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掌編20:『アルト・ザ・メルカリ』

挿絵(By みてみん)

次に来るラノベ大賞に参加中です! 作者に正月の餅を送ると思って投票なう!

https://tsugirano.jp/



 とりあえずオレたちは話し合いの上で、削岩道具のピキャストを作成して高値で売ることを試してみることにした。


 センセイのビルダーをアップグレードして各種売れそうな物資を製造する工場を作るって話も儲けられそうな気もするんだが、オートフォーメーション化しても手が足りなくなりそうだ。

販路も作らねえといけないし、工場を作る、物資を製造する、販売するのすべての工程で邪悪なる暗黒メガコーポのオケアノスが邪魔してこないとも限らない。

 大手の企業ってのは新参に対して取り込むか潰すかしてくるもんだ。規模が大きくなれば大きくなるほど、邪魔されたときの損害がデカくなるし、カネなんかの体力勝負では勝ち目はない。


 その点、ピキャストを一本作って売る分には話が早い。これで1億以上儲かればこっちのもんだ。オケアノスが邪魔してくる前のスピード勝負で売り切ればいけると思う。

 ああ見えてオケアノスは巨大企業だけあって案外フットワークは重たいんだ(借金取り以外は)。

 まずは売れるかどうかの交渉からだな。それで駄目っぽかったら別の選択肢を選ぼう。製作するのはすぐにできるらしいから、売る相手が決まってから作ればいい。無在庫商法だ。


「ピキャストを作って売り払うのにはカネ以外にももう一つメリットがあんだ」

『それは?』

「オケアノスに売ればセンセイをトンネル工事に取られることが少なくなるだろ」

『なるほど。それは確かにいいな』


 別に穴掘りが嫌いなわけでもないみたいだが、借金返済のカタで延々と穴掘りに付き合わされてまともな冒険に行く頻度が下がっているわけで、鬱陶しさはあるだろう。

 だいたい、オケアノスの連中はセンセイのスペランクラフトジャケットと装備が欲しくてたまらねえんだ。その一部でも提供するってんなら借金ぐらいチャラにして欲しいもんだぜ。


 ひとまず連絡先登録している、オケアノス第一ギルドのエリート課長に電話をかける。


「へーい課長さん? うんオレオレ。で、相談あるんだけど、センセイの装備のツルハシ。そうそうあの穴をガンガン掘ってるやつ。あれ買い取るならどれぐらい出す? は? 1000万? やっす無理ごめーん別なところに売るわ」

 

 舐めた値段を付けたのでポチッと通話を切る。着信が鬼電めいてかかってくるが、スルー。

 続けてセンセイのスマホを借りて、ヴァルナ社の女科学者に連絡を入れた。


「もしもしぃ? センセイのジャーマネだけどよ、一つ売買の確認なんだが、センセイの装備でツルハシあるよな。使用データ取ってるだろ。異物で物質分解装置の一種なんだが、あれを売りに出すんだが幾ら出せる? 1億? やっす残念だな専売はなしで、オクに出すわ」


 ガチャ。こっちからも鬼電だが、放置。


『いいのかアルト。値上げ交渉とか』

「個人の冒険者と暗黒メガコーポだからどうやったって足元見られるのは確実だろうからな。こういうときは暗黒メガコーポ同士に争わせるに限る。そういやセンセイ、掘削工事してたときの動画とかねえ?」

『一応、アルトに注意されていたからオケアノスでの仕事中は録画するようにしている』


 なにせ不利な条件飲ませられたり作業外作業を押し付けられたりされているかもしれないからな。証拠映像は撮影して貰っている。

 センセイから動画データが携帯に送られてくる。確認すると、主観視点だがピキャストを振るって眼の前の岩盤がゴリゴリと分解されて大穴が作られていく様子がしっかり映っていた。


「よし、他にもなんかごっつ硬い物体とか砕く映像も欲しいな」

『硬い物体……伊賀名物の堅焼き煎餅とかか?』

「もうちょっと人類に歯が立たないぐらいのたとえなかったか!?」

『伊賀名物の堅焼き煎餅は硬すぎて歯が折れる危険があるので、割る用のハンマーもついてくるらしいが』

「記憶喪失の人魚なのになんでそんな御当地名物に詳しいんだよ」


 仕方ないから海底から採取した鉄素材で作った、あさま山荘でもぶち抜きそうな巨大鉄球を用意させ──ドゴォ!って鳴った。


「……」

『ちょっと重かったかな?』


 鉄球の重さにラボの床が耐えきれずに落ちて、更に二階の床も貫通。一階の寿司屋に鉄球が落ちていったようだ。エリザとウリン死んでなければいいけれど。労災って降りるのかな。


