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ちょっと中だるみしてますね


 叱られた、リリーに。

 なぜ? ちゃんとイカっぽいものを確保したのにな。

 迷惑かけるな、だって。うーん、迷惑ってかけてたっけ?

 ちゃんと網に捕まえた魚はイカ数匹を除いて全部リリースしたから、漁業量には影響がないはずだ。

 あれかな、途中で一隻船が落ちそうになってた事かな。

 確かにあれは船員からすれば恐怖だろう。船ってそうそう簡単に止まったり曲がったりできないし。

 これは反省せねばなるまい。

 今度からはちゃんと海に潜って捕まえよう。濡れるのが嫌なら水着でも作ればいいのだ。


 さて、起こってしまった事はもうどうしようもない。過去の事だ。

 それよりも未来だ。

 今日は実はこっそり温泉を掘りに行こうかと思っている。


 シャーロットが何やら温泉の熱を利用して肥料を作ろうとしているようだけど、彼女も、そして温泉掘りをするだろうリリーも、どちらも温泉という概念が薄い国の出身だ。

 つまりは、せっかく温泉があるのにお風呂にせず、単に肥料作りにしか使わない、という事になる。

 それではいけない。

 もしかするとケーイチが騒ぐかも知れないけど、肥料作りが最優先の施設になるだろう。


 だからこそ、俺専用の温泉をどこかにひっそり建ててしまおう、そう目論んでいる。

 別にスパのような大施設を作る気はない。

 岩などで湯船を作って、あとは周りを壁で囲えば終わり。とてもシンプル。

 その程度で良いのだ。

 イメージは萎びた山奥にありそうな温泉で、しかも周りは雪だらけ。雪の中で温泉に浸かるのも乙なものかと。

 温泉の温度を調整するスペースは必要だろうけど、そこは水の大精霊にお願いすれば良いだけだ。

 毎日利用する訳じゃないし、行った時に入れる温度に調整すれば済むからね。


 さて、温泉を堀に行く前にするべきことがあるのだが、そちらは既に終わっている。

 昨日食事から戻ってきたあと、三人には国に一旦戻って報告してくるから数日帰らないよ、と伝えてあるのだ。

 もちろん本当に報告はいるよ?

 だが温泉を掘り当ててからでも遅くはない。

 そして温泉が完成した暁には母親を連れてきて親孝行してあげるのだ、素晴らしい。

 前回報告しに国へ戻ったとき母親と会ったんだけど、最近年かしら、と腰の周りを叩いてたからね。

 見た目は二十才くらいの姿のくせに。実年齢だってまだエルフの寿命の半分も……おっと。

 母親以外にも世話になった人を呼ぶのも良い。世話になった人というか、精霊というか。

 そうだ、精霊たちにも温泉の素晴らしさを教えて上げよう、いや教えるべきだ。


 では行きますか。

 ミーパル神聖王国の首都シュトックを出発だ。


♪ ♪ ♪ 


 シュトックを出て天使の恩恵の外まで出た。

 雪が降ってきたしそろそろ走るかな。

 空飛ぶのも良いんだけれど、雪があると視界が悪くなるんだよね。

 地上走ってても視界はそれほど良くはないけど、地面がある分何となく安心感があるのだ。

 ここのところ転移ばかりで運動してなかったから、ちょっと本気出して走るか。


 ドンッと地面を蹴ると雪が舞う。

 黒いローブが風に煽られるが気にしない。どうせ誰も見てないのだ。

 そのままどんどんと突き進んだけれど、向かい風のためかちょっと息苦しい。

 謎バリアーを張って風を防いだ。


 そうしてシュトックを出て三十分ほどしただろうか、何やら空から威圧を感じた。

 何だろう、と空を見上げた時だ。突然冷たい息吹が浴びせられた。

 周囲が一斉に凍り付くほどの息吹だ

 着ているローブが凍り付きそうになり、ぱきぱきと音を立て始める。

 一応これは国支給の宮廷魔導師用ローブだ、あらゆる耐魔術などが組み込まれている。それでも凍り付き始めているということは、かなり強力なものなのだろう。

 ただ顔周辺は無事だ、謎バリアーを張っておいたからだろう。

 つまり謎バリアーならこれを防げる。

 全身にバリアーを張り巡らせると、途端に寒さが緩和した。


 さて、どんな奴がこれをやったのかな。


 改めて空を見上げると、そこには巨大な生物が飛んでいた。コウモリのような羽に鋭い牙、空だから体長は分からないけど、多分五~六メートルくらいはあるだろう。

 ……ドラゴン? 

 でも龍族って旧種族だし精霊王の話では、基本的に龍の谷と呼ばれる場所に引きこもっているから姿を現さない、と聞いている。

 それに迷宮の六十一階層のエリアボス、龍族がモチーフになったやつに比べれば格段に落ちる。

 となるとドラゴンじゃないのかな。変なトゲのついた尻尾があるから、ワイバーン?

