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ゲームサークル(仮)

文中に出てくる作品名は実在するものとは何の関係もありません。

ないったらないんです。

「でな、やっぱ『メロクエ』はⅡが特に一番神作やと思うんや!

勿論全部神なんやけどな、ストーリーであそこまで感動したのは初めてで、そっからどハマりしたんや」


「わかる、私もⅡをしてから集め始めた。

全作やってるけど、未だにストーリーでⅡを上回るものは無いと思う」


「やんな、やんな!

やっぱ桃ちゃんわかってるわ!グラフィックは最近のやつのが綺麗になっとるけど、昔のあの独特なタッチも好きやったんよなぁ」


「それは間違いない。あの絵柄だからこそⅡのストーリーが際立ったと言ってもいい。

緋色もよく分かってる」


「せやろせやろ!

俺も色んなゲームやっとるけど、『メロクエ』が一番やりこんどるからな。知識じゃ誰にも負けんで」


「ほう、なら、試してみる?」


「お、やるんか?」


目を輝かせながら熱弁し合っているのは緋色と桃である。

桃の「私も、『メロニカルクエスト』やってるよ」という一言から始まった会話は、二人に時間の流れを感じさせないでいた。

桃自身も、自分が人見知りで話し相手が初対面だということも忘れ、会話に熱中する。

緋色の親しみやすい性格がそうさせるのか、二人の相性がよかったからなのかは定かではないが、恐らく両方なのだろう。


また、話が盛り上がっているのはこの二人だけではなかった。


「最近、『アワクラ』で館を作ってみたんだよ。

有名なホラーゲームの『赤鬼』を完全再現してみたんだけど、めちゃくちゃ大変だった」


「それ、やばい。

私も大型建築とかしてみたいと思ってるんだけど、いつも途中で諦めちゃって全然作れてないの。

蒼は、設計図とかどうしてる?」


「俺の場合は、スケッチブックに細かくマス目とか何の材料を使うかとか全部記入してるかな。

じゃないとズレたりして大変だし、分からなくなる時もあるから」


「なるほどねぇ、何も考えず作り出すから駄目なんだよね。

次から、私も設計図みたいなの作ってみようかなぁ」


「あ、それなら今度作ろうと思ってるやつあるんだけど、翠も一緒に作らない?

流石に一人で作るのも大変でさ」


「え、やりたい!けど、いいの?

