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第21話『アルト・ザ・トビー』


 どこの国でもそうだが、外国に集団で移住した場合は同じ出身者たちでコミュニティを作る。中国人街とか、ブラジリアンタウンとかそういうのだ。

 日本人もあちこちの国に日本人街を作って集まっている。基本的にそういったコミュニティ内ならある程度の秩序と常識を共有できて安心なんだろう。


 ここ三岳島も日本人は数百人ぐらい居るんじゃなかろうか。冒険者のみならず、飲食店や生活雑貨店、床屋に銭湯などの店を出している移住者も多い。

 そういった日本人の店や宿が集まっているエリアもあって、また日本人グループ的な繋がりである程度の互助をし合っている。新人冒険者をベテランが引率するとか、休日に集団で日本へ戻って過ごすための船を出すとかだ。

 オレも日本人なんだが、そういった集団からは微妙に距離を置いていた。向こうからは認識されているんだがな。


 日本人街(つってもせいぜい二十軒ばかりの通りだが)は比較的治安はよく、通りをメカルスが数台常に警備している。グループがカネを出し合って治安維持のためにレンタルしているからだ。他の街だとオケアノスが管理しているエリアぐらいしかやっていない。

マメというか、基本的に平和ボケしている日本人的にはこれぐらいしないと安心して生活できないんだろう。荒くれの元漁師なオッサン冒険者ですら。


 で、ここにあるのが『日本会館』という集会所的な建物だ。日本人が集まる休憩所で、仮眠室も利用できる。日本政府や一部の企業が補助金を出して設立した日本人用拠点だ。目的としては邦人の保護、異海情報の収集、会議室なんかも備えている。

 宿を失った日本人なら一日ぐらい泊めてくれるはずだ。たぶんだけど。泊まったことねえわこの三年間で一度も。

 日本会館の入口近くにやってきたところ、悲鳴が聞こえた。


「ひいいい!」


 転げるように建物の中から走り出てきた男が、必死な表情で後ろを見ながら逃げようとしてオレにぶつかってきた。ぶつかりオジさんか?


「邪魔だ!」


 おまけになんかそう文句をつけてきた。


「手前が邪魔だろうがボケ!」

「ぎゃあ⁉」


 怒鳴ってきた顔つきの悪いオッサンの股間あたりにヤクザキックして突き放す。三岳島でぶつかりオジさんは強盗と同義の危険存在だ。

 タマタマにダメージを負ったのかよろけながらも逃げようとするオッサンだったが、背後から小型の鈎縄(フック付きのワイヤー)が飛んできて体に巻き付き、地面に引き倒された。 

 うめき声を上げて蹲るオッサンに向けて、鉤縄の一方を持ったやつが会館からゆっくり出てくる。


「ファファファ、逃げようとしても無駄なのです。トビーは捕縛術も使えるのです」


 妙な笑い声と共に出てきたのは身長二メートルぐらいのごっついプロレスラー的な体型をしたメカ──強化アーマーだ。

 日本の総合警備会社『フジバヤシ・テック社』の開発した、試作型強化アーマー『トビー』。どことなく忍者を彷彿とさせるデザインをしていて、実際に手裏剣ドローンや爆弾クナイ、マキビシランチャーなど明らかに忍者趣味に特化した兵器を使って冒険者として魔物を屠っている、三岳島では貴重な日本の強化アーマー乗りだった。

 センセイの巨体に比べるとかなり小型だが、あっちが完全に搭乗型ロボなのに比べてこっちは身に纏うスーツの延長に近い。


「おや? そこにいるのはアルト殿では。こんなところで珍しい」

「おう。なにやってんだトビー。オヤジ狩りか?」


 一応は日本人として三年ぐらい活動しているオレと顔見知りである。トビーはまだ一年ほどだが、どうやら政府関係者に雇われてこの島で冒険者をしながら情報収集をしているらしい。

