ここはどこ
ツンツン、ツンツン。
誰かに頭をつつかれる。
一体なんなんだ、こんなあったかいんだ、もう少し寝かせておくれ。
ツンツン、ツンツン。
あーもう、つつくにしてももう少し優しくしてほしい。一体何でつついてるんだ。ペンか?それならやめてくれ、先が尖ってるものは痛いんだ。
俺はつつく何かを止めるようと、手を動かした。
若干湿っているのか少しひんやりとしていて、硬い何かに当たる。
これは、石か?ってことは布団じゃない...布団じゃない!?
意識が一気に覚醒する、ガバッと音を立てながら慌てて起きる。
普段起きるときは必ず時計は見ていた。だが、ここには時計がない。というか、そもそも部屋じゃない。
周りには無数の木が生えており、鳥たちが木を縫うように飛びまわる。
握りこぶしを作ると爪の中に土が入る。
「ここは、どこだ?どうしてこんな所にいる?」
たしか自分は...学校だったはずだ。いや、終わって帰って、雨だったから走って、それで、家には?
最後の記憶は、住宅地。でも、そこで何かあったか?
拉致とか?だったら部屋とかで監禁されているはず...。なんで、よりにもよって森なんだ?
「駄目だ、わからん」
真一は思考停止した。
そういえば、スマホはあるのだろうか、と思い自分の胸ポケットを探る。
拉致なら取られてもおかしくないなと思ったが、普通にあった。
これでみんなと連絡を取れれば、最低でも今の場所さえ分かれば、なんて思ったが現実は悲しく、Wi-Fiは全く