私、そんなにゲーム得意じゃないから足引っ張るかも」


「そんなの全然気にしなくていいよ。

ゲームなんて楽しんでなんぼでしょ?」


蒼と翠もまた、共通の好きなゲームである『アワークラフト』を通して、大いに盛り上がっていた。

今まで周りに一緒に『アワークラフト』をする友達がいなかった蒼にとって、翠の存在はとても嬉しいものであったし、翠にとっても同様であった。


基本は二人ずつで話しながらも、時折それぞれ話に顔を出し、四人は急激にその仲を深めていく。

そんな楽しい食事会が終わりを告げたのは、新入生ガイダンスが始まる時間になってしまったからである。


「もうこんな時間か」


「ほんまやん、あっという間やな」


全員、あまりにも早く進んだ時間に驚きを隠しきれない様子だ。

そんな中、蒼は一旦纏めるように発言する。


「とりあえず、さっきも言ったけど、サークルのことに関しては俺が調べておくよ。

みんなで話してて、やっぱり楽しいなって思ったし。

詳しいことが分かったら連絡したいから、『Line』教えてもらってもいい?」


「お、ええで」


「うん、色々ありがとう」


「ん、わかった」


『Line』とは、携帯のメール代わりに急速に流行した、メッセージアプリのことだ。

三種三様の言葉を受けながらそれぞれと『Line』を交換した蒼は、すぐに四人のグループを作った。

新入生ガイダンスは学科ごとに行われるため、同じ学科である翠と桃はともかく、蒼と緋色はどうしても接する機会が減ってしまう。

そのため、『Line』を通してのグループトークは重要になっていくと考えたのだ。


「グループ名は、どうしよう?」


「とりあえずは、『ゲームサークル(仮)』とかにしといたらいいんじゃないかなぁ」


「俺もそれでいいと思うで」


「また正式に決まったら、変えればいいだけ」


そんな意見を受けて、グループ名は『ゲームサークル(仮)』に決定する。

この『ゲームサークル』という文字は、蒼を不思議と幸せな気持ちにする。

当初はどうなるかと思っていたが、いきなり友達ができ、更に消えかけていたサークルの夢までまた見ることが出来て蒼は感無量だった。


「じゃあ、数学科は教室同じやから、俺と蒼は一緒に行こか。

翠ちゃんも桃ちゃんも、またな」


「そうだね、じゃあまた連絡するよ」


「うん、待ってるね、バイバイ」


「ん、またね」


ヒラヒラと手を振る二人に振り返しながら、蒼と緋色は一旦別れを告げた。

その足取りが軽く感じるのは、誰の気の所為というわけでもないのだろう。


さっきまではただ蒸し暑く感じていた陽の光が、何故だか今は眩しく感じた。





「とりあえず分かったことは色々あるから、順番に話していくよ」


『了解やで』


『うん』


『わかった』


ガイダンスが終わった後、ネットで調べたり教務課に足を運んだりして知ったことを、蒼は『Line』のグループ通話を利用して全員に伝える。


今の時刻は大体17時頃。

それぞれが帰宅し、通話をできる環境を整えることが出来たのが大体それくらいの時間だった。


下宿して一人暮らしをしている蒼や緋色と違い、翠と桃はそこまで家が遠くないことから実家通いをしている。

そのため、通話をする環境というのも大事になってくるようだ。


「まず、結論から言えばサークル自体を作ることはできるらしい。

人数も、最低限必要な3人以上いれば大丈夫だし、その点はちゃんと条件を満たせれてる」


『でも、その言い方するってことは、他に問題があったってことか?』


「問題っていうより、規律だね。

俺たちが『何を目的に、誰のために作るのか』ということを明確にしておかないと、サークルの運営は続かないと言われたよ」


教務課でのアドバイスとして言われたのは、サークルを新しく作るのは色んな責任が振り積もって大変だということ。

蒼のように自分の望むサークルを実際に作った例も幾つかあるらしいが、どれも続かなくて消えてしまったらしい。

『Wash』もその一つである、ということを蒼が告げると、他の三人は真剣に考えざるを得なかった。


『でも、目的はハッキリしてるよね?

この大学にはない、ゲームをするサークルを作りたいっていう』


『まあそうなんだけどね。

でも、それを曖昧にするのと明確にしておくのとじゃやっぱり変わってくるからさ』


『なら、紙にでも書いておけばいい。

最低限のルールと、目的を』


そう淡々と告げるのは桃だ。

その理にかなった意見に、緋色も同調する。


『それがええやん。

この先どうなるかはわからんけど、今は俺ら四人だけのサークルやしな。

そこまで堅苦しくなる必要も無いやろ』


「まあそうだね。

了解、簡単にまとめておくよ」


蒼もそれ自体に反対はなかったため、その話は一旦そこで終わる。

だが、問題なのは次の話題からだった。


「サークルを作るのに、顧問の教授は必ずしも必要ではないみたい。

高校の時と違って結構自由だからね。

ただ、その代わりと言ったらなんだけど、部室というものも与えられないらしいんだよ」


『まじか。

それはこの先ずっとってことか?』


「いや、それはわからない。

けど、ずっとの可能性もあるから、どうしようかなって」


ゲームをするという性質上、どうしてもそれをする『場所』というものが必要になってくる。

運動サークルのように体育館を借りたりグラウンドを借りる訳にも行かないし、中々に厄介な案件であった。


『とりあえずは、空き教室とかを探すしかないんじゃないかなぁ。

テレビに繋いだりしない限り、問題ないと思うし』


「俺もそう思ってる。

他に打開策が出たら変えるかもしれないけど、とりあえずはそれで大丈夫かな?」


翠の意見は、蒼も考えていたことであった。

むしろ、それくらいしか思いつかなかったという節まである。

だからこれもすんなり決まると思っていたのだが、ここで緋色からも意見が出る。


『それなら、俺の家に集まればええやん。

学校からも近いし、一人暮らしやし、まだ引越ししたてで何もないから四人くらい余裕やで』


他にサークルに入る人が出ない限りは、という条件で緋色は話す。

誰かの家に集まるというのは、高校までずっと実家暮らしをしていた蒼にとって盲点だった。


「なるほど、それもいいな。

でも、翠と桃は抵抗ないか?