 トビーは「ファファファ」と独特の拍子で笑ってから言った。


「そこの男は日本国内で指名手配されている強盗なのです。トビーは三岳島に渡った日本人犯罪者の逮捕と引き渡しも務め。日本会館で見つけたので捕まえたのです」

「マッポの手先の自警団かよ。近くで悪いことできねえな」

「大丈夫。あくまで日本国内から逃げてきた犯罪者が対象で、日本人が三岳島内で事件を起こそうが管轄外なのです」

「ふーん。お偉い使命ですこと」

「犯罪者一人捕まえるごとに百万円の特別ボーナスが出るのです」

「おい。さっきのやつオレが協力したよな。ボーナス山分けにしないとバチが当たるんじゃねえの? いやむしろオレが八割捕まえた感じで」

「そんなことより、今日はどうしたのです? アルト殿。この界隈に近寄るのは珍しい」


 そんなことで済ませられてしまった。


「チッ。住んでいたイカダ小屋を追ん出されて宿が見つからねえから、会館の中で寝ようと思って来たんだよ」

「そういうことですか。周縁部再開発の情報は聞いているのです」

「ひょっとして同じように追い出された日本人冒険者が来ているか?」

「いえ、イカダ小屋に住んでいる日本人冒険者はアルト殿ぐらいでして。正直、あんなプライバシーも盗難対策もない野宿一歩手前な木賃宿、大抵の日本人だと耐えられず別の宿を探しますから」

「軟弱な野郎どもだ。いやまあ、週に一回は夜中に押し込み強盗に来たやつを半殺しにして海に流すけど」

「正気じゃないのです」

「だよな。あいつら人のイカダをなんだと思ってやがるんだ」

「そんなところに寝泊まりする人がという意味ですけど……まあ、とにかく仮眠室は空いているのでどうぞなのです」


 トビーは手配犯のオッサンになにやら注射して眠らせ、担いで会館の中へ戻っていった。手慣れているところが冷酷な殺人マシンっぽいな。

 オレもそれについていった。初めて入ったが会館の入ってすぐはラウンジのようになっていて、テーブルと椅子が並べられていて、無料の茶とコーヒーとポットも置かれている。もう夜だからか、会館の職員らしい男たちがテレビを見ているぐらいしか人は居なかった。鹿児島県のスポーツ情報を伝える番組『チェスポ!』だ。

 日本人向けの集会所とはいえ、ラウンジで飲み会をするのは推奨されていない。そういうのは日本人が経営している飲み屋とかでやってカネを落とせという方針だからだ。


「そういやトビーがこの会館の用心棒なんだっけか?」

「ファファファ。ここには強化アーマー用のメンテルームもあるので、実質トビーの拠点なのですよ」

「まあ、確かにそこらの宿じゃあ整備もできんか」

「食料はあそこ、お風呂とトイレはあっち、ロッカーは空いているのを適当にどうぞ。ではトビーはメンテルームに行きます」

「おう」


 指し示した方向には日本製のカップ麺やレンチンご飯、レトルトカレーなんかのザ・独身男性の保存食みたいなのが置かれた棚があった。残念ながら無料ではなく、セルフレジで会計するようになっている。風呂なんかも電子マネーで支払って利用するみたいだ。まあ、タダだとホームレスみたいな連中が入り浸るからか。

 意外に居心地が良さそうではあるんだが……カップ麺を三つ取ってきて全部にお湯を淹れ、テーブルに座るとテレビ見ている職員の若えやつがこっちに気づいて声を掛けてきた。


「おっ! あんた、界村アルトじゃないか! 甲子園で失格になった! ニュースで見たことあるぞ!」

「うるせえよ、人の黒歴史を掘り起こすな」


 ほら来た。なんか顔を知られているから面倒なんだよな、日本人の集まりって。

 あれはもう三年前ぐらいか。震災で中止になっていた甲子園が改めて開かれた夏。オレは高三で、地元校野球部が最期の思い出作り(卒業だけじゃなくて学校も閉校することになっていた)ってことで、クラスメイトを野球部の助っ人にして大会に出た。

 で、一番肩が強かったオレがピッチャーをして勝ち進んで、甲子園一回戦も完封勝利したんだが、大会中にオレがパチ屋に行くところをパパラッチされて大問題になりチームごと失格。前代未聞の出来事として全国ニュースになった。そんときにオレの顔もテレビが延々と報道しやがった。

 おかげでこうして顔を覚えている、全く知らん他人に声を掛けられることもあって鬱陶しいんだ。


「なあなあ、失格になったけどスカウトとか来なかったのか? 大阪桐蔭を完封だろ? 球速も百六十キロ出ててさ、甲子園史上最速って言われてたろ」

「オレは野球嫌いなんだよ。ついでにマスコミも嫌いになった」

「自業自得すぎる……勿体ねえなあ。甲子園最強ピッチャーとか言われてたのに」


 シッシと手を振って会話を打ち切って追い払い、懐かしのカップ麺を啜る。

 そんな性格なもんで、日本で生活していても会社に就職とかはできなかったろうな。もともと高校卒業したら漁師になるつもりだった。商売上の付き合いとかなら漁協のオッサンたちとも仲良くやれていた。

