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ハッピーバースデー!

 10月24日。


 今日は、俺の誕生日だ。晴れて、20歳となりました!


 自分へのご褒美兼誕生日プレゼントということで、大学の帰りに、駅前のデパートのケーキ屋に寄って、ショートケーキを買った。


麗羽れいはにも買ってあげるか」


 彼女は幽霊なので、食べる必要はない。


 けれど、味は感じるようなので、きっと喜んでくれる。


 彼女は、甘いものが大好物だ。




♦♢♦




「ただいまー」


 帰宅する。


 しかし、いつもの麗羽れいはの「おかえりー」の声が返ってこなかった。


「あれ、留守か……?それとも、ついに昇天したか?」


 もう二か月近く一緒に暮らしてきたので、いまさら成仏されると、さすがに寂しい。どうか、この世界に留まっていてくれ……と、俺は願った。


「……ケーキ、冷蔵庫に入れておいたほうがいいかもな」


 しばらく部屋でそわそわしながら待っていると、麗羽れいはの声が聞こえてきた。


「あー、利亜夢りあむ、帰ってきてたんだ。おかえりー」


麗羽れいは、どこ?」


「こっちだよ。窓の外」


「窓……?うわっ!!」


 白いレースのカーテンを開けると、窓の外で麗羽れいはが手を振っている姿を見つける。


 さも当然かのように、宙に浮いている。


 彼女は、腕に何かの袋を持っていた。


「窓開けてくれると助かる。これ、買ってきたから」


 麗羽れいはは、持っている袋を誇示する。


 俺は、カーテンと窓を開けて、麗羽れいはを迎え入れた。


 彼女は、宙にふわふわと浮きながら、部屋に入った。


「その袋、何?」


 俺は、麗羽れいはが右手に持っている袋についていた。


「えへへ、開けてからのお楽しみ」


 そう言って麗羽れいはは、袋の中にあった箱を手渡してくれた。


「ハッピーバースデー、利亜夢りあむ♪私からのプレゼント!」


「あ、ありがとう。俺の誕生日、教えたっけ?」


利亜夢りあむくんが持ち歩いてる手帳の個人情報の欄から、誕生日を調べたんだよ」


「それ、プライバシー的に良くない……でも、嬉しいよ。プレゼントをわざわざ買ってきてくれて、ありがとう、麗羽れいは


 普段使いしている手帳を勝手に見られていたようだ。


 けれど、俺の誕生日を調べてまでプレゼントを買ってきてくれたことが嬉しくて、そんなことは気にならなかった。


 俺は、丁寧に感謝を述べた。


「にひひ~喜んでもらえたみたいで、嬉しい」


 麗羽れいはは、太陽のように輝かしい笑みを浮かべた。


「で、肝心の中身は……」


 手渡された箱を空けると、ヘッドホンが入っていた。


「あ、これ、欲しいと思ってたやつだ」


「この前一緒にゲームしてるときにヘッドホンの話してたから、それ思い出して買ってみた」


 自分の記憶の引き出しにもないことを引っ張り出して、わざわざ買ってきてくれた麗羽れいは


 感謝してもしきれない。


 俺は、喜びの笑顔を隠すことができなかった。


「人からもらえるプレゼントって、こんなに嬉しいものなんだ……」


「そっか、利亜夢りあむ、今まで友達もカノジョもいなかったから、人からプレゼントもらったことないのか。私が初めてか」


「うぐ……その言葉は、ボッチの俺に刺さる……」


 思わぬ方向から飛んできた言葉のナイフが、心をえぐる。


 しかし、プレゼントを貰ったことの嬉しさが、その傷をすぐに治癒してくれた。


 気になっていたヘッドホンを貰って嬉しい……というよりも、ここまで俺のことを考えて、選んで買ってくれた麗羽れいはの気持ちが嬉しかった。


「というか……もしかして、俺の金で買った?」


「うん。私、幽霊だからバイトもできないし」


「おいいいいっ!!!俺の金を勝手に使うなよ!でも、嬉しいよ、ありがとう、麗羽れいは!」


 このヘッドホン、大切に使わせてもらおう。


 貰ったヘッドホンは、家宝のように、大切に引き出しの中にしまっておいた。


「今日さ、俺の誕生日だから、ケーキ買ってきたんだよね。麗羽れいはの分もあるよ」


 俺は、ケーキの箱をテーブルの上に置いた。


 麗羽れいはは、獲物を見つけた虎のような顔でその箱に飛びついた。


「おお!ケーキだぁぁぁ!!私の分まで買ってくれて、ありがとうね。じゃあ、私と誕生日パーティーしよう!」


「そんな豪勢にはできないけど……チョコケーキとショートケーキ、どっちがいい?選んでいいよ」


「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん……」


「悩みすぎ。早く決めないと、ケーキ溶けるよ」


「じゃあ、私と利亜夢りあむで、チョコケーキとショートケーキを半分ずつ切り分けて食べよう。そうしたら、どっちの味も楽しめるよね」


「おお、賢いというか、食欲に忠実というか……」


「私は三大欲求強めです。もちろん食欲も」


「へぇ……」


 食べ物に関しては、頭のキレる麗羽れいはであった。


 俺と麗羽れいはは、俺の20歳を祝って、一緒にケーキを食べた。


利亜夢りあむくん、20歳になったけど、えっちなお店は行かないの?」


「行かないよ!第一、値段が高いし、ひと時の性欲のためにお金使うなら、中古のパソコン買ったり、新しいゲーム買ったり、漫画とか本とか買ったりするよ」


「ピンキリじゃないの、そういうお店って。てか、利亜夢りあむくんは、なんでエッチなお店のお値段事情を知ってるの?」


「え……ああ、いや……クソ、口を滑らせたわ。俺も男の子だから、そういうことを調べたことがあるんですよ!」


「アハハハッ!ギヒヒッヒ」


「笑い方ヤバ……」


「あれ……飲酒とか喫煙とかは、20歳からだよね?」


「2022年に民法の改正があって、成人年齢が18歳に引き下げられたて、賃貸借契約を結んだり、クレカを作ったりが18歳からできるようになったんだよね。でも、飲酒とか喫煙とかは、これまで通り20歳からなんだよ、確か」


「やけに詳しいね。知識量エグ」


「まあ、それなりに勉強してるからね。そういう年齢と法律のことは、大学の法律学の講義で習ったよ」


「えっちなお店のことも?」


「いや、さすがにそのことは習ってないよ。さっきも言ったけど、喫煙とか、飲酒とか、契約に関しては勉強したけど」


「えー、えっちなお店って、20歳からだっけ、18からいいんだっけ?」


「俺にかないでよ。自分で調べて」


「はぁ、ケーキおいしかった~ご馳走様です、利亜夢りあむくん」


「口にクリーム付いてるぞ。舐めていい?」


「うわ、キモ……」


「ドン引きやめてね。麗羽れいはさんも、えげつない下ネタ言ったりするよね、たまに」


「さっきの言い方は、冗談でもキツイかも」


「冗談だって。はい、ウエットティッシュ」


「冗談だって言えば何でも許されると思ってそ~」


 そんな下らない話や冗談で盛り上がる、20歳と19歳の成年二人であった。

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