「コラー! なにをやっているカー!」

「冷蔵庫が潰れちゃったー!」

『すまない……アルトが作れって』

「野良犬―! 降りてきて土下座―!」


 謝った。

 簡易的にセンセイが店の修繕をしたが、業務用冷蔵庫やら中の食材やらで店への弁償金が二百万エレクぐらい発生した。これからの儲けを考えると些細なことだろう。


『今度から床の強度は重点的に上げておこう。断熱と防音と放射線遮断も』

「放射線が飛び出るような実験を寿司屋の上でやらないで欲しいんだが」

『海水を素材に大規模クラフトするプラントを作ると、海水に含まれる微量原子を濃縮して抽出することができてな。金とかウランとか取れるぞ』

「そのうち自分で人工島作ってやろうな」

『魔寿司全体を移動式人工島に移転させて三岳島を周回しながら営業するという手も考えられるな……』


 センセイの壮大な計画はともかく、巨大鉄球を動かして外でパフォーマンス的にピキャストを用いて砕く動画を撮影した。周囲を通る人からも目撃される。


「──よし、諸々の使用動画を添えて……と。オークションサイトに出す」

『オークション?』

「オケアノスが運営する、異海関連の出品が多いネットオークションだな。中古の装備やありふれて値段がそう高くない異物、海で拾ったガラクタなんかが出品される」


 中には他の冒険者から盗んだり強奪したりした物品も含まれる、現代の盗賊市だ。借金を背負ったアホの人権とかも売っている。

配送やらはオケアノスが引き受ける代わりに売上の2割を持っていったり、出品者の信頼がクソだったりで単純にここで売ればギルドに売るより儲かるというわけでもないが、まあまあ利用しているやつは多い。


「オークションサイトの名前は『メルクリウス&カリュプソー』……略して『メルカリ』」

『大丈夫なのか、それ』

「メルクリウスは盗人と商売人の神、カリュプソーは施しを与える女神ってことらしいが、確かに変だよな。メルクリウスはローマ神話でカリュプソーはギリシャ神話だし」

『いやそうじゃなくて』


 なにか納得がいかないように首を傾げているセンセイだが、とにかく商品を掲載する。


 ******


【令和最新異物】削岩ツール『ピキャスト』【一個限定・ヴァルナ社は1億での買取を打診】


 出品者:センセイ

 ツルハシ状の異物。先端部で衝撃を与えた物質を分解する機能を持つ。

 材質:パイレーツメタル複合材

 使用動画XXXXX.mpg

 動作保証



 最低落札価格 2億エレク



 ******



 鬼電を送ってきているエリート課長とヴァルナ社の女に商品ページのアドレスを転送してやると数秒してオークションに値が付いた通知が来た。2億1000万エレク。


「よっしゃ乗ってきた! 2億以上確定!」

『パイレーツメタルそのままの倍以上の値段だな』


 ククク、いいぜぇ! なんか以前のオレの借金分が一瞬で消し飛びそうな額だ。センセイと山分けではあるんだが。

 キャバーンキャバーンと通知が続き、微妙に数字を刻んだり更に1000万上乗せされたりしてきた。


「更にSNSで異物がオクに出て2億から始まってるって情報流してバズらせる」

『わかった。それは私がやってみよう』


 メルカリは貴重な異海のお宝が出品されることもあるから、三岳島外の企業や研究機関、金持ちなんかも注目している。

 ぶっちゃけ異物の類はコレで売ったほうが高いんだが、殆どの異物は『効果・使用方法不明』なわけで、これこれこういう効果があって、実際に使用した動画はこれですってのはなかなかない。効果とかは回収しているオケアノスが秘匿しているからな。結果、ある程度は高値で引き取ってくれて、冒険者評価もかなり上がるギルドに納品することが多い。

 ピキャストみたいに使い道もわかりやすい異物は稀だ。


「おっと、商品に対する質問が飛んできてるからセンセイ頼むぜ」

『了解した。ピキャストの動力……スペランエナジーで動きます、と』

「スペランエナジー!? 初耳なんだけど!」

『私が持っているとスペランクラフトジャケットから自動的に供給されるのだが、売った先ではそうはいかないかもな。特別にエネルギー充電変換ソケットもつけよう』

「至れり尽くせりだな」


 まあ、こっちとしても充電切れて動かなくなったとかクレームが来ても面倒だからな。ノークレームノーリターンにしたいところだが、値段が2億を越えてるとそうもいかねえよな。常識的に考えて。