 だから冒険者は性があっているといえばそうだ。命の危険が週替りで訪れるところがデカすぎるデメリットなんだが、少なくとも借金返し終えるまでは止められない。

 それにしてもカップ麺三つは飽きるし伸びるな。なんで同時にお湯を淹れたんだオレ。


「ふう。ぼくもお腹が空いたのです」


 そう言いながらラウンジに入ってきたのはやたらチビな人間だった。

 身長はわずか一メートルちょっとぐらいか。五歳児か六歳児ぐらいの背丈ぐらいしかないが、歩き方はしっかりしている。顔もそれぐらいに幼く見えるが、未就学のガキに比べたら理性と知性がありそうな表情だった。


「おいちびっ子。なんでこんなところに居んだよ。お家に帰ってミルクでも飲んでろ」

「ぼくのホームなのに酒場のチンピラみたいな言葉掛けられてビックリなのです」

「あん? その口調は……トビーか? 中の人ってそんなガキンチョだったのか?」


 しげしげと改めてそいつを見る。前髪で片目を隠した幼い風貌で、性別もわからんぐらいの幼児だ。たぶん男か? 体はいっちょ前に強化型ダイバースーツを着ているが、よくそんな体型のやつあったなって思う。

 センセイは強化アーマーの中から人魚が出てきて驚いたもんだが、トビーの中も変なやつのようだ。


「ガキンチョではないのです。単に成長が止まってしまっているだけで大人なのです」

「そりゃまた難儀な」

「そういうのが出やすい家系なのです。利用して軽業の芸を代々やっていて、今はトビーの操縦者をやっているだけなのでなにも問題はないのです」

「ふーん。まあ強化アーマーなんて小柄なほうが乗りやすくはあるのか? 特に異海ダンジョンだと大きさに制限あるからな」


 あそこではあまりに大きいと巨大なEXランク魔物に狙われて即死する危険性が高いので、装備の大きさは最大でも三メートル以内……センセイのスペランクラフトジャケットでギリギリのサイズだと思う。

 それでスペランクラフトジャケットの内部はセンセイ一人座って搭乗すると車の運転席並に狭い。限られた大きさの強化アーマーへ乗り込むには、搭乗者は小柄なほうが有利だ。オケアノスのゴルゴン小隊も女三人だしな。

 他の会館職員は見慣れているのか、こいつに特別な反応はしていない。


「見た目は児童労働なんだがな」

「低身長とて働かないと生きていけないのです。今どきは小人プロレスもないので」

「そりゃそうだな。あとはパチスロで稼ぐぐらいか……」

「パチスロで生活しようという人、全員馬鹿なのです」

「なんだとォ……」


 夢のないやつだ。特にこの三岳島のパチスロは当たれば一日で百万以上稼げるから本気で食っていける可能性の獣なんだぞ。まあ、種銭も数十万は必要だけれど。


「ところでよ、トビー。カップ麺売ってやろうか。もうお湯淹れてるやつ。一個五百エレクで」

「食べかけをしかも高く売ろうとしないで欲しいのです。それとトビーは機体の名前で、ぼくは仇村伊那(あだむら・いな)という名前があるのです」

「覚えるのが面倒くせえよどっちかで統一しねえ?」

「普通しないのです」


 仇村はオレのテーブルに歩いてきて隣の席に座り……というか乗るって感じだな。そしてオレのカップ麺をひとつ取って食べ始めた。


「伸びたやつが好きだからいいですけれど」


 キャバーン。五百エレクが送金された音がした。


「くっ! もっと吹っ掛ければよかったか……! よく考えたらこいつさっき百万稼いだばっかで財布が緩んでる!」

「もう緩んでいないのです」


 ずるずるとカップ麺を啜る音とテレビの音だけが響く閑散としたラウンジはなんともアンニュイな雰囲気だ。会館の正面入口には鍵が掛けられ、職員らしい男たちも「お疲れーす」と関係者用出入り口から出ていく。どうやら営業時間というか、開館時間の終わりらしい。


「あの職員どもはここに住んでねえのか?」

「あー、別に泊まってもいいことにはなっているのですけれど、仮眠室が狭いから他の宿で生活しているのです。どうせ宿泊費は本土にある会社から補助金が出ることになっていますし」

