二話 旅立ちの朝
宜しくお願いします!
雛との旅を決めた日の次の日、まだ空は薄暗く、小さな星達がポツリポツリと残る朝、俺は家の机に置き手紙を書き、最低限の荷物を肩に、今まで溜め込んだ通帳とカードを持ち静かに家の扉を開け外へと出た。
待ち合わせ場所に着くと、駅前の木の下に雛は既に立って待っていた。
「ごめん…待った?」
「ううん!私もさっき着いたばかりだったから!」
雛は微笑みながらそう言う。
「そっか!じゃあ何処から行く?」
「うーん…まずは…」
雛はニコッと笑みを浮かばせ俺を見る。
「「着いたー!おっきーなわー!!」」
俺と雛は空高く手を上げそう叫ぶ。
東京羽田空港から約3時間俺達は太陽がジリジリと焼き付け、海はキラキラと輝き絶景の景色に足を踏み出した。
「あっつー…」
「暑いね(笑)」
俺は尋常じゃない程汗をかきそう口にすると、雛は笑いながらそう返事をした。
「じゃあ…行こう!とも君」
雛はそう言うと俺の手を握り走り出す。
《昨日会ったばかりの女の子なのに》
《俺達は死のうとしていたのに》
《雛はなんでこの世から居なくなろうとしてたんだろう?それに…》
「とも君?どうかした?」
「のわっ!」
色々と考えている俺に顔を近づけて雛は言い、俺はそれに驚き変な声を出していた。
「ぷっ……くくく…」
俺の驚きようが可笑しかったらしく雛は声を殺しながら笑っていた。
「はぁ…雛…雛さん…声殺して笑うんだったら、思いっきり笑ってくれませんか?」
俺はため息をつきながらそう言う。
「ごめんね…とも君の驚いた顔が…面白…くっ…て…くっ…ははははは!」
そう言うと雛は涙を浮かべながら笑った。
「雛…笑いすぎ…ふっ…」
気がつけば、さっきまで考えていた事がもうどうでもよくなっていて、雛の笑い顔に釣られて俺も一緒に笑った。
「じゃあ、改めて沖縄観光レッツゴー!」
「おー!!」
俺達はそう言って予約を入れたホテルに荷物だけを預け、財布を持って沖縄観光に繰り出した。
「うわー!とも君…シーサーだよ!」
「シーサーだね?」
「首里城って本当に真っ赤だね?」
「そうだな!綺麗な赤色だね?」
「うーみーはひろいーなおおきーいなー!」
「つーきーがーのぼるーしひがしーずーむー!」
「懐かしい!」
沖縄観光を楽しんだ俺達はホテルに戻りチェックインをするためにロビーに行く。
「稲辺様ですね…お預かりしておりましたお二人分のお荷物をお返しいたします…此方がお部屋の鍵となっております!何かありましたらフロント受付までお電話下さい!」
「はい!ありがとうございます!」
俺達は怪しまれないために恋人同士としてホテルを予約していた。
「わー!とも君!とも君!スッゴい景色!」
「そうだね!綺麗な景色だね!」
「とも君!確かフロントに今日ホテルの近くで花火大会があるってポスター貼ってなかった?」
「あっ…確かに貼ってあったね?」
「私たちものスッゴく幸運なんじゃないかな?」
「確かに!ホテルの近くで花火大会があって…昨日電話したらちょうど空きが出てて…ラッキーだな!」
はしゃぐ雛にそう言いながら俺はニコリと微笑んだ。
「花火大会が始まる前にお風呂入ってこない?」
「うん!そうしようか!」
俺と雛はお風呂道具と着替えを持ちそれぞれ大浴場に向かった。
「じゃ…とも君また後で!」
「うん!ゆっくりしてきなよ!」
そう言って俺達はそれぞれ大浴場に入った。
【一時間後】
「ふー!さっぱりした!」
俺はそう言いながら大浴場を出た。
「あっ…とも君も今上がり?」
俺の数十秒後に雛が大浴場から出て来てそう言う。
「………」
「ん?とも君?」
「…あっ…ごめん…」
雛の風呂上がりの姿に俺は内心ドキッとした。
さらさらの髪の毛、絹のような肌、浴衣の間から見える綺麗なうなじ、火照った顔、俺の心臓は高鳴っていった。
「あっ!とも君…お風呂場で聞いたんだけどここのホテル、屋上に観覧スペースがあってそこから花火見れるらしいんだ!だから早く行こっ!」
雛は目をキラつかせ俺の手を握った。
「えっちょっそんなに引っ張るなって!」
俺はそう言いながら雛から引っ張られホテルの屋上に足を進めた。
《今日俺理性保てるかな…》
最後までご視聴してくださりありがとうございます!
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