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 召喚者たちがロヴィーナの手によって迷宮へと連れ去られてから三日が経った。

 一日目は全員体調不良で顔を出さなかった。

 二日目は何故か全員揃って街中の見学に行きたいと周囲に訴えたらしく、これまた全員顔を出さなかった。

 そして三日目。


「……あれ、今日も来ていない」


 がらんどうの部屋を見て、今日もロヴィーナは愕然とした。

 さすがに三日続けて誰も居ないのは納得できない。一瞬休日かとも思ったがこの世界に休日は無い事に気がつく。

 今日もまた他の用事を入れているのか、それとも体調不良なのか。いやこの街は回復魔術の総本山だ、体調不良というのがまず怪しい。

 そうなるとサボりとしか思いつかない。


「でも学生だったケーイチやリリーはともかく、元社会人で真面目そうなシャーロットも来ていないのはおかしいよな」


 学生だから不真面目という訳ではなく、ロヴィーナの前世はたまに学校を自主休校していたからだ。

 自身がそうだったから他人もそうだろう、と思っているだけである。


「ま、いいか。俺は精霊魔術師、つまり召喚のプロと言っても過言では無い。来なければ呼べば良いのだ」


 ロヴィーナがさっと腕を一振りすると、途端に周囲に大魔力が三カ所集まった。

 そしてそれぞれが人型へと形取っていく。

 一つは赤い火、一つは青の水、そして最後が黄の土だ。つまり一振りで呪文詠唱もなしに大精霊三体を召喚したのだ。


「お願い、三人を連れてきて」


 ロヴィーナの声に各々がコクコクと頷くと、一瞬で姿が消えた。

 彼女が精霊王の血を継いで精霊界へ訓練しにいってた間、大精霊たちとは兄弟姉妹のような関係になっていた。

 元々彼女は精霊たちに好かれてはいたもののそこはあくまで親友という関係だった。しかし精霊王の血を継いでからは家族の仲になったのだ。

 大精霊も精霊王が作った存在であるため、確かに家族ではある。

 年齢的にはロヴィーナが一番末っ子なのだが、未だに昔の癖が抜けきれないのか、召喚という形を取ってこうしてお願いしているし、大精霊側もそのような感じで受け取っていたりする。

 普通人を呼びに行くのなら、その辺にいる侍従や侍女に頼めば良いのに、何故か大精霊を召喚している時点でおかしな話ではあるが。

 未だに大した事でもないのに、大精霊を召喚してお願いする癖は抜けていないようだ。


 そして呼ばれる三人は大精霊など見たこともない存在だ。


「な、なななななんだこりゃーー! うわ触るなよ! あっつ、あっつ!!」

「ひっ、ひとさらい? な、なにこの動く水、きもちわるい!」

「化け物の次は土のお化け……もうどうでもいいわ……」


♪ ♪ ♪


「みなさん、サボりはよろしくありませんよ」


 三人が大精霊に拉致られ教室に割り当てられた部屋に連れてこられた。

 そして問答無料でソファーに座らされると、開口一番ロヴィーナは言い放った。


「サボりじゃねぇよ……どこかの誰かさんのおかげで、精神的苦痛を受けたんだよ」


 ケーイチが答えるとそれに同意するように頷く二人。

 だがロヴィーナには心当たりがなかった。もしかすると先日連れて行った迷宮が原因かと思ったが、そもそも召喚者たちは恩恵を受けている。

 言わばチートだ。しかも精霊王から大精霊に匹敵する、とまで言われているのだ。

 だからこそあの程度では小説に良くあるちょっぴり厳しめの場所程度だろうと思っていた。


「……? 何かしましたっけ?」

「変な場所へ連れってスプラッターなもの見せただろ!?」

「ああ、先日の件でしたか」

「そうだよっ! 本気でもうダメかと思ったよ!!」


 ケーイチは剣聖という恩恵を授かっている。その腕は使った事のないどころか、持ったことさえ無いような剣で、この街にいる衛兵相手に一度も敗北しなかった。

 それだけに自信はあったが、さすがに成り立ての剣聖では、迷宮の七十階層にいるような魔物相手には分が悪かったようだ。見た瞬間、絶望を感じてしまった。

 またリリーとシャーロットは未だ一度も自動翻訳以外の恩恵を使ったことがないのだ。


「リリーさんやシャーロットさんも同じですか?」

「もちろんよ!」

「ええ……」


 シャーロットはもう全てを諦めたかのような顔だったが、リリーは憤慨していた。

 ロヴィーナはそんな彼女らを見て、内心ため息をつく。


——なんだこの程度か。なら、まずは鍛えるべきか?


