド様の暗殺はクディア商会の輸送部隊の部隊長を狙ったものであり、それをさとられないためのカモフラージュ……私見だがあわよくばクディア商会の弱体化、さらにそれにより輸送部隊の妨害も兼ねているように見える」


 イルギットは僕の話から考察し、話をまとめ、そして強くうなずきそう言う。


「ガランを保護するべきだな……ヴェルフリッツ、お前はケガ人だ、休んでいろ」


 イルギットにそう言われたが、そんなわけにもいけない、僕がここにいるのは、レーヌの命令でもある。


「イルギット、僕もレーヌ様から命を受けている、動ける以上その命に従わなければならない」


 イルギット少し考えていたが。


「ならば、ついて来い。また怪我はするなよ」


 僕達はクディア商会にガランを保護するために向かうのだった。




 僕とイルギットはクディア商会までやってきた。


 だが、そこには異様な空気が流れていた。


 逃げ狂う人々、その人々を襲う化け物。


 恐ろしい光景がそこには広がっていた。


「これは……」

 イルギットと僕はあまりの光景に一瞬言葉を失う。


 人の下半身に狼の上半身をした魔物達が人々を襲っていた。


「行くぞ、ヴェルフ」

 イルギットの言葉に僕も深くうなずき、混乱の場へと踏み込んだ。




 狼の化け物が数匹でクディア商会の人々にゆっくりとにじり寄っていた。


 もう逃げ場はなく、絶体絶命。


 その中に、怖がるルーミットを抱き寄せているガランの姿があった。


「お父さん、お母さん、助けて……」

 ルーミットがそう叫んだ。


 狼の化け物の一匹が、衝動に耐えきれず、走り込んできた。

 それを合図の様に化け物達はいっせいに動く。


 だが、次の瞬間。

 狼の化け物達は、氷の壁に激しく頭をぶつけ、そして数匹が悲鳴と共に、氷の槍に貫かれ、絶命した。




 間に合ったか、いや最悪な状況には間違いない。

 道行く人を助けてきたが、食われている人も何人かいた……


「その冷たき切っ先で全てを貫け、アイスランス‼」


 僕はそう言って氷の槍を連続発射する。


 その場の狼の化け物を僕は一掃した。

 僕は魔術を使った影響で、痛みによろめく。

 それを隣にいたイルギットに支えられた。


「あなたは!」

 ガランが僕の元に走って来る。


「ガラン、ルーミット。無事だったか」

 僕はそう言いながら少し安心した。


「誰か状況を説明できる者はいないか?」

 イルギットが数名にたずねる。


「俺らの商社の中から、化け物が出てきて……それで」

 クディア商会の男の一人が悲痛な声でそう語った。


「なるほど、にわかには信じがたかったが……」

 イルギットは悔しそうな顔をする。


 僕も、この状況は引っかかることがある。

 魔教、力や富と引き換えに魔族を崇め、人の道を踏み外させる、禁教……


 クディア商会の中でそれが行われていたのかもしれない。


 だが、今となっては調べようがない。


 僕達はクディア商会の生き残りを護衛しつつ、撤退した。


 狼の化け物はルーン・スタック兵によって掃討され、その後イルギットがめぼしをつけていたクディア商会の一派から、魔教に手を出していた者がいると言うことが発覚。


 暗殺者集団、黒の首が関わっていたこともあり、黒の首、もしくはその雇い主の犯行とされた……


 しかし、まだ不明な点も多く、事件の真相は闇の中。

 この様な状況であったが、この件はイルギット達に託され、僕はレーヌの命でウェストヘイルへと戻ることとなった。


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