 万全のアフターサービスまではせんが、多少のフォロー程度は必要だ。

 あと下手に時間を掛けると、暗黒メガコーポ同士で談合して安く入手しようとしだすかもしれないから、誰でも参加できるオークションに即出品して争わせるスピード勝負だな。早ければ早いほど、最初に話を持ちかけたオケアノスもヴァルナ社も上層部の意思が反映されにくいはずだ。

 

「さて、暫く吊り上がるまで寿司でも食って待っとこうぜ」

『ウリンが滅茶苦茶怒っていたが』

「このオークションの画面見せれば猫耳付けてケチャップでハートマーク書くサービスしてくれるだろうよ」

『寿司にケチャップ……そういうのもあるのか?』

 

 店の片付けに苛ついているウリンに実際に見せたところ、勝手に特上寿司の予約を入れてきた。ついでにチューブわさびでハートマークも書いてきた。高級店なのにチューブわさびを使うなよ。え? 長野にチューブわさび1000円ぐらいするやつ売ってんの? たっけ。(チューブわさびなのに美味しかった)



 *****



「なんか……凄いことになってんな」

『思ったより儲けられそうだ』


 それから数時間経過してオークションの様子を見たら、入札が8億エレクを突破していた。それでもまだ小刻みに百万ぐらいずつ増えていく。

 それにしても、便利なピッケルではあるんだがこんなにゴリゴリ高値になるもんなんだな。ほぼ一品物だとしても。

 普通、新しい異物が出品されても怪しいしそんなに伸びるものじゃないんだが、まず最初から2億という強気な価格が提示されていること、ヴァルナ社が買取を打診した(っていうかさせた)こと、それにここのところセンセイが実際に使ってゴリゴリ穴を掘っている姿は冒険者でも知られていたので信憑性が出ているようだ。

 逆にここまで額が上がって詐欺だと人死が出そうなレベルだよな。いやまあ、センセイが作れるってんなら信じるしかねえが。


「凄く高い道具なんだねえ」

「集中的にそのパイレーツメタルとやらを採掘してきたらどうカ?」

「今回はたまたま見つけた残骸に大量に含まれてたからいいけど、基本的にブルーホール近くかブルーホールの中でしか見つからねえからなあ。探しに行くこと自体がかなりリスク高え」


 ダンジョンは中央へ向かうほど危険で大型の魔物のテリトリーに入る。コソコソ隠れて行くか、大火力で押し込んでいくか。どっちにせよ、パイレーツメタルが入っているかもしれない岩塊を無防備に探し回るのはかなり危険が伴う。

 ってか無数に海底に落ちている岩の中から当たりを引くだけでも運を使い尽くしそうだ。パイレーツメタルとヴァイキングメタルはこれまで発見された量でも10kg行くか行かないかぐらいじゃねえのか?

 そうすると、この出品するピキャストは世界で初めてパイレーツメタルを加工して作った道具になるのかもしれない。


『それにしても、こんな大金が手に入ったら色々と使えるのだが』

「そうだな。1玉1000エレクのパチだって死ぬほど遊べそうだ」

『……どうしても遊びたければ私がパチスロ台を作ってあげようか?』

「中古で台とか買って無料で始めると、最初は楽しいんだが徐々に虚無(シャバ)くなるんだよな……」

『私だと……そうだな、異海ダンジョンでは手に入りにくい素材を買っておきたいな。各種金属インゴットや宝石、塗料、糸や布などの繊維……』

「それ買ってどうすんだ?」

『組み合わせてより高度な実験器具を作るのに使ったり、ピキャストをダイヤ色にしたり』

「ダイヤ色に!? なんの意味が!?」

『多少は掘削速度が上がるが……まあ……ダイヤが1kgぐらい要るな』

「幾ら掛かるんだよ……」

『炭素からダイヤを精製する装置を作れたら考えよう』


 などと話をしていると、オークションサイトを開いていたスマホから通知音が鳴った。


「ん?」


 画面を見るとピキャストの価格は10億エレクで【入札停止】とあり、落札された旨が出ていた。


「あれ? なんで10億で止まってんだ? もうちょい行きそうな勢いだったろうに」


 どうも他所の金持ちが参戦していたっぽいので随分伸びていた様子だった。オレらからすれば10億は現実感が無くて脳が溶けそうな価値だが、世界的な大企業を経営している超金持ち連中からすればはした金だろう。たぶん。

