四話 花火とファーストキス
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《ヒューーーーー…ドーン!》
夏の夜空に咲く綺麗な花、その花は一瞬で咲き一瞬で散る…だけどそんな儚い花だから皆見たくなる。
一瞬の輝きが想い出に残るから。
「とも君!花火綺麗だね?」
雛はそう言って俺の方を見る。
「うん…綺麗…でも…」
目をキラつかせて言う雛に俺は少しばかり悲しげな…でも、優しげな表情でそう言った。
「でも?」
雛は首を傾げて俺に言う。
「……空に咲く大きいく綺麗な花…だけどそれは一瞬で散り行く儚い花…散っていく時はなんか悲しくなるって今まで思ってた…だけど…雛と見る花火はなんだか暖かい…心がホッとする…」
《ヒューー………ドーーン!パチパチパチパチ…》
俺は花火を見上げる顔を雛に向けそう口にした。
「そっか…」
雛はそう一言だけ言って空に打ち上げられた花火を見ながら俺の手をキュッと掴んだ。
「………」
俺の手を掴んだ細く柔らかく小さな雛の手を俺は黙ってキュッと握り返しまた空を見上げる。
《握る手が暑いのは雛の体温が高いせいなのか…心臓がドクドクと早くなるのは何でなのか…花火の明かりに照らされる雛が物凄く可愛く見えるのは…俺は出会って2日のほぼ初対面の彼女を好きになったのか?だとしたら何時だ?いや…違う…何時じゃない…きっとあの時、死のうとしていた俺に声をかけてくれた日に、俺は既に彼女が好きになっていたんだ…一目惚れしたんだ…同じく死のうとしていた彼女に坂口 雛に…》
「花火…良かったね?」
「そうだね…雛…」
「ん?」
花火大会が終わり部屋に戻ってきた俺は感情が押さえられなくなり雛に抱きつきキスをする。
「んっ…んっ…はぁ…はぁ…とも君…急に…んっ!」
雛の言葉を遮り俺はさらに唇を重ねた。
「はぁ…はぁ…はぁ…あっ……ごっ……ごめん!雛が可愛くて…つい…」
暫くキスをした後我に返った俺はハッとなり雛の前に土下座しながらそういった。
「はぁ…はぁ…もー…いきなりは反則だよ…」
雛は顔を真っ赤にさせ息を切らしながらそう口にする。
「ごめん…いや…だったよね?殴るなり蹴るなり警察に引き渡すなりなんなり雛の好きなようにして…」
俺は床にでこをつけながらそう言う。
「はぁ…今警察に言ったら私たち家に連れ戻されるでしょ?」
「あっ……」
「それに…その…嫌じゃ…なかった…」
そう口にした雛の顔は茹でだこのように真っ赤になっていた。
「えっ……それは…どういう…」
そこまで言って俺の唇は雛の唇に塞がれた。
「んっ!?」
一瞬の出来事で目を見開いた俺だったが雛の唇の柔らかさ暖かさで見開いた目を静かに閉じた。
「………」
「………」
キスの後気まずくなり部屋に敷かれた布団に横になった俺たちはその後、特に何もなくドクンドクンと煩くなりやまない心臓と共に夜が過ぎる。
《なんとか理性は保てた…》
俺は夢うつつにそう思っい眠りについた。
「んー!」
窓ガラスから差し込む明かりで俺は目を覚ます。
「すー…すー…」
隣では静かに吐息をたてながら雛が眠っている。
「ふっ…よく眠ってる…」
俺は小声でそう言って微笑み雛の頭を軽く撫でる。
「ん…んー………とも君?おはよう?」
いきなり起きた雛にビックリし俺は、慌てて撫でていた手を後ろに隠す。
「おっ…おはよう!」
「とも君…もしかして私に何かいたずらしようとしてた?」
目を細めニコッと微笑む雛。
「いや…何も…」
「ふふっ…冗談だよ!そんなしどろもどろしなくても…でも、頭は撫でてたでしょ?とも君あんな顔するんだね?」
「おっ…起きて…」
「とも君と同じ事を私もとも君が起きる前にしたからね!」
そう言って雛は悪戯っぽく笑みを見せた。
「えっ!?それどういう…」
「朝ごはん食べに行こう!」
俺の質問を遮るように雛はそう言った。
――――――――――――――――――
俺達は朝ごはんを食べ宿のチェックアウトを済ませ昨日の続きである沖縄観光をする。
「とーも君!」
「ん?」
(パシャ)
雛に声をかけられそちらを見た瞬間カメラのシャッター音が鳴る。
「えっ?何?」
「記念!とも君との旅先の想い出!」
雛はそう言って笑った。
「俺ばっかり?雛も撮らせろ!」
「えー…私はいいよー…」
「不公平だよ…」
そんな会話をしていた時だった。
「お若い夫婦だね?どれ、わしが二人を撮ってやる!カメラを…」
何処からともなくニコニコと笑いながら老人がそう言ってきた。
「えっ…あー…じゃあお願いします…」
俺は老人にカメラを渡す。
「ほれほれ!もっとよったよった!」
老人に言われて俺達は肩を寄せる。
「じゃあ撮るぞー!」
(パシャ)
「ほれ!若いっていいのぅ…」
そう言ってカメラを渡した老人はそう言ってニコリと微笑み去っていく。
「おじいさん…ありがとうございました!」
俺の言葉に老人は手をふり返した。
「そう言えばとも君…」
「ん?何?」
「もうすぐ飛行機の時間…」
雛のその言葉を聞き時計を見る。
時計は飛行機が出る一時間前を指していた。
「やば…ここから空港までのバスは…えっ……30分後…間に合わない…」
「とも君!とも君!これは?」
呆然とした俺の肩を叩き雛はあるものを指差す。
「ナイス、雛!これなら…」
雛が指差す先にはレンタル自転車店があった。
俺らは自転車を2台借もうスピードで空港に向けて走り出した。
最後までありがとうございます!