掌編10:『アルト・ザ・このライトノベルがすごい!2026に投票しよう』
「『この冒険者が凄い! 賞』だァ?」
「そう! なにか冒険者を盛り上げる催しをしようと思ってね!」
オレはその日、グレイのオッサンから魔寿司に誘われて奢りなのでホイホイ出向き、スゴイバカ貝(眼の前の中年が名付けた)の握りを喰いながらその話を聞いた。
オケアノスの雇われカメラマンだが、独自に記事を出しているジャーナリストなグレイは頷いて説明をした。
「近頃はあまりにも冒険者が消耗品、危険な仕事だという認識が広まっていてね」
「否定はできねえだろ」
「それはそうだが、世の中は危険な仕事など無数にあるし、自ら望んでその仕事に就く者も少なくはないだろう」
例えばこのオッサンとかな。
一応日本人なんだが、頭のネジがズレているのかずっと危険な海外で取材や撮影を行っている、冒険カメラマンだ。死にかけたのも一度や二度ではないと聞く。そんで今は、毎日が魚のエサになりかねない異海ダンジョンに通っている。
人のことは言えねえが、畳の上じゃ死ねないタイプだな。
「ともあれ、冒険者は稼げるだけではなく名誉もあるという方向性で盛り上げればやる気にも繋がるし、世界にトップ冒険者とでも言える存在をアピールできるだろう」
「もうそれオッサンでいいんじゃねえのトップ冒険者。成果自体はアホみたいに上げてるだろ」
グレイはカメラマンという非戦闘職なんだが、これまでに誰よりも多くの種類の魔物を発見、命名し図鑑にも寄稿していることで冒険者の活動に貢献していた。
そしてそれだけではなく、海水と日光だけで育つ『海サトウキビ』を発見し、日本の研究機関に渡したことで日本の新たな産業と将来的なエネルギー自給への大きな一歩になったという話だ。
恐らく冒険者として最も成功しているやつの一人なのは間違いない。というか、ある程度稼いだら冒険者辞めるやつ多いので、何年も成功し続けているやつってのが少ないんだが。
だがグレイは誤魔化すように笑って、
「私は審査員側になっているからね。選考の対象外さ。というか自分で提案した賞なのに自分がなったら恥ずかしいし」
「それはそうだが」
「とにかく! 現状活動している冒険者の中で有名な人物やチームを選考して取り上げ紹介しようという企画だ」
「ほーん」
あんまり興味ねえな……オレ他の冒険者と付き合いそこまでねえし。そもそも、ベテラン冒険者つっても経歴長くて3年とかそんな程度だしな……
エリザがゲーミング発光しているゲーミングラスフィッシュの寿司を出しながらグレイに尋ねた。
「どんな冒険者さんが有名なんですか?」
「そう! 聞きたいよね! やはり興味はあるし、紹介の価値もあるんだよ……! というわけで現在の選考対象を教えよう。自薦他薦、どちらでもエントリーできる」
グレイは持ってきていたアタッシェケースからタブレットを取り出して見せてきた。
「まずはオケアノス推薦、強化アーマー『ゴルゴン』を装備したオケアノスの冒険者チーム『ゴルゴン小隊』! 操縦者は専門の訓練を受けた可愛らしい三姉妹、大と半と小だ! 以前は動画配信もやっていたから知名度も高いね。見た目もいいし、実績も上がっているから本命候補でもある」
「おおー! 女の子も居るんですね、冒険者!」
「激レアだがな」
画面に映っているのは真っ黒い巨大な蛇みたいな強化アーマー『ゴルゴン』の前でポーズを取って撮影されている三人の女だった。名前の通り、デカいやつと小さいやつと中ぐらいのやつがいる。
オケアノスに所属している冒険者は大きく分類すればオレもそうなんだが、特に会社からキンタマ握られているというか、社員扱いになっている冒険者もいる。三姉妹はそんな冒険者の中でも特に高級機材である強化アーマーを任せられているエースなんだが、
「オッサン、本当にそいつら推して大丈夫なのかよ。オケアノスの非人道的な人体実験で改造された強化人間だってウワサだが」
実際のところ、冒険者なんて鮫と殺し合いをする仕事で女子供が有利なんて条件は少ない。唯一あるのは、強化アーマーの多くは体がデカいよりも小さい方が操縦席の広さ的に余裕が生まれるぐらいか。
で、なんでゴルゴン姉妹なんてヒョロっこい女たちがオケアノスのエースなんてやれているかというと、強化アーマーの性能もそうだがそれ専用に改造されてるからってのがウワサだ。
オケアノスならそういうことやるって負の信頼もあった。
グレイは頷いて、目を逸らした。
「さて次の候補は……」
「あっ! 露骨に話を変えやがった!」
「ヴァルナ社所属冒険者。強化アーマー『十腕王』の搭乗者『アルジュナ』くんだ! 通称『ウェポンマスター』。ヴァルナ社の新兵器テスターとして優秀で、唯一彼だけが十腕王を使いこなせるというので有名だね。Aランク魔物を何度もソロで討伐している実績がある」
次に映ったのはヴァルナ社の強化アーマーの前で立っている男の画像だ。ガンジー帽を被った色黒でヒゲの生えた男で、インド人って見た目で年齢わかりにくいな。多分三十代ぐらいか?
