第34話 レオンの決意
ご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、ルーシーが「テナー」に会いたいと持ちかける所から、あることをレオンが「決意」するお話です。
一連の出来事を経て、ルーシーがテナーにメッセージを送信してから約三時間が経ち、現在は二十時を過ぎたところだった。
レオンは閣僚達との打ち合わせが終わり、執務室へと戻ると椅子に座り仕事用の電子端末を取り出した。
彼は一日の仕事が終わると、その日の仕事内容を再度考察する為に、電子端末や書類の読み込む作業をするのが日課だった。
また、三人の秘書たちは、余程のことが無い限り一人残って後は帰宅するのが常だ。
だが、今日はもう遅い時間なのもあり、先ほどまで残っていた第三秘書のマサにも既に帰宅するようにとの旨を伝えた。
その後一時間程経つと、レオンは作業を一旦止め一息つこうと、執務室の奥に置かれた全自動ケトルのスイッチを入れてから、プライベート用の電子端末を取り出した。
ちなみに彼は、テナー用とレオン用と二台に分けて電子端末を持っており、最近ではテナー用の方を先に確認するクセが付いていた。
というのも、ルーシーからの連絡がある可能性があるからだ。
「え……」
それを確認すると、レオンは思わず声を出していた。
その画面には、ルーシーからのメッセージが表示されている。
『テナー君。話したいことがあるから、今から会えないかな』
「現在の時刻から、三時間以上経っている……」
ともかくレオンは、その場で扮装することに決めた。
『自身を心象の姿に変えよ』
レオンの身体が、蒼白い光に包まれていく……!
『マイセルフ・チェンジ』
光が消えたと同時に、その場にはレオンの姿は消え、黒髪の青年テナーが現れたのだった。
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テナーはすぐさま電子端末を操作して、ルーシーに電話をかけると、殆ど無コールで彼女に繋がった。
『テナー君?』
「ごめんルーシー。……今バイトが終わって端末見たから、メッセージに気がつけ無かったんだ」
テナーは内心、嘘を吐くことが自然と出来る自分自身に嫌気が差していた。
『ううん、忙しいところごめんね。あのね、どうしても今日中に会って話したいことがあるんだ』
テナーの身体が、途端に熱を帯びた。
普段の彼女だったら、そう言う類の申し出はしないように思うのだが、何故今日はその申し出をしたのだろうか。ちなみにだからこそ、端末のチェックを後回しにしたのだ。
────まさか、レオンが彼女を抱きしめたからだろうか。
こと恋愛に関しては特に純情で、不器用なところもある彼女のことだ。
恋人でもない男に抱きしめられたことに対して、深く罪悪感を抱き、謝罪するために会わずにはいられなくなったのかもしれない。
ともかく、彼女に対して会って詳しく話を聞かなければと思い立ち、会話を進めた。
「うん、分かった。それじゃ今から……」
すんでのところで、どう事を進めれば良いのか迷い、言葉に詰まってしまった。
(今から街に降りるのは、まずい。と言うのも僕が街に降りるには、必ず複数の護衛を共わわなければならないからだ。だが今はイレギュラーな事態だからそれが出来ない。どうしたものか……)
『テナー君?』
ルーシーは、テナーが黙ってしまったことに不安を感じて、遠慮がちに声をかけた。
「ごめん、ちょっと考えごとをしてた。……そうだルーシー。今君はどこにいるいるの?」
『自宅だよ。ぼんやりテレビを見てたところ』
そう言った彼女の声は、何処か普段よりも力無く感じた。
(やはり、俺が彼女を抱きしめたことが原因なのか……)
レオンは思わず、レオンの素の言葉遣いで思案をした。
と言うのも、プライベートのレオンの一人称は『俺』なのだが、テナーでいる時はたとえ心中でも、彼でいることに徹底するために『僕』を使っているのだ。
だが時にテナーでいる時でも、動揺している際などは、滅多に無いが『俺』と言っている時もある様だ。
「そっか。確かルーシーって魔法士専用の宿舎に住んでいるんだよね」
『うん、そうだよ』
「それじゃ今僕、偶然近くにいるから、付近のどこかで落ち合おうか。どこかいい場所を知ってるかな?」
言いながらテナーは、執務机に置かれた卓上用の電子端末で地図アプリ開いて、周囲に何か目星い物が無いかどうかを素早く検索し始めた。
『うーん、これと言ったところはコンビニくらいかな。……そうだ、そう言えばそのコンビニの近くに、ベンチやちょっとした遊具が置いてある小さな公園ならあるよ』
「公園か」
テナーはすぐさま地図アプリでそれを調べると、確かに宿舎のコンビニの近くに、その説明に該当しそうな公園が載っていた。
(ここなら王城の敷地の近くだから、常備の護衛を連れて行くだけで対処が出来るだろう。彼らには負担が増えるが……)
そう思うが、今は申し訳ないと思いながらも、他の案を考えている時間も無さそうなので、その案を通すことに決めた。
「それじゃ、……十五分後にその公園で会おう」
『……うん。ごめんね、突然こんなことをお願いしてしまって……』
「ううん、謝らないで。むしろこれからルーシーと会えることになって嬉しいよ」
それは本心だった。だが、彼女の心中を思うと穏やかではいられなかったが。
『……ありがとう。私も嬉しい』
そう言って二人は電話を切って、十五分後に落ち合う約束をしたのだった。
「……そろそろ、潮時かもしれないな……」
テナーは電話を切るなり、無意識にそう呟いていた。
「俺に抱きしめられた彼女が動揺しているのを諫めるのに、これ以上嘘を重ねるのは流石に心苦しいものがあるからな……」
テナーは自身の車の鍵を机の引き出しから取り出すと、素早く身支度を整えて出かけって行ったのだった。
ご覧いただき、ありがとうございました。
レオンは、ルーシーが自分が抱きしめたことによって、傷ついていると思っていますが、実の所は……
次回もご覧いただけると、嬉しいです。
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