時すでに遅く、時早く過ぎる
「今、なんて言った?」
「ん?もうすぐ君は死ぬから食べたいもの考えておいてって言ったよ?あ、でも向こうの世界にはあるけどここには無いって食べ物は沢山あるからそこは...」
「なんで、死ぬの...?」
震えた声で言った。
捕まった時から覚悟はしていたが、正面から言われるとそんなうすっぺらい覚悟も忘れて恐怖する。
だが、真一はまだ冷静だった。
...こいつらから逃げるの、多分無理だよな。
逃げても、痛い目に合う...逃げなかったら死ぬのか。
じゃあ、逃げるのは確定かな、どうやって逃げよう。
どうでもいいが、真一は気分屋だ。
謎にノリがいい時もあれば、ノリが悪い時もあり、謎に思考がクリアになる時となってない時がある。それを制御できる時がほとんどだが、たまに制御できない日もある。
それは気分屋なのか?と言われれば分からないが、真一は気分屋と自称している。
その気分屋要素も今も適用している。
死ぬと告げられてから恐怖し、すぐに逃げ方を考える。
もしかしたら気分によってそのまま恐怖のままだったかもしれないが...まぁそれはいいだろう。
閑話休題
真一は頭がいい、だから逃げる案は何個かすぐに思いついた、が、それらは『こいつらから逃げれない』という大きな壁があり、どうやっても逃げ切れる気がしなかった。
結果論だが、襲われてるのを見てすぐ反対方向に逃げれば良かったが...真一の精神状況的にそれは無理だっただろう。
北に向かって進んだのが悪かったと思うしかない。
「ははは、まぁそんな恐れるような...いや、もうそんな目はしてないね。でもその目は、めんどくさいからいやだなぁ」
少年がそういうと、真一を睨み、考え、「まぁいいや」と一言言ってそれ以上話さなかった。
真一は少年から目を背いて、小さく溜息をついた。
異世界だとか、死ぬだとか、突発すぎて未だ信じきれない。
そんなことより、どこに行くにも着いてきてくれた、着いていった幼馴染に会いたい。
...どうせ、今はそうやっても逃げれない、だから、後で逃げようか。
真一は思考を切るように、また眠った。
寝て起きたらいつもの布団の上にいると思ったから。
その後は、途中から馬車での移動となった。
真一は馬車に乗ってる時に目覚めたが、その時には手足を縄で縛られていた。
馬車での移動はかなり揺れ、乗り物酔いする灯花はこれに乗ったら酷だろうなーと思いながら座っていた。
真一は一度、トイレに行きたいと言いその時に逃げる隙を疑ったが、やはりと言うべきか見張りがついてきて、逃げれなかった。
ここらへんから、食べたい飯を考えるようになってきた。
暇だから一人でしりとりをしていた。
金髪の少女はずっと隣で眠っていた。
いや、途中で一度起きたが、すぐに寝た。
よほど疲れたのかな、と思っていたが、俺の手の縄を解こうとしていたので寝たふりだった。
だが、縄がかなり固く結ばれていたので途中で解くのを諦めた。
この子も食べたい飯を考えてるのかな、なんとなくそう思った。
暇だから脳内格闘ゲームしていた。
ちなみに、この世界最初の飯は盗賊の人がどっかで狩ってきた肉だった。
何の肉かは分かんなかったが、興味なかったし、普通に美味しかったのであまり気にかけなかった。
そういえば、俺が死ぬ理由くらい知っておきたいな。
でも、なんか、そうでもいいや。
あーあ、事故って盗賊だけ死んで俺達だけ逃げれる状況になんねーかな。
そんな縋る思いも虚しく、気づいたら二日経っていた。