ヴァルナ社の冒険者というか武器テスターだな。後ろに見える強化アーマーは人間用の手持ち武器を扱えて、仏像みたいに細長い腕が十本生えている。十本あれば武器を同時に十個使えると思って開発したのかもしれんが、人類にそんなもん操作できるわけないという常識をヴァルナ社は持っていなかった。そしてテスターのアルジュナだけ操作できた。十腕王自体は他のヴァルナ社所属冒険者も使っているが、使いこなせていないという。
ま、それはそうと実力派の冒険者だな。仕事柄探索はあんまりやらねえが、魔物退治はピカイチだ。
「強化アーマー乗りでいうと日本人も居る。総合警備会社フジバヤシ・テック社所属で、日本政府からも依頼を受けて来ているお助け人。忍者型小型強化アーマー『トビー』に乗り込む現代の忍者、『仇村伊那』くんだ! 他の冒険者を助けることが多く、人望が高いね」
「おおー、忍者ロボなんですね」
「武器も手裏剣や苦無、鎖鎌といった和風に統一されていて外国人人気も高いんだよね」
写真にはいかにも広報で撮りましたって感じに、忍者ポーズを取っているトビーの写真があった。
フジバヤシ・テック社が開発した強化アーマーはどっちかって言うとダイバースーツの延長上にある。搭乗者が手足を動かすことで追随して外装が動くので、器用で細かい動きも再現できるのだとか。
で、日本政府と会社から三岳島の情報収集しつつなるべく日本人冒険者が危ないとき助けるという面倒な任務を受けているらしく、ちょくちょく人助けをしているみたいだ。だからまあ、感謝しているやつは多いんじゃねえかな。
「他にもアメリカ人の自称『海賊』冒険者、『ワンピ・アンチ』氏! なにか特定の話題に触れると発狂するらしい」
「そんなやつ登場させんな」
「多分選ばれないから。別の候補だと中国の軍属潜水特殊部隊チーム『黒竜』! あっこれ、彼らが拠点にしている潜水艦の中を撮影してきたやつ」
「それ公開して大丈夫なのか? どうやって潜水艦まで忍び込んだんだ?」
「大丈夫! とっくの昔に中国軍からは命を狙われてるから! 始皇帝陵にこっそり入り込んだのがよくなかったかな……次は国籍不明、配信アイドル系オケアノチューバー『キティ』さん! フルフェイスメットで隠した顔と猫耳が特徴的だね」
「本当に出して大丈夫なのか!?」
「キティ自体は子猫って意味でしかないから……他は趣味が補陀落渡海の坊主系冒険者『青海入道』氏、韓国の沈没財宝ハンター『ゴミ拾いホフマン』氏、電磁ティンベーで防いでショックローチンで突く沖縄の闘士『グレート・ヒーガー』……」
「なんかプロレスラーみたいなの混ざってないか!?」
「個性派冒険者も居るからね。実力は本物だよ。他にも色々……」
色物系冒険者も増えたな。いや、一時的に増えても時間経過で減るんだが。物理的に。
いや配信とかやってるやつが色物なのはわかるぞ? 目を引いて知名度を上げたいだろうから。しかし青海入道のオッサンとか装備無しで潜ってるのを時々見るんだけどあれって自殺かなにかじゃねえの? もう一年は続けているけど。ちなみに坊主だから殺生はしないって言うんで、金すら儲けてないみたい。
「そこでアルト青年も選考に出したいと思うんだが……」
「やったねアルトくん!」
「おい! オレをそんな珍獣博覧会に出そうとするんじゃねえ!」
「はっはっは。もう3年も冒険者やっていて、稼ぎの殆どをパチンコで溶かしているのは十分すぎるほど珍獣だよ。それに他薦で選考に出せるから、容赦なく私の推薦で出しておくとも」
「『シリーズ人間のクズ』アルトでエントリーするネ」
「シリーズ人間のクズ多すぎだろこの島!」
ウリンの提案したリングネームにかぶりを振った。冒険者の八割ぐらい当てはまるだろ。