 一品物の激レアなファンタジー魔道具。それを手に入れたというだけで評判を生みそうなピキャストはちょうど良い景品だったみたいだが……


『なになに……利用規約に【入札価格が上限で10億エレクを越えた場合、最後に入札した者が落札となる】……と、あるな』

「初めて知ったんだが、その規約」

『ふむ……サイトのキャッシュ情報を見るに、数分前に突然追加された規約らしい』

「……」

『それで10億エレク入札して最終的に落札したのは……オケアノス関係者だな』

「汚え! サイト運営側の権限使って自分らが手に入れるようにしやがった!」


 最初1000万で買い叩こうとしてやがったのに、どんどん競争が加熱してこのままだと損をぶっこくと思ったようで、10億を即決価格の上限にしたようだ。

 最初から10億を限度にしていた場合、他の金持ちに買われるおそれがあったわけだが、奇襲攻撃のように規約改変と限度額投入を行った。

 そんなに欲しいのかよ。いやまあ、前も言ったが、トンネル掘るシールドマシンが10億以上するからまだお買い得なのかもしれんどころか、本来はもっと価値が高い道具だったと後で判明するかも。

 

「チッ……仕方ねえ、あんまりゴネてもオケアノスを敵に回すからこの辺を潮時としようぜ、センセイ」

『了解した。価格交渉はアルトに任せていたからな。素材をそのまま売った価格の十倍近くになったのだから、文句など言わないさ』


 10億でメルカリが2割持っていって8億の儲け。山分けして一人4億だな。なかなかのもんだ。俺はセンセイとハイタッチして虚しい成功を祝った。



 ******



 落札した後は奪われるのを警戒してのことか、すぐにエリート課長から連絡があって取りに来た。警護のための武装した兵士も揃っている。

 そいつらが到着する前にセンセイがピキャストを作成。ついでに余った材料で充電器も。

ピキャスト用充電器はちょっとした冷蔵庫ぐらいの大きさでとても持ち運べるような代物ではなさそうだった。言っちゃなんだがピキャストの使い心地は、センセイが使うよりも遥かに劣ることになるだろう。専用装備に近いアイテムだったんだから仕方ない。

エリート課長がメガネを正しながら告げてくる。


「ピキャストを受け取りに来た。間違いはないだろうな?」

「そっちこそ後でデマカセの文句付けるなよ。多少使って問題ないこと確認し、受け取り証でも書いてもらうぜ」

「なにせ10億の取引だ。契約書は作成してきた」


 エリート課長が指を鳴らすと近くの黒服がブリーフケースからやたら分厚い書類を取り出して渡してくる。オレはノータイムでセンセイに回した。


『探索用AI【23の鍵】、この契約書を翻訳と要約。問題箇所を抜粋しろ』


 びーっとスペランクラフトジャケットの顔からレーザーみたいなのが書類をスキャンした。なんかエリート課長が脂汗を拭いはじめた。


『……駄目だな。ギルド税が別途3割取られる、今後手に入ったピキャストはすべてオケアノスに納品する、無料で整備・運用に協力する、諸々53項目の契約事項のいずれかを違反した場合は罰則としてスペランクラフトジャケットの譲渡をする、この契約はオケアノスの同意がなければ破棄できない……といった条項が納得できない。オークションに出品したピキャストの譲渡とは関係がないからだ』

「こういうところから信頼関係って崩れていくんだよな」

『ちなみにこの取引は撮影・配信している』


 なにせ10億取引の現場だ。オレらだって警戒して安全のために衆人環視の状況でやりたい。さっきオークションが盛り上がっていたからネットでもそこそこ見ている連中がいるようだ。

 コメントで暗黒メガコーポに対する不条理な取引への不満が多く書き込まれている。


『メルカリでの規約ではこうある。【落札したものの、出品側と落札側のどちらかが支払い契約に関して虚偽が認められた場合は一方的に取引を停止できる】……ちなみにこれがその規約ページを印刷した紙だ。印刷日時も記録しておいた』

「おっ! ヴァルナ社から鬼電来てるぞ。ひょっとしたらオークション以外で個人的に買い取りたいって話かもなァ……」

「そ! の! 契約書はー! 恐らくスパイかなにかが紛れ込ませた偽物だ! はいこれが本物!」

 

