第17話 久しぶりのデート
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今回から「久しぶりのデート編」が始まります。
二人が水族館へデートへ出かけたのは、六月の最後の週の土曜日だったのだが、それからテナーがバイトや学期末試験で忙しかったり、ルーシーの方も魔物が二度現れた週もあったりとお互い忙しく、ようやく会えたのは七月の下旬の日曜日になってからだった。
ちなみに、直接会えない期間も電話やメッセージ等でやりとりはしていたらしい。
大学は長期の夏季休暇に入り、なんでもテナーはほぼ毎日飲食店のバイトをしているとのことだった。
そんなテナーを労うべく、ルーシーは今日は朝から早起きをして、お弁当を作りバスケットに入れて持ってきていた。
「テナー君、久しぶり!」
「ルーシー、お待たせ」
いつもの噴水公園に今日は十時に待ち合わせをしていたが、今回はルーシーの方が少しだけ早く着いていた。
ルーシーはノースリーブの黒のトップスに、くるぶしまで長いブラウンスカートを履いている。
彼女にしては珍しく白い服を着ていないことも気にかかったが、それよりノースリーブなのが何よりも一番気に掛かったので、テナーは思わず動きを止めた。
「テナー君、どうしたの?」
「え?……あ、いや、いつもと違うな、と思って」
「ああ、これ?」
ルーシーは、両手で抱えているバスケットに視線を移した。
「今日は、気合を入れてお弁当にしてみたんだ。後でここにでも戻って来て、一緒に食べよう」
「凄いな、わざわざ作って来てくれたんだ。ありがとう、楽しみだな」
テナーは他にも気にかかることがあるのか、コホンと咳払いをした。
「今日は、服装がいつもと違うようだけど」
「ああ、これ? えっとこれは、その……。職場にとても上品で素敵な秘書の方がいるのだけど、その人がデートでは断然ノースリーブがよいですよって、やんわりとアドバイスをしてくれたんだ」
「職場の秘書の女性……」
テナーは口元に手を当ててしばらく何かを考えていたようだが、小さく「ルロウさん、ナイス」と呟いた。
「そうだ、テナー君。このバスケットなんだけど、出かける前に一旦預けに行ってもいいかな?」
「うん、もちろんいいけど、どこに預けようか? ロッカーだとこの暑さの中だと痛むかもしれないし、他の場所というと……」
「実は以前、私が下宿していた花屋さんがこの近くにあるんだ。前もって連絡しておいて快く承諾してくれてるから、今から行こうと思うんだけど、いいかな?」
「以前下宿していた、花屋……」
◇◇
テナーは、一気に鼓動が高鳴り、血の気が引いていくのを感じた。
(マルティン聖堂の一員か……)
それは、テナーにとって天敵と表現してもおかしくない存在だった。
暗い表情をして立ち尽くすテナーを心配して、ルーシーは彼を下から覗き込んだ。
「大丈夫?」
「……ああ、ごめん。大丈夫、ちょっと考え事をしていただけだから」
「そう? 熱中症でなければいいけど……」
「それは大丈夫。……うん、それじゃ、行こうか」
「ありがとう。ごめんね、遠回りさせちゃって」
「いいや、……むしろ、嬉しいよ」
そう言って、テナーはルーシーの左手を自身の右手で強めに握って、彼女の案内で花屋までの道を歩き始めたのだった。
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