「それで……謎の強化アーマーに乗る美人冒険者ことセンセイもエントリーさせたいのだが……それぞれアルト青年と個別で出すか、二人がチームということで出すかという相談なのだが」
「えーもうセンセイだけ出しとけよそんなん。オレも投票するから」
「投票一位の賞金は1000万エレクなのだが」
「任せてくれ。センセイとオレのコンビで行くぜ!」
オレはすかさずグレイにアピールした。ウリンが嫌そうに顔をしかめる。
「うわこいつ、自分だけだと絶対勝てないからセンセイを頼る気満々ネ!」
「アルトくん応援してるよ! あたしも投票するからね!」
「おう。ちびっ子もオレたちに投票しろよ複垢作りまくって。センセイの名が売れるってことは店もアピールできるってことだからな」
投票を呼びかける選挙ポスターを店の前で撮影してもいい。なんならこの店の知名度も利用したいぐらいだ。
「いっそ『この三岳島のお店が凄い! 賞』でもあれば姐姐を出して投票を呼びかけるんダガ……こんな感じで」
「どんな感じだ」
「ま、仕方ないネ。センセイは『魔寿司所属』って表記させるネ。野良犬は野良犬で」
「好きにしろ。ただし取り分は7:3だ」
「今の流れでどこに取り分を増やして取れる要素あったカ!?」
男が恥を忍んで寄生するんだ。それぐらいは貰ってもいいだろう。たぶん。
すると、グレイが頷いて告げてきた。
「よかったよかった。ちなみに投票はネット投票だけれど、非常に高度な重複投票防止セキュリティがされているからね。ところでチーム名は決めているのかい?」
「いや、特に。じゃあ適当に決めるか。『パチンカーズ』とか」
「……『魔寿司仕入れ担当』にしとこ?」
「姐姐の案で登録頼むヨ」
なんかそういう名前になった。いやまあ、今回ぐらいしか使わねえだろうからどうでもいいが。あとセンセイが居ないところで全部決まったな。
******
センセイの方は問題なく、オレとのチームでの『この冒』への参加を受け入れた。
とりあえずは目指せ1000万だ。Webから一般投票できるが、複垢なんかはかなり厳しいチェックが入って弾かれるらしい。
なあに、冒険者なんてどれも人望カスみたいなもんだから、見た目と話題重視でセンセイを表に出せばウケるだろ。
というわけでセンセイと賑やかしにエリザウリンの二人も加えた選挙ポスターを作成、投票サイトに掲載した。見た目いい女が三人並んでるからバッチリだろ。
サイト運営者からメールが来た。
『チームで参加の場合はチームメンバーが全員写っている写真もアップしてください』
クソっ! オレの写真とか出さねえでいいよ得票率が下がる。
仕方なくウリンとエリザに相談して、魔寿司で寿司食ってるときの写真を使うことにした。完全に店の宣伝用になってきた気がする。
他にもSNS……センセイはオケアノエックスのアカウントを持っていて、そこそこフォロワーが増えてきていたのでそこでも宣伝をして貰う。
更に魔寿司の方も、オレらに投票する(投票した画面をスクショで撮ってスマホで見せる)と寿司半額キャンペーンを展開!
そしてオレは草の根活動で、日本人冒険者たちの集まりに行って投票とかよくわからんし興味なさそうなオッサンどもを利益誘導。
更にはトビーに賄賂としてスベスベスケベマンジュウガニ(エロ系の毒を持つ魔物) を提供。トビーはエロ魔物に弱い。説得して一時的にトビーをオレら『魔寿司仕入れ担当』に合流させることを運営に通達することで、トビーが得ていたポイントを合算してゲットすることに成功した。
やれるだけのことはやった。
アンケートの投票結果はリアルタイムでわかるようになっている。
なのだが……
「クソっ! 一位はゴルゴン姉妹で二位がアルジュナだ! 組織票じゃねえのかあいつら!」
「大企業がバックに付いているネ。厳しい戦いヨ」
これが大手の力なんだ……!
