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『ワンナイト人狼』1

「例えばこういう六種類のカードでゲームを始めるとするでしょう?」


翠が、『人狼』、『人狼』、『占い師』、『怪盗』、『てるてる坊主』、『村人』の六枚を場に並べる。


「これを裏向きにして、シャッフルするの。

それから、裏向きのまま一人に一枚ずつ配る」


翠はシャッフルしたカードを順番にそれぞれに配っていく。

そうすると、当然の結果として裏向きのカードが二枚余ることになった。


「この余った二枚のカードが、『ジジ抜き』で言うところのジジみたいな感じになるの。

要は、分からないカードがあることで、ゲームを複雑にするって言えばいいのかな?」


「余ったカードは、そのゲーム中は無いものになるんだ。

だから、『人狼』カードが二枚とも余ったら、『人狼』がいないゲームになる可能性もあるよ」


そう蒼が補足する通り、六枚あるカードのどの二枚が余るかは全く分からない。

欠けたカード次第では、混沌としたゲームになることも容易に有り得ることだった。


「それを知ってもらった上で、役職の説明をするね」


翠は順番にカードを並べる。

まずは『人狼ゲーム』における村人側の要である、『占い師』についてだ。


「『占い師』は、最初の役職を見るターンに、誰か一人のカードを見るか、余った二枚のカードの両方を見るかを選ぶことが出来るの」


「ん?それめっちゃ強ないか?

