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第3話 お金がない!


 お金が、ない――――!


 何気なく財布を覗いてみると、札束が一枚もなく硬貨も一円二枚と十円一枚と十二円しかなかった。

 一九九九年七月三十一日から十八年後の二〇だ、部活もクラブもやっていないのにその肉体を得たのは彼が望んで得たものでもなく、ただ流されるままに滅茶苦茶な訓練をされて得た体であった。


「ガチャなんてしなけりゃ良かった。本当にあれは悪辣な商法だ……天井がないから無限に金を消費してしまう」


 そんな健全な肉体をしている男に健全な精神は宿らなかったようでしょうもないことで散財し、頭を抱えている。


「そうして食費も消費してしまったというわけね。ほんと無計画なバカなんだから、司さんは」


 司の横で呆れはてている、花の髪留めをした少女。名前は赤川火伊奈(あかがわひいな)。司の隣に住んでいる幼馴染で、司と同じクラスでもある。


「火伊奈……ごめん、お金貸して?」

「イヤよ。自業自得でしょ。ソシャゲやってお金するなんて。食費ってことはおばさんからもらったお金もスッたんでしょ?」

「ぐ……三万は前やってた新聞配達のバイトの金だし……」

「三万⁉ あんた三万もゲームのデータにつぎ込んだの⁉ そんな後に残らないものに⁉」

「だって聞いてくれよ! この『ヴィジョンマシンコロシアム』の確率アップガチ

ャ! セイントロウナイト出現率十%アップとか言っておきながら120連やっても一向に出なかったんだぜ⁉ おかしいだろ! 消費者センターに訴えてやる!」


 司が付きつけてきたガチャ画面には確かに十%アップとでかでかと文字が記載し、白く輝く鎧を身にまとっているようなロボットが映っていた。シャープなデザインで火伊奈は少しかっこいいなと思ってしまったが、三万円以上もかける価値があるようには思えない。


「まごうことなき自業自得でしたお疲れ様。じゃ、あたし照子たちと食べてくるから」


 弁当を片手に扉の前で待っているツインテールの女子と制服のサイズが慎重にあっていない、袖がぶらんと垂れ下がっている小柄な女子の元へと向かう。


「おいおい、一緒に食べないのかよ?」


 あわよくば火伊奈の弁当をつまみ食いしようとしている考えを見透かされてか火伊奈は軽蔑の目を向ける。


「何で私があんたとご飯食べなきゃいけないのよ。幼馴染だからって学校でも一緒なわけないでしょ?」

「え~、じゃあなんでわざわざ市子たち待たせてまで俺と話してんのよ? 俺と一緒に食べたいんじゃないの~?」

「阿呆。おじいちゃんから伝言があったから忘れないうちにってのと。なんかずっとうなだれてたから心配で……」


 火伊奈の目が泳いで顔がほんのり赤くなった。

 何故だかよくわからないが照れているようだ。幼馴染を心配するのがそんなに照れくさいのだろうか。


「心配してるんなら金を……ていうのは冗談で、じじいからの伝言って?」


 軽口を叩こうとするものなら火伊奈は烈火のごとく怒りそうだったので途中でやめておいて本題の方を聞く。


「ああ、おじいちゃんが今日の放課後工場に来いってさ」

「いやだ! 赤川工場にいって良かったためしなんて生まれて一度もないんだ!」

「もう社長が変わって鷲尾(わしお)工場だけどね。伝えたから、来るかどうかはあんたに任せる。じゃ」

「あ、火伊奈!」


 火伊奈は仲良しの女子二人組とともにどこかへと行ってしまった。



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