表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】国王陛下と恋を始めます  作者: 清川和泉
第3章 記憶の中の少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/60

第20話 テナーが出した結論

ご覧いただき、ありがとうございます。

 それから二人は、ボード乗り場を後にし時間を確認すると十一時半を過ぎていたので、公園の芝広場で昼食を取ることにした。


 ルーシーが再び花屋へと赴きバスケットを取りに行っている間に、テナーは芝広場の一画にレジャーシートを広げて場所取りをすることになった。

 

 正直に言って花屋の店主とは再び顔を合わせ辛かったので、それをせずに済んでありがたかった。


 レジャーシートに座って空を見上げると、先程のことが頭をよぎる。


 ──恋敵は自分自身。

 

 今までは、魔物討伐やその責任者にされたことが原因で、精神的に追い込まれていたルーシーを元気付けることが何よりも優先だったし、それが目的だった。だが、これからは違う。

 

 自分の本心と向き合い、自分に彼女を愛する資格はないと言う気持ちを解き放つことにしたのだ。

 だがそれは同時に、本来の姿の自分で彼女と接することも指していた。 


(本来の僕は、相変わらず敬遠されているからな……)


 先日魔物討伐を共に行い、少しは打ち解けたかと思ったが、翌日執務室に呼び出し彼女と会った際は、以前と変わらず必要以上に身を固くしていた。


(あの様子では結婚なんておろか、食事に誘うことすらさえできないな……)


 そもそも、ルーシーは現在仮初(かりそめ)の自分であるテナーと付き合っている。その事実を何とかしない限り前には進めないだろう。


(いっそう、ダニエルの言う通り全てを打ち明けるか……)


 それは今まで何度も、テナーも考えたことだった。


 ──だが、どうしても駄目なのだ。


(それだと彼女を傷つけることになりかねないし、別れることになるかもしれない。……今までのように、彼女の傍で励ますことができなくなる)


 それに加え精神的な負荷を与えて、最悪の場合仕事や日常生活にも支障をきたさせてしまいかねない。


 考えれば考えるほど、泥沼にまるようだった。

 

 そもそも、少し前のルーシーを励ます目的のままだったならば、自分が身を削り彼女が自身を嫌いになる、もしくは自分以上に好きになる相手を見つけてもらって、去ろうと思っていた。

 

 そう思考を巡らすと、テナーはあることに気がつく。

 

 ──レオンが、その相手なら問題はないのでは?


(()が僕を超える? いや、本来の俺は魔物討伐以外、ほとんど接点もないし無理だろう……)


 そう思いつつ、何か手段はないかと思考を巡らせているとちょうどルーシーが戻って来た。


「テナー君、お待たせ!」


 テナーは思案を一度止め、すぐにルーシーの方に視線を向けた。


「お帰り。取りに行ってもらって、ありがとう」

「ううん、こちらこそ。場所取りありがとう!」

 

 ◇◇


 それからルーシーは昼食の用意を手早くして、テナーに紙皿等を手渡した。

 バスケットの中には、ツナや卵、ハムやチーズ等のサンドウィッチや、卵焼きや唐揚げ、ミニトマト、ポテトサラダ等のお弁当の定番のおかずが入っていた。


「凄く美味しそうだ。これ作るの大変だったんじゃない?」

「ううん、テナー君が食べてくれるって思ったら凄く嬉しくなって、ついつい沢山作っちゃった」


 そう言って微笑むルーシーを見ていると、彼女のことを騙している罪悪感からの胸の痛みと、温もりを感じて心が満たされる温かさと二つの感覚を同時に覚えた。


(……僕は、ルーシーを励ましたいとか言って、本当は自分が癒やされたいだけだったのかも知れないな)


 そう、しみじみと思ったのだった。


「そうだ、テナー君。このハンカチありがとう」


 昼食も終わり、今は互いにお茶を飲んで一息ついていたところだった。


「ああ、そうだったね」


 それは以前のデートの際に、ルーシーに貸していた彼のハンカチだった。


「それでその……、ごめんなさい!」


 ルーシーは、急に頭を下げた。


「実は、アイロンをかけたんだけど、なに分慣れないものだから少し焦がしてしまって……」


 よく見てみると、確かに角付近にクッキリとしたアイロンの跡がつき、縁は焦げていた。

 

 彼女は昔から機械音痴だったことを思い出すと内心懐かしく思い、思わずテナーは微笑んでいた。


「こんなの、どうってことないよ。気にしないで」

「う、うん。ありがとう」


 ルーシーはキュッと拳を握り、真摯な瞳をテナーに向けた。


「この流れで言うのも変なんだけど、……テナー君」

「ん? どうした?」


 ルーシー頬と耳は一気に染まっていく。そして、そっとテナーの耳元で囁いた。


「テナー君に、……抱きしめて欲しいんだ」

「…………え?」


 テナーは彼女の思っても見ない提案に、思わず動きを止めたのだった。

ご覧いただき、ありがとうございます。

第14話「ルーシーの本音」で、ルーシーが漏らしていた本音が、お話の最後に出てきました。

次回も、ご覧いただけると嬉しいです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] Twitterから来ました。蛙鮫です。主役2人の恋模様。良いですね。恋愛面も良かったのですが,個人的には魔法が科学の設定が上手いこと調和しているのがよかったです。相反するもの同士の組み合わ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