11話 夢の中で
「ヴェルフリッツ!ヴェルフリッツ‼」
僕は暗闇の中で、僕を呼ぶ声を聴いた。
僕は目を開ける。
そこは白いモヤのかかった空間が広がる不思議な場所だった。
ここはどこなのだろう?
そう言えば、先ほど聞こえてきた声の主は……
「ヴェルフリッツ」
僕を呼ぶ声が後ろでし、僕はその声を聴いた瞬間ハッとする。
忘れようがない。
そう忘れられるはずがない。
振り向くとそこには母であるヴェレーナ・バーイヤーが立っていた。
「ヴェルフリッツ、私の可愛い息子……」
お母さまの言葉に僕は泣きそうになる。
「お母さま!」
僕は母の元へ走ろうとするが、なぜか距離が縮まらない。
「ヴェルフリッツ、こちらへ来てはいけません」
母の言葉に僕は足を止める。
「なぜです?こうしてまた会えたのに……」
ヴェレーナは、僕の後ろを指す。
僕がそちらを振り向くと光が迫ってきた。
「あなたはこれから大切な役割を果たさねばなりません。レーヌを彼女の血族を守るのです……私があなたに託した永遠の命を使って……」
母の姿がゆっくりとモヤの中へかすんでいく。
「お母さん待って‼」
そう言おうとした僕をまぶしい光が包んだ。
僕が起き上がると、白い天井が見えた。
あれは夢だったのだろうか……?
僕はまだ死んでいないのか?
僕が目を覚ますと、教会の治癒術師が僕の様子をじっと見ていた。
「あなたは猛毒に侵されていました、生きているのが奇跡です。ゆっくりと休んでください」
治癒術師はそう言ってその場を後にする。
僕は気絶する前の自分のことを思い出し、ベッドから飛び起きた。
ガランは無事なのか?
このことを誰かに、そうイルギットに話してガランを保護してもらわなければいけない。
教会の治癒術師が、急に動き出した僕を必死に呼び止めようとした声を振り切り、イルギットの元へ急いだ。