「ふうん。そんなに狭えの?」

「二畳半なのです」

「刑務所か?」


 とりあえずカップ麺を食い終わって仇村と部屋を見に行くと、まあなんというか本当に二畳半。布団と壁にハンガー掛けがあるぐらい。トイレなどは外だが、刑務所の独房って感じだ。もともとは広い部屋を二畳半ずつに薄っぺらい敷居で分けたって感じだな。


「カプセルホテルよりはマシだろうに、職員も贅沢な連中だな」

「ぼくにはそこそこ広いから平気なのです」

「こう見えて三日に一回強盗が来るとか、ときどきハグレ魔物に食われるやつが出るとかそういうデメリットは?」

「そんな宿はイカダ小屋だけなのです……というかなんでそんなところに今まで泊まっていたのですか」

「アレでも野宿よりはマシなんだよ。野宿だと強盗発生率が百五十パーセントぐらいあるし。一晩に一回は襲われて二回目も襲われるのが五十パーセントってことだが」

「……トビー無しで出歩かないようにするのです」


 島内の風俗やパチ屋で働いている姉ちゃんたちはもちろん、エリザやウリンも夜には出歩かないようにしている程度に危険ではある。理性も知性もないようなチンピラ冒険者は人体実験の材料にしても余るぐらいに溢れている。

 仇村ぐらいの幼児体型だったら一瞬で攫われて、攫われた先でまた誘拐されそうだ。


「ともあれ、暫く厄介になるぜ。宿泊費幾らだ?」

「緊急避難的な日本人なら無料なのですが、アルト殿は普通にお金を稼いでいるので共益費を貰うのです。月契約で一万エレクなのです」

「あン? そんな安くていいのかよ」

「利益を出すための施設ではないので大丈夫なのです。一万エレクは光熱水道費と布団の洗濯代なのです」

「マジかよ……イカダ小屋でも月三万だったぞ……ひょっとしてボッタくられていた?」

「あれで三万⁉ なんであんなところに泊まるのか理解不能なのです!」


 そうは言うがな。ホテルとかアパートとかはもっと高いのが三岳島の家賃相場だ。一部屋に数人の冒険者が借りてシェアしているところもある。

 ただ冒険者は普通に一日で数十万とか稼ぐやつも珍しくないので、それぐらいボッても宿は借りられるわけだが。イカダ小屋に住む連中は雑魚魔物や無害な貝に海藻とかしか取ってくる能力のない、稼ぎの低い冒険者か相当なケチぐらいだ。


「……ところで、格安で泊める代わりにアルト殿には仕事を手伝って欲しいのです」

「仕事?」


 仇村の提案をオレは聞き返した。


「オケアノスから『拠点設営依頼』の打診が来ているのです」

「おお、ついに作るのか。海中拠点」


 海中拠点は異海ダンジョンの海底遺跡群に設置する安全地帯で、言ってみれば密閉したコンテナハウスを置く感じだ。

 中は空気で満たされ、燃料電池によって発電されて維持された空間で休憩や食事、補給などができる場所となる。長期的な潜水には欠かせない設備だった。

 問題はスーパームーンごとに拠点が消失するってことなんだが。すげえカネが掛かるのに。


「それで各勢力……って言っても、主にはヴァルナ社と日本グループなのですが、それぞれが設営のため戦力を提供して貢献度で拠点内に専用スペースを作れる通達なのです」

「へえ。そんな特典は初めてだな。っていうか、ひょっとして今度の拠点はデカいのか?」

「今までのは十メートル四方の拠点なのでしたが今度は二十メートル四方……面積は四倍になるのです。それで企業やグループ専用のスペースがあれば、補給物資の設置や強化アーマーの整備などもできて遥かに便利なのです」


 これまでの拠点は入場料が掛かるものの、基本的にオケアノス所属以外はどの冒険者でも雑多な共用スペースで休憩を取っていた。やっすいベンチに座って、オケアノスが販売するクソ高い飲食物や補給物資を買ってアンニュイな休憩だ。おまけに狭い。

 そして拠点面積の半分はオケアノス専用機材が置かれていて、一般冒険者が触ったらどこかに連れて行かれる。帰ってきたやつは見たことがない。そんな気の休まらない場所だった。

