沖田総司
人を殺した。
何人も何人も。
生臭い。
血腥い。
幕府のために振るうこの手には血がこびりついている。
血刀は拭えても、手についた穢れは払えない。
重い。
腕にのしかかる死に絶えた敵の骸。
これが先ほどまで軽やかに動いていたものだろうか。
こんなにもこんなにも重い。
軽く振るう切っ先に触れた途端重くなる。
それは骸の重さか、魂の量か。
重い、重い、のしかかる命の量。
鴻毛より軽いか。
泰山より重いか。
これが敵の命。
軽いと思っていた敵の肉。
紅に染まる路傍は彼の血の色か。
それとも己が吐いたる血の色か。
斬った。
たくさん斬った。
殺した。
数えきれないほど殺した。
だが今は欲しい。
命が欲しい。
明日が欲しい。
愛しき彼女を抱けぬ体。
感染してしまう病に犯されたこの体。
だが生きたい。
生きて彼女と一緒になりたい。
嗚呼、嗚呼、血、血、命。
命が地に吸われて行く。
願わくばもう少し。
もう少しだけ──。