要は、一人だけ有利な情報持っとるってことやろ?」


「そうだね。

でも、だからこそ、その強い『占い師』を一人に確定させたくない『人狼』は、自分が『占い師』だよって嘘をついて、みんなを混乱させたりするの」


「はー、なるほどな。

確かに、二人も三人も『占い師』出てきたら訳分からんことになるな」


このゲームにおける『占い師』の役割は、簡単なようでとても難しい。

自分が得た情報を周りに『信じてもらう』ことが何より大切になるのだ。


「次は『怪盗』。

このカードは、誰か一人のカードと自分のカードを入れ替えることが出来るの。

入れ替えられた人は、気づかないまま『村人』になって、『怪盗』は交換した役職になるの」


「正直、『怪盗』が一番ヤバイよね。

何がヤバいって、自分が『人狼』を引いて『人狼』の動きをしてる時に、実は『怪盗』に入れ替えられてて『村人』になっていた、ってパターンとかがあるんだよ」


「うわぁ、それやばいやん。

ん?じゃあ、もし『怪盗』で『占い師』と交換した時は、そのまま占ったりできるんか?」


「それはできないよ。

『占い師』は自分の順番で誰かのカードを見てるから、交換して『怪盗』が『占い師』になっても、その仕事をすることは出来ないの。

逆に、『占い師』が『怪盗』を見た時は、何と交換しててもそのまま『怪盗』って表示されるよ」


「つまり、基本的に『人狼』と交換せん限りはあんま意味ないってことやな」


緋色がそう簡単に結論付ける。

実態はそう単純では無いのだが、間違ってはいないか、と翠は一旦流す。


「次に『てるてる坊主』だね。

この役職はシンプルで、『人狼』チームとか『村人』チームとか関係なく、自分が処刑されれば一人勝ちになるの」


「ん?じゃあ『村人』とか『人狼』が処刑されたら負けになるんか?」


「うん、自分が処刑された時だけ勝てるの。

だから、『てるてる坊主』はどんな嘘でもつくし、自分が処刑されるためには手段を問わないよ」


「ほー、それは奥が深そうやなぁ」


実は、『てるてる坊主』が難易度で言うと一番高い。

自分が何かしらのアクションを起こして『処刑されに行く』必要があるため、高度なプレイングが要求されるのである。


「ルールはこんな感じかな。

だいたい理解出来たかな?」


「んー、ある程度はわかった気もするけど、正直実際にやってみな何とも言えんな。

でも、面白そうやなとは思ったで!」


確かに、こういうゲームは説明を聞くよりも実際にやってみるのが一番だという。


「じゃあ、一回やってみようか」


「何度もやったら、慣れる」


蒼と桃の言葉に同意し、緋色にとっては初となる『ワンナイト人狼』がスタートとなった。





「進行役が必要だけど、進行に専念しちゃうと人数が少なくなっちゃうから、私が進行兼プレイヤーをするね」


「うん、助かるよ」


翠がカードをシャッフルしながらそう願い出る。

GMゲームマスターと呼ばれる『人狼ゲーム』における進行役は、基本的にゲームに参加できない。

ただ、『ワンナイト人狼』においてはその限りでもなかった。


今回選んだカードはさっきまで説明した通りの六枚。

『占い師』、『怪盗』、『てるてる坊主』、『村人』と『人狼』が二枚である。


最初は優しめのカードにしようか、と提案した蒼であったが、緋色の「なんとかなるやろ!」というセリフでこういう結果となった。


翠がGMとして、裏向きのまま一人一枚ずつカードを配る。

そして余った二枚のカードを中央に置き、全員に目を閉じて顔を伏せるように告げた。


翠がまず、『人狼』は顔を上げるように言う。

蒼の役職は『村人』だったので、体勢は変えない。

誰が今顔を上げて仲間を確認しているのか分からないのは、中々緊張感があるものであった。


『人狼』に顔を伏せるように言った後、翠は次に「『占い師』は顔を上げてください」と言う。

翠はGMだが、プレイヤーでもあるので、確認することは出来ない。

10秒間秒数を数え、『占い師』にも顔を伏せるように言った。


その後、『怪盗』のターンも終わり、いよいよ役職確認の時間は終了だ。


「それじゃ、話し合いを始めよっか」


そのGMである翠の言葉を皮切りに、第一回戦が始まる。

話し合う時間は5分間。

場合によっては延長する可能性はあるが、基本はこの時間内で話し合いを終わらせなければいけない。


「まずは、一番テンプレな方法で、『占い師』の人に手を上げてもらおうかな?」


「うん、それでいいと思うよ。

時間決めて同時にね」


「俺はまだようわからんから、流れは任せるで!」


とにかく情報がないことには話し合いは始まらないので、まずは『占い師』の情報を得ようと考える。

「5秒数えてからね」と蒼が言い、同時に手をあげさせると。


「むむ、そう来ると思った」


「あれ、俺一人じゃないやん」


『占い師』に名乗り出たのは桃と緋色の二人。

この時点で少なくともどちらかに嘘つきがいることが分かる。


「とりあえず、誰を占ったか同時に指を指してもらっていい?」


二人でた以上、『村人』である蒼に必要なのは、どっちが本物なのか見極めること。

そう促すと、二人は同時に互いを指さす。


「なるほどこれは……」


「私たち、完全に蚊帳の外だねぇ」


なんとなくそうなる気がしていた蒼は、軽くため息をつく。

これではほとんど情報がない。


「それで、結果はどうだったの?」


「人狼」

「人狼やったで」


口を揃えて相手のことを『人狼』だという二人。

結局ほとんどわからないな、と蒼は思ったが、翠にとってはそうではなかったようで安心したように頷く。


「よかった、これで片方が『てるてる坊主』の可能性がほとんど消えたね」


「あー、確かに」


翠が懸念していたのは、どちらかが『てるてる坊主』で嘘をついて自分が処刑されに来ているパターンだ。

お互いがお互いを『人狼』と言い合っている現状、その可能性はほとんどないと言ってもいい。


「ちなみに、俺は『村人』だったよ」


「ふふ、知ってるよ。

私は『怪盗』だからね。

蒼と交換して『村人』を盗ったの」


そうカミングアウトする翠に、蒼はほっと一安心。

これで、蒼の中で『人狼』候補が桃と緋色の二人に絞られる。

ただ、そのどちらであるかは蒼には全く判別がつかなかった。


「いやほんまに俺が本物なんや!

桃ちゃんが『人狼』やって、この目ではっきり見たで!」


「違う。緋色の言ってることは嘘っぱち。

本物は私」


二人がそう言い合うが、どちらが本当のことを言っているか分からない。

頭を悩ます蒼に、翠がこんな提案を。


「これ、実はもうほとんど勝ってるの」


「え?」


翠が言うのは、衝撃的なルールの穴。


「『ワンナイト人狼』で二人が同票だった場合、二人とも処刑することが出来るの。

片方に『人狼』が混ざっていたら『村人』の勝ち。

もし『てるてる坊主』が混ざっちゃってたら、『てるてる坊主』の勝ちになっちゃうけど、この場合だとほとんどないでしょ?」


二人が互いに『人狼』だと言い合い、処刑先が二人に絞られている状況。

『てるてる坊主』がいる可能性が限りなく低い現状、二人を処刑するという選択が最良だと翠は言う。


「なるほど、確かにそうだね。

じゃあ、俺と翠が票をわざと分ければ」


「そう、怪しい二人を纏めて処刑できるって訳。

桃と緋色君も、本物の『占い師』なら呑めるよね?」


そう笑顔で迫る翠に、桃は当然とばかりに頷き、緋色は冷や汗。


「いやでも、『村人』側からしたら、俺らの中に『てるてる坊主』おる可能性もあるんやろ?

やったら、桃ちゃん確実に処刑した方が絶対に勝てるで!」


「うーん、緋色君の言ってることもわかるけど、緋色君が本物っていう確証が私達にはないの。

それに、桃はすぐに頷いたのに緋色君は今抵抗してるでしょ?

もしも緋色君が本物なら、桃は絶対に『人狼』なんだから処刑されてもいいよね?

その辺はどうなの?」


「………なあ、桃。

翠がなんか怖いんだが」


「翠はこういうゲームになると、物凄く強い。

敵になると怖いけど、味方になると頼もしい」


翠が淡々と笑顔で問い詰め、緋色はたじたじだ。

それもそのはず、翠の正確な理論に、緋色の立ち入る隙など無いのだから。


「わ、わかったわ!

じゃあ処刑を飲んだろやないか!」


「うん、分かってくれてよかったぁ。

じゃあ蒼、私は桃に、蒼は緋色君に投票ってことでいいよね?」


「う、うん、それで大丈夫だよ」


蒼と異論はないと、それに頷く。

まさに翠の独壇場のようになっていた。

翠は、緋色と桃にも「お互いに入れ合ってね」と言い、いっせーのーで指を指し合う。


緋色は桃に、桃は緋色に。

蒼は言われた通り緋色に。

翠は桃に投票する。


これで緋色と桃が二票ずつ。

二人が同時に処刑される事が決定する。


「これで私たちの勝利。

悪は滅びるもの」


「くっそおお、今のはきついてぇ」


二人の反応を見るに、緋色が『人狼』だったのだろう。

つまり『村人』の勝ちということになる。

その事にホッとする蒼は、緋色がめくったカードを見て、呆然とする。


「え、『怪盗』?」


緋色の元にあったのは『怪盗』のカード。

それは本来、翠に交換された自分の元にあるべきカードで。

慌てて自分のカードを確認した蒼は、それが『村人』のままであることを知る。


「え、どういうことや?」


「嘘、まさか」


そして三人が目にしたのは。


「えへ、私の勝ちだね」


緋色から『怪盗』で交換した『人狼』のカードを手に取り、一人勝ちを果たした翠の姿であった。


翠にギャップ萌え要素を入れてみたかった、、

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