 そこで今回は大サービス、協力してくれたらスペースを確保してくれるという。

 まあ、面積が四倍になったもんでオケアノスだけでは設置が厳しいとかそういう理由もあるんだろう。或いは他組織が所有する強化アーマーの性能を見たいとか。


「それで、アルト殿には日本グループ所属で設営依頼に参加して欲しいのです。できればお友達も誘って」

「オレっていうかオレの相棒なセンセイの戦力頼みかよ」

「仕方がないのです。日本側は強化アーマー乗りがぼくしか居ないから、作業貢献度が厳しいところがあるのです」

「あー、基本貧乏人だからなあ、日本人冒険者。企業も国も元気ねえし」


 命がけでサメの餌になりそうな海に飛び込むなんてそれこそ震災で地元の漁業壊滅したり借金持ちになったりした漁師が多い。エンジョイ勢というか、別に他所でも働けるのに好き好んで来ているやつは二割ぐらいか。

 他国が暗黒メガコーポの私兵や軍の潜水部隊を送り込んでいるのに比べて日本はあまりこの島への直接的介入ができていない。せいぜいがこういった日本会館への補助金を出してサポートするか、警備会社のフジバヤシ・テック社から試作型強化アーマーのトビーを派遣させるかぐらいだ。

 本音を言えば海サトウキビみたいな、国の重要な資源となる発見を持ち帰りたいのだろうが、数十兆円規模の被害を受けた震災から立ち直れていないので余力がない。


「お友達のオマケってのはなんかムカつくが、お得な特典とかねえの?」

「今なら日本人が経営している、隣にある銭湯の入浴券を束であげるのです」

「めっちゃ個人的な謝礼だな! 町内会の奉仕活動か⁉」

「あと参加者にはギルドへの特別貢献ポイントとして、拠点使用料金が安くなるのです」

「そりゃあ……ちょっとお得か?」


 高いカネを出してオケアノスが拠点を作るものだから、冒険者にもタダで貸し出すわけにはいかない。拠点への入場料に一万エレク。中の食料で一食分取るのにも一万エレク。空気ボンベへの補充、医療品使用は十万エレクぐらい掛かる。高え。

 そんなアホ料金で使うやつ居るのかって言うと、それなりに居る。オレはあんまり使わねえけど。むしろ、基本的にオケアノスの深層探査チームの拠点になるので、おこぼれで一般冒険者に貸しているだけだな。

 しかしまあ、拠点使えるんだったら一回三岳島に戻らないでもいいので、探索の時間は伸びるし拠点では魔物や素材の簡易買い取りもやっているので、拾いすぎた雑魚魔物を売り捌いて身軽にもなれる。


「とりあえず受けるかセンセイに連絡してみるわ。『もしもーし。水中拠点設営のシゴト来てっけど、やる?』っと……」


 スマートウォッチに話しかけて音声を文字に変換し、メッセージアプリで送る。腕時計型は小さいから文字が打ちにくいので音声認識にしている。アプリはフジバヤシ・テック社が出している『乱破・忍者用伝達アプリ』こと『LNIN(ラニン)』だ。物々しい名前だが秘匿性が高く、暗黒メガコーポや国の諜報機関に傍受されないらしい。

 早速返信が届いた。


『アルトが参加するなら行く』


 うーむ、素直だ。


「仕方ねえ。センセイの都合もついてるし、参加するか」

「助かるのです。では前祝いとして銭湯でも行くのです」

「銭湯つってもな。今日海に潜ったから風呂入らねえでよくねえ?」


 オレがそういうと仇村は鼻をスンスンとひくつかせた。


「……アルト殿、最後に風呂に入ったのはいつなのですか?」

「水は浴びているぞ、水は」

「行くのです」


 仕方なく銭湯に行った。人口比からか、男湯がやたら広く作られていて久しぶりにどっぷり湯船に浸かった。異海の海水を塩抜きして使っている健康効果不明の湯だ。あと性別不明な仇村も普通に男湯に来ていた。


アルト引っ越し。合法ショタ青年の仇村伊那くん登場。だいたいハタチぐらいです。

ちなみに「トビー」は飛び加藤から来ている忍者ロボです


当時の甲子園は二年ぶりに再開され、全国的な注目度が非常に高かったのでやらかしたアルトの知名度と顔も滅茶苦茶知られています。日本で就職したくないはずである


あと冗談みたいな名前だけど鹿児島のスポーツ報道番組「チェスポ」は実在する


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