 ド焦った様子でエリート課長がどこからともなく、一枚ペラの契約書を出して見せてきた。そして小声で告げてくる。


「私だって上からああいう契約通せって言われて押し付けられたんだ! 今度のは私の独断で作った普通のやつ!」

「怪しいもんだ」

「あんな現場も知らん権力でなんでもできると思っている上層部の馬鹿みたいな契約でも失敗すれば私の責任問題になるが……とにかく手に入りさえすれば後は言い訳できるから非常に簡易な条件に変えてある!」


 暗黒メガコーポなオケアノスは、大国相手にすら要求を通す滅茶苦茶な権力を持っているから、一般チンピラが多い冒険者なんて奴隷か作業ロボ程度に考えている。人権があるとは思っていない。

 だから奴隷がなにか珍しい宝を手に入れた? 献上させればいいじゃんみたいに雑な考えを持っている。

 もちろん実際に冒険者と関わるギルド職員からすれば冒険者なんて倫理観も常識も異なる上に、我儘な連中も多い。高圧的や強権的に対応すれば他企業所属に流れていき、オケアノスへの納品が減る。それで納品による利益が減った場合は現場職員の評価が下がるという悪循環に陥る。

 そこで上からの指示をある程度現場の裁量で変更して、なんとか冒険者にアメを与えているという。


『ふむ……今度はそれなりに明瞭だな。アフターサービスは有料で依頼任務扱いにしてくれるようだ』

「本当にか? センセイがちゃんとチェックして大丈夫ならいいんだが……」


 オレはどうも契約書の細かい文字や理解がめんどい表現をすっ飛ばして読む悪い癖がある。これで何度も失敗してきた。

 念の為にセンセイは契約書のコピー写しも記録したようだ。

 契約書に共同でサインを入れてエリート課長に渡す。彼も改めて目を通し、微妙そうな顔で告げてくる。


「これで契約は成立し、『メルクリウス&カリュプソー』の仲介料を引いた8億エレクを半分ずつ振り込むが……いいのか?」

「なにがだ?」

「私と、購入資金を出す財務部は、『例の部署』とは連携していない。恐らく振り込まれたら……」

「いいんだよ。さっさとやってくれ」


 オレがそう手を振って告げると、エリート課長は手元の端末を操作して決済を行った。


 キャバーンキャバーン! オレとセンセイの口座に4億が振り込まれた!

 

 キャバーンキャバーン! オレとセンセイの口座に振り込まれたカネが借金取りに全部引き出された!


「ふう……」

『はあ……』


 そう。全部、借金返済に回されたのだ。

 虚しい。

 レアなお宝をゲットして、それを加工して、なるたけ高く売る工作をして──手元にはなにも残らなかったのだ。


 オレとセンセイはオケアノス銀行にえげつない借金がある。飯代にすら困るぐらい締め付けてくる暗黒の借金取りは、オレらに臨時収入が発生した瞬間にそれを取り立てに来た。

 正直なところ、センセイのビルダーを強化して工場を建てなかったのもこの借金が原因だ。頑張って工場だの浮島だの作っても二束三文で差し押さえされたら徒労感が凄くなる。

 暗黒不平等な評価額によって変わる物品に比べて、現金ならば額面通りに借金を返せるからマシだと思ってのことだった。


「まあ……これで半分ぐらい借金返済できたから……」

『またパイレーツメタル見つかるといいな……』


 どこか黄昏れた空気でオレらはうなだれるのであった。早く全部返済して真人間になりたい。



 ******



「ちょっと待つヨ!? お店の弁償は!?」

「ツケといてくれ」

「うちのお店に1億ぐらい落としてから借金返済に回せヨ!!」

『すまないな、ウリン。代わりに店の壁や床天井をCBRNE(化学、生物、放射線、核、爆発物)防御仕様に作り変えておくから』

「なんで? ねえなんでそんな物騒な仕様が必要カ? ラボで変な実験してないヨナ?」





しかしアレです

ピキャストを手に入れるのもビルダーを手に入れるのも借金をするのも2巻の話で

なかなか続刊の話が進まないのでスルーしたまま掌編だけが2巻以降の話になって20話も…

で、出るんだよな2巻!?

次にくるラノベ大賞に投票(もしくは書籍・電子書籍購入)して担当さんをせっついてくだされー!

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こち亀の両津よりはマシな終わり方全て泡になろうとも…
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