言っても俺ら今日出会ったばっかだし」


『んー、二人のこと信用はしてるけど、少し活動に慣れてからがいいかなぁ。

最初は空き教室で活動して、慣れてきたら緋色君の家にお邪魔させてもらうっていうのはどうかな?』


『私も、二人なら多分大丈夫。

翠に賛成』


二人からの信頼に、蒼と緋色は嬉しい気持ちになる。

その信用を失わないようにしないといけないな、と思いながら、蒼は話をまとめる。


「じゃあ、最初は空き教室、慣れてきたら緋色の家ってことで。

俺も一人暮らしだから、緋色の家が無理な時は俺の家も使えるようにしておくよ」


『おお、それは助かるわ』


流石に毎週緋色の家にお世話になるのも忍びない。

それに、片付けをする習慣がつくから、と蒼は軽く笑う。


「あと決めないといけないのは、活動頻度をどうするかと、代表とかの役職決めだね」


『代表は蒼やろ』


『代表は蒼かなぁ』


『代表は蒼』


同時に聞こえてきた声に、思わず四人は吹き出してしまう。


『言い出しっぺやし、めっちゃしっかりしてるもんな』


『うん、このメンバーでこうやって話せてるのも蒼のお陰だし、代表まで任せちゃうのは申し訳ないけど、お願いしたいかな』


『少なくとも、私は無理。

蒼が適任』


そう口々に言われては悪い気はしないので、蒼も素直に頷く。

元々希望者がいなかったら自分が引き受けるつもりだったのだ。


「あとはとりあえず副代表と、いるか分からないけど会計かな」


『副代表は私がやるよ。

さっきも言ったけど、蒼に全部任せるのも悪いから。

いいかな?』


『ええで。

俺は会計やるわ。ゆくゆくは俺の家に集まることになるんなら、使ったお金とかも管理しやすいしな。

まあ、そこまで使うこともなさそうやけど』


『じゃあ、私は他に必要なことが出来たらやる』


役職に関してはすんなりと決まる。

蒼が予め想定していたメンバーと相違なかったので、話は活動頻度へと移る。


『俺としては、明確な曜日は決めんと遊べる日に遊ぶって感覚でええと思うんやけどな』


「それもいいとは思うんだけど、それだと他に用事が被ったり、約束もしにくくなったりで面倒だと思うんだよ」


『全員が集まる日を週一回くらい作って、あとは遊べる人がその都度グループに招集みたいなのはどうかな?』


翠の意見にしっくり来るものがあった蒼は、なるほど、と納得する。


「確かに、遊ぶ時に絶対に顔を合わせる必要もないよな。

今はオンラインで十分遊べる時代だし、みんなで集まる時以外はグループ通話を繋げればいいのか」


『俺が行ける日やったら俺ん家来てもいいしな。

まあその辺の融通はいくらでも聞くやろ』


『どうせ、暇人ばかり。

しょっちゅうグループ通話が開かれてるのが、目に見える』


桃の辛辣な言葉に反論できない三人。

実際、他にやる事ないの?と聞かれたら、「ない」と答えるしかないので、桃の指摘は的を得ていると言える。


その後、全員が集まる日をとりあえず、午後の授業が行われないとされている水曜日の午後からに決定した四人は、今日はお開きにすることにした。


蒼も緋色も、まだ一人暮らしに慣れておらず、家事などもしないといけない。

そうして大体の方向性が定まった『ゲームサークル(仮)』であったが、翌日、保留にしていたサークル名のことでまた頭を悩ませる羽目になるのだった。


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