 初めて見たよワイバーン。


 氷の息吹が効かなかったのに腹を立てたのか、ぐるる、と唸っている。

 ワイバーンって火を吐くんだと思ってたんだけど、冷たい息を吐くタイプもいるんだな。命名するならフロストワイバーンって感じだね。

 さて、どうしようかな。

 迷宮のエリアボスに比べれば格段に格下だけど、それでもこの人里に近いこの周囲一帯の中ではトップクラス、多分ボスだろう。

 下手に狩ると生態系が崩れてしまう可能性がある。精霊王からも、無闇矢鱈に狩るな、と厳命されているしな。

 また数ヶ月シュトックで暮らしているけど、こいつの話は聞いた事が無い。

 ということは、人里を襲ってはいないということだ。

 見逃すか。

 でもそう簡単に逃がしてくれそうにないな。

 俺の走る速度はかなり速いと自負している。でも相手は空を飛ぶし、おそらくこの吹雪の中でも見えていると思われる。

 じゃあ足止めしてから逃げるとするか。


 さっと魔力を籠め腕を振る。途端に氷の大精霊が顕現した。

 氷には氷だ。火の大精霊だとミスって狩っちゃうかもしれないし、同属性ならその可能性も低いだろう。


「五分ほどあのワイバーンと遊んでくれない? 殺さないように」

――こくこく。


 ワイバーンを氷の大精霊に任せて、先へと進む。

 後ろのほうで争っている音が聞こえていたが、数秒もすると聞こえなくなった。



 途中ワイバーンと遭遇するイベントも発生したが、一時間後に無事火山地帯へとやってきた。

 さらっと周囲を確認したけど、活火山ではなさそうだ。煙も吐いてないし。

 ということは、この辺を適当に掘れば温泉にぶち当たるということだ。

 どの辺がいいかな。


 ……いいや、まずは適当に掘ろう。


 土の大精霊さん、お願いします。

 完全に人任せな俺。

 あの辺りが平べったくなっているから、そこ適当に千メートルほど掘って下さい。


 土の大精霊の姿がドリルのようになり、回転しながら潜っていった。

 うわ、格好いい。ドリルってロマンだよな。

 そうして暫く待っていると、土の大精霊が戻ってきた。

 どうやらハズレだったらしい。

 ま、一発で当たりを引くなんてそうそうないだろう。


 次だ次。



 そうして一時間ほど経過した。

 全然当たらない。

 どういうことだ? この辺結構穴が空いちゃったじゃないか、俺のせいだけど。

 もう少し深く掘らないと水源に当たらないのかな。

 この辺を掘ってそれでも当たらなければ、もっと深くまで掘る事にしよう。


 よしここをお願いします。


 土の大精霊は黙々と穴を掘っていく。

 ここまでやってもらったし、温泉掘り当てたら一番風呂を提供しなきゃな。


 と、その時だ。

 地面が、ゴゴゴゴと揺れた。

 おっ? 当たり?


 慌てたように穴から土の大精霊が飛び出てきた。

 そして俺の腕を掴んできて引っ張られた。

 ん? どうしたんだろうか。

 そう思った時、穴から真っ赤なマグマが吹き出してきた。

 ひっ!?

 咄嗟に謎バリアーを張りつつ距離を取る。一歩で数十メートル後退し、更にもう数歩下がった。

 温泉引くつもりが、マグマ引いた。

 そうだよな、火山なんだしマグマ溜まりがあってもおかしくないよな。


 ってか、のんきに見ている場合じゃない。


 まずは空に上がってマグマが流れないようせき止めて……。

 ダメだ、普通に地面を盛り上がらせるだけじゃ止められない。

 仕方無い、一旦謎バリアで防ぐか。


 バリアでせき止めたけど、問題の根本解決にはなっていない。

 元から絶たないとダメだよな。さっきの穴、埋めればいいか。


 土の大精霊……え? 無理?

 吹き出しているマグマをせき止めるには力が足りないのか。

 仕方無い、俺がやるか。


 すっと精霊王の血の力を引き出す。

 その瞬間俺の姿がぼんやりと変化し、他の大精霊と同じような顔かたちのないのっぺりとした金色の光を持つものへと変わった。

 ずん、と周囲の空気が揺れる。

 そのまま慎重にマグマが出ている穴へ両手を翳し、きゅっと締めるように閉じる。

 するとどうだろう、実際の穴もきゅっと閉じられた。


 ふー、これってちょっと力が強すぎるんだよな。

 ちょっとでもミスると、簡単に地面が壊れてしまう。

 元々精霊って神に変わって世界を構築した種族だからか、地形変化などは得意分野なのだ。

 さすがに今の土の大精霊のように召喚された形だとその力も不十分だけど、本体が出張ってくればこれくらいはわけない。

 ただその力は、取りあえず山を作る、谷を作ると非常におおざっぱであり、こんな小さな穴を閉じるには、神経を使いながら慎重にやらないと、壊してしまうのだ。


 さて、せっかくこの姿になったことだし、ついでに温泉の位置でも調べるか。


 目に力を入れると大地が透けて見えた。

 えっと、あそこはマグマ、あそこもマグマ、ここもマグマ……ってマグマ多くね?

 これ大丈夫か?


 うーん、火山に近すぎるのかな。ちょっと離れたところなら……あ、みっけ。

 地下水量も結構多そうだし、あそこにしよう。

 そして先ほど見つけた場所を掘るように土の大精霊へお願いをした。


 どーん、という音と共に吹き出る温泉。

 やった……やっと出たよ……。

 苦節半日、長かった……全然長くないか。


 さて、まずは温泉の湧き出る量を調整しよう。あの量をずっと出してたらそのうち枯れてしまう。

 だから蛇口みたいなのを作って、普段はちょろちょろと出しておくのだ。

 でもそれだけの水圧を押さえられる蛇口となると、相当頑丈なものがいると思う。


 こういった物を造るならドワーフだ。

 どうせこの後、サイサランドに帰るんだし、ついでに作って貰うよう依頼しよう。


 その前に、取りあえず栓をきゅっとして、と。

 あとマーキングもしておこう。これでいつでもここに跳べる。

 あ、お土産に溶岩でも持って帰るか。


 そして元の姿に戻った俺は、一旦自国へと跳んだ。



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