第12話 職場の同僚
ご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、ルーシーの職場の一部の同僚たちの登場回となっております。
ルーシーは職場である魔法士オフィスに戻ると、室内では職員たちがそれぞれ自席で昼食を摂ったり、会話を楽しむ等をして過ごしていた。
今はちょうど昼休憩中である。
「ルーシーさん、お帰り」
王城からオフィスへと戻って来たルーシーに声をかけたのは、同係「戦闘部隊」のヘンリーだった。
ヘンリーは茶髪で、二十五歳の攻撃系魔法が得意な魔法士でありルーシーの同期だ。
ちなみにルーシーは、対魔物討伐隊の職員たちに対しては共に命をかける間柄なので、少しでも気軽に接したいと思い、苗字ではなく名前で呼ぶように伝えている。よって、同係の職員は大抵彼女を名前で呼ぶのであった。
「……ただいま戻りました」
ルーシーがいつになく力なさげに事務椅子に座る様子を見てなのか、隣の席の女性魔法士ライムは心配そうに声をかけた。
ちなみに彼女の歳は二十九歳で、サポート系魔法が得意だ。
「大丈夫ですか? 今日は、いつも以上に生気を吸われているみたいですけど」
「……はい。お気づかいをいただき、ありがとうございます」
ルーシーの表情は、暗いままだった。
「まあ、あの無表情でなんだかよく分からない圧が凄い陛下と、会話ができるだけでも凄いことだと思いますよ。私だったら絶対無理!」
ルーシーは、はたと我に帰った。
「そ、そうですよね⁉︎」
思わずライムの手を握りしめ、何度も頷いた。
「よかった。そう思っていたの、私だけじゃなかったんですね」
「ええ、それはもう」
ライムは深く頷く。
「それでルーシーさん、陛下はどんな様子……」
「……ライムさんって、陛下のファンクラブに入ってますよね」
そう声を掛けたのは、黒髪を頭部でお団子ヘアにしているタオだった。彼女の言葉にルーシーは思わず驚く。
「え、ファンクラブ?」
「……そうなの! 非公式だけど入ってるの。あの無表情なところがよいの! そしてめちゃくちゃ能力がハイスペックなところも!」
「……つまり、リスペクトし過ぎて話しづらいってことですか」
そう言って、彼女たちの間に近づいて来たのは、ヘンリーだった。
「そういうこと」
タオが頷き、再び手製の弁当を食べ始めた。
「ライムさんは、陛下に好印象を持っているんですね」
「もちろん! 彼がいなかったらこの国は今も反乱の真っ最中だったろうし、私ら魔法士はあの頃は迫害されていたからね。ファンクラブは、非公式ながらも老若男女問わず入っている人が多いのも頷けるよ」
「あの頃……」
ルーシーはこの国で反乱が起きていた頃は、隣のユベッサ公国にいたはずだからか、どうもピンとこなかった。
横目でヘンリーは咳払いをして、改めて話を切り出そうとする。
「ルーシーさん、よかったらさ今晩でも……」
ライムは察して、わざと大きな声で会話を遮った。
「あー、このキーホルダー、可愛いですね! もしかして、水族館に行ったんですか?」
そう言ったライムの指は、ルーシーの鞄に付けられたキーホルダーを差している。
「はい、昨日彼氏と行きました」
途端にルーシーは眩い笑顔になり、対してヘンリーは沈んだ表情になる。
「ルーシーさんも彼氏持ちか……。って言うか、昨日あれだけ魔法を使っておいて、その後出かけたの⁉︎ 凄くない⁉︎」
「いえ、彼は疲れてるだろうから日を改めようって言ってくれたんですけど、私が会いたかったので」
頬を赤らめるルーシーを見て、ヘンリーは「へえー……」と呟き目を細めた。
「彼氏、年上?」
「いいえ。オリーブ大学の二年生なんです」
ライムは、思わず食いついた。
「大学生なんだ。彼氏がいるのはなんとなく知ってたけど、ルーシーさんって年上と付き合ってそうだったから、ちょっと意外」
「そうですか?」
ルーシーは、意外な意見を聞いたと思った。
そういえば自分は、以前にも年下の男性のことを気にかけていたような気がする。
「ええまあ、なんとなくですけど」
そう言いながらライムは、ふとあることが思い浮かんだが、すんでのところで悩んで言葉にするのは止めておいた。
「なんかルーシーさんって、男にものすごく貢いでそう」
黙々と手製の弁当を食べていたタオが口を開き、思わずルーシーは驚いたがすぐに苦笑した。
ちなみにライムは、自分の本音が思わず漏れてしまったのかと思った。
「え⁉︎ そ、そうですか?」
「人がよすぎて、気が付かないうちに、めっちゃ貢いでるの……」
ライムは、内心焦りながらも呆れた様子で言った。
「それは、あんたのことでしょう」
「うう、もう三年も前のことです」
現在二十七歳のタオだが、二十四歳の頃に彼女に何があったのか、ルーシーは気にかかったが勇気がなくてとても訊けそうになかった。
「何があったんですか?」
ヘンリーが普通に聞いている様子を見て、ルーシーは凄いなと感心した。
ちなみにそのタオの苦労話は、昼休憩が終わる間近まで続いたのであった。
お読みいただき、ありがとうございました。
彼らは何しろ命懸けの仕事を行なっているので、他の部署の職員たちと比べたら中々クセが強めとなっています。
また今後ピックアップされる職員が何名か登場予定です。
次回も、お読みいただけると嬉しいです。