それぞれの企業は一位になったら記念セールを行うと薄汚え魂胆を公表しているのも利いている。こんな、一般冒険者からすればどーでもいい投票なんて、得するところに入れちまうのも不思議ではない。
おまけにゴルゴン姉妹は……まあ、見た目だけは悪くねえもんで、アルジュナよりも一歩上の票を得ている。性格はアレなんだが。あいつら。水着姿でアピールしてエロ目的の票をゲットしてやがる。
「うーむ、しかしこれ以上は手の出しようが……センセイ、なにかあるか?」
オレがセンセイに尋ねたところ、センセイは頷いて応えた。
「一応真似をしてみるか。アルト、脱いでみてくれ」
「はあ!?」
仕方なくオレが海パン姿になった写真を掲載したところ、オレらに投票されていた票が3割ぐらい減った。
減るのか!? この投票システム!?
どうやらこうやってリアルタイムで変動が見られるようにしつつ、最終日まで投票を取り消して他に入れられるようになっているらしい。
それで、どうやっても勝てそうにない零細冒険者からは投票者が時間経過で鞍替えして消えていくようだ。
「悪化したぞ!」
「むう……私はいいと思ったのだが。仕方がない、次の手段だ」
「次って?」
「ハッキングして投票ポイントを不正操作してみる」
センセイがスペランクラフトジャケットのコンソールを弄り始めた。
「ファイヤーウォールを……よし、突破した」
「一瞬で!?」
機体のモニターになにやら燃えた壁が、ツルハシで崩される概略図が表示されていた。ファイヤーウォールってそんなのなんだ。
「ゴルゴン姉妹とアルジュナに入っている票の1%が一時間置きにアルトへ移動するようにプログラムを仕込んでおこう。締め切り日までにじわじわ逆転するだろう」
「おお! そりゃいい! さすがセンセイ、スーパーハッカーだな」
「ある程度上回ったらそこで停止して、票を吸い尽くさないようにしよう」
「さすがに全部奪ったら不自然だしな」
そういうことになって、数日経過を見ることになった。オレの票がモリモリ増えだしても不正の証拠は見つからなかったのか、問い合わせが来ることはなかった。
******
数日後、問題が発生した。オケアノスとヴァルナ社の両方からだ。
まずオケアノスはゴルゴン姉妹の票が減っていくのはなにかの間違いではないかと思って、サイト管理権を掌握して無理やり票を増やしてしまった。
するとセンセイのプログラムも作動して、不自然に増えた票から再びオレの方へ座れていく。
そしてヴァルナ社。こっちはもっとパワー系の作戦に出た。
アルジュナを一位にするためにインド本社と提携。インドの人口パワーを活かして投票権のあるアカウントを億単位で作成。アルジュナに2億票ぐらい入った。
一応は世界中から投票できるとはいえ、数千から数万票程度を争っていた選挙がハイパーインフレ状態。
そうすると2億の1%、200万票ぐらいがオレの方へ一時間ごとに回ってくることになるわけで……
なんか凄えカオスな投票状況になってきたな……やがてアンケートサイトは票の公開を取りやめた。
やがて最終日になり、運営側であるグレイから発表があった。
「えー、投票結果をお待ちの皆様方、大変長らくおまたせしました! 本日第一回『この冒険者が凄い』賞に選ばれた冒険者を発表させていただきます!」
ワーパチパチ。そんな感じの音がなるスピーカーで無理やり盛り上げて、三岳島中央にある簡易お立ち台で発表会が開かれていた。
そこには最終選考に残った数組の冒険者とサクラみたいなギャラリーが集まっている。最終的にどういう票になったのか、未公開なのでよくわかっていない。
しかし明らかになんらかの不正が行われていたことは明らかで、ネットでも大不評である。オケアノスとヴァルナ社が殴り合っていたのは公然のことだが、それに張り合って票を延ばしていたオレたちも何なんだって巻き添えで胡散臭がられていた。いやまあ、不正はしていたんだが……
「それでは発表致します──その前に、失格のお知らせから」
グレイが苦い顔で、それぞれ立たせている冒険者の方へ指揮棒みたいなのを向けた。
「まずはオケアノス所属の『ゴルゴン小隊』チーム……不正アクセスによる票の水増しが確認されておりますので失格! 無効票3億2045万120票! おバカ!」
「んだよー! うちらは何もやってねーぞ! 冤罪だ!」
「会社の方針でござるなあ」
「えー、ミクちゃんも頑張ってクリックしまくって手伝ったよー?」
「それは黙ってろ!」
「ボッシュート!」
何故かゴルゴン姉妹の居た床に穴が開いて、悲鳴と床下のプールに落下する音が聞こえた。
「次にヴァルナ社所属の『アルジュナ』くん! 戸籍不正利用による無効アカウントの大量作成で失格! 新生児すら投票してることになってるからね! 無効票2億8301万4591票! 調べるの大変すぎた!」
「ごめん」
「ゴメンて!? ボッシュート!」
またアルジュナの足元が開いて床下に落とされた。
続いて。
グレイがこっちを向いた。
「よし、逃げようセンセイ」
『いや、まだバレたとは……』
「魔寿司所属の『魔寿司仕入れ担当』の二人……やぁっと仕込まれた不正プログラム発見したからね。スキャニングにも一切引っかからないから何事かと思ったけど、担当者の私物のスマホに仕込んで遠隔操作でプログラムを実行させていたとはね……」
『バレてた』
「おい待てグレイオッサン!」
オレの声に静かに怒りの表情を笑みの裏側に隠しているグレイが尋ね返してきた。
まるで冒険者のやる気向上にせっかく始めたイベントを台無しにさせられて、しかも悪いのがオレたちみたいな圧を感じる。気の所為だろうか?
「なにかね?」
「一応今は魔寿司仕入れ担当は、トビーも入れて三人だから」
『身に覚えがないことで連帯的にボクを巻き込んできたのです!?』
「はい三人仲良くボッシュート」
穴に落ちていく。数メートルも落ちれば地下のプールに着水した。頭上に見える細長い穴と繋がる地上から、繰り上がりで四位だったキティが優勝になった旨の発表が聞こえた。
『ええっ! やった! すっごく嬉しいキャッツ! チャンネル登録と評価よろしくキャッツ!(男声)』
と、勝利者コメントが聞こえた。あいつ常に女物のダイバースーツとヘルメットで姿を隠してるが声は男なんだよな。
さて、それはそうと地下のプールだ。かなり薄暗く、非常用のぼんやりとした灯りが配置されているだけの空間だった。
「さーて、脱出するか──」
「おい兄ちゃん! そっち行ったぞ!」
「あン?」
ゴルゴン小隊の一人がなんかこっちに向かって叫んだので、目を凝らしてよく水中を見てみる。夜目は利くほうだ。
するとそこには──ワニっぽいのが居た。
「ウッソだろ!? トビー! 援護防御!」
『無理やり引き寄せたのです!?』
当たり前だ。オレは生身でトビーは強化アーマー着てるんだからよ。とりあえずトビーを押し出して裏に隠れると、水中からワニが飛び上がってきてトビーに噛みついた。
『うわあああ!?』
「こいつは……アリゲーターガーゴイルだ!」
ワニに見えたが似ているのは頭だけ。頭だけ似てりゃ噛みつくには十分か。アリゲーターガーゴイルはワニっぽい魚の魔物で、特徴は全身が硬質炭酸カルシウム……つまりは石で出来ている。頑丈で厄介な魔物なんだが、
「そんな魔物飼ってるプールに落とすか!? あのオッサン!」
チクショウ。思ったより怒っていたらしい。でも仕方ないよな。賞金で釣ったのあのオッサンだし。
兎にも角にも、トビーが食われているうちにどうにかこいつをぶっ倒して脱出するぜ!
まったく、『この冒険者が凄い!』なんて懲り懲りだ!
皆さんは真面目に投票するべきだな! 是非! ワニに食われないようによろしく!
このライトノベルがすごい!2026の投票が9月23日までで始まっております!
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是非とも、アルト・ザ・ダイバーに投票いただければ大変助かります!(必死)
本当によろしくお願いします!(必死)