 旧種族たちがロヴィーナに対してやって貰いたい事は、この世界になんらか刺激を与えることだ。

 知識チートであれば、手足となって動けるような人を用意すればいいが、これから先、何をするのかは分からない。

 例えばこれをやりたいから、どこかの場所へいく、と言っても大陸は広い。その間危険は一切ない訳では無いし、移動だけでも何ヶ月かかかる場合もある。

 三人別れて行動されれば、ロヴィーナが全員を守ることもできない。近い距離ならば大精霊を付けてあげてもいいけど、何ヶ月もは無理だ。

 大精霊はいるだけで少しずつ魔力が減っていくので、ずっと召喚するには定期的に魔力をあげなければいけない。でも魔力を持っているのは大魔導の恩恵があるリリーだけだ。

 自衛できるレベルまでは鍛えておいた方が安全だ。


——でもなぁ、場所が問題だよな。それに戦闘技術もだ。魔術なら教えられるけど、剣や弓なんて俺も知らない。誰かベテランを付けて貰わないと。ああ、その前に俺の本当の立ち位置をまずは伝えるか。


「えっと、ではまずみなさんに知ってもらいたいことがあります。まず私は地球で生まれた記憶を持っています。そのために今回、みなさんの教育係として天使たちから命じられました」

「……え?」

「ど、どういうこと?」

「詳しく言うつもりはありません。ただ皆さんと同じ地球の知識はある、という事だけ知っておいてください。それで今後なんですが、みなさんが召喚された理由にも当てはまりますが……」


 ロヴィーナは召喚理由を説明した。

 具体的には、刺激を与えるために別世界から呼ばれた、という点と、丸投げされたので全員で頑張ろう、という点だ。


「ひっど! そんな理由で呼ばれたの!?」


 これを聞いて憤慨したのはリリーだけだった。

 ケーイチは何やら目を輝かせているし、シャーロットは何をやってもいい、という所に興味を持っている。


「ええ、全く酷い話です。丸投げされる方の身にもなって下さい。そして肝心なところは、元の世界にはもう戻れない、というところです」

「……本当に?」

「はい、その通りです。正確には、次に召喚者が召喚されるであろうタイミングなら、戻れるチャンスはあります。最も千年後ですが……」

「無茶……言わないでよ」

「こちらは心の整理が付くかどうかはともかく、納得してください」


 この言葉にリリーは泣き出してしまった。

 トドメを刺されたのだ。

 代わりに質問してきたのはケーイチ。


「何をやっても良いってマジ?」

「マジです。戦争を吹っかけても良いですし、俺TUEEEやっても構いません。ただし何もやらないのはダメですし、全人類を滅亡させたり、大陸を吹き飛ばすのは却下です」

「……そんなことやんねーよ」


 ケーイチは既にロヴィーナを諦めていた。

 ぽっきり心が折られたからだ。


——最初に連れて行かれたあの場所はやばかった。更にあんな化け物どもを一蹴していたこの子はもっとやばい。でもハーフエルフがいるならエルフだっているはずだ。そっちを狙おう。


 実に変わり身の早い男だ。

 黙ったケーイチの次はシャーロットだ。


「この国のある程度の地位って貰えるかしら?」

「それは教皇様にお尋ね下さい。召喚者ですし一定の地位なら貰えると思いますよ」


 食糧改善はシャーロットのやりたい中の筆頭だ。だがでかい仕事をやるには、それなりの地位が必要である。

 その言葉に燃えるシャーロット。

 

「では早急にやっていただきたい事があります。各自自衛できる程度には強くなって貰います」

「もちろんだ!」


 即効返事をしたのはケーイチ。

 だが他の二人はしかめ面をする。

 強くなると言っても多少鍛えたところで女性だと限界があるだろう、と思ったからだ。


「この世界は地球と比べて相当に危険です。そうですね、例えるなら空腹のライオンなど猛獣が襲ってくるような場所をイメージして頂ければ良いかと。そんな場所が街を出ればあちこちにあります。最低限の自衛は必要ですよ」

「護衛とかいないの?」

「いますけど、せっかく天使があなたたちに授けた恩恵があるんですから、使いこなすようになれば、護衛などよりも余程強くなりますよ。それに護衛を雇えばその分お金もかかりますし」

「お金は大切よね……」

「はい、大切です。ただ強くなると言っても私が教えられるのは魔術くらいです。なのでケーイチさんとシャーロットさんには、それぞれ戦い方を教えてくれる人を付けて貰えるように言っておきますね」

「でもさ、俺ってもうここの連中より強いんだけど」

「ほぅ、そうですか。じゃあケーイチさんには特別に先日行った迷」

「いやなんでもない! がんばりますっ!!」

「身体能力向上一つとっても、基礎能力が十の人と二十の人では二倍になったら差は大きくなりますよね。恩恵を使いこなすには、まず基礎を覚えた方が良いかと。それなら衛兵だろうが兵士だろうが、素人よりは強いですし問題はないでしょう」


 自分だけこの子から教えて貰うのか、と大きくため息を付くリリー。

 友達候補だと思ってたけど、先日の迷宮での破天荒さに、お近づきにはなりたくない人へと変化してしまったのだ。

 しかもどうやら他の人たちから聞いた話によると、本当にこの子は見た目通りではないらしい。

 年上なのにこの破天荒、もっと大人になろうよ、と言いたいリリーだった。

 しかしながらここでくじけるようでは、誰からも好かれるタイプとは言わない。


——よし、私がこの子の性格を矯正してあげなきゃ。


 そう心に強く誓うリリーだった。

 その思いの実が成るのかはまだ分からない。







「ところで教育係って?」




三人称だと書くのに時間がかかって遅くなりました

……次回一人称にしてみます

コロコロ変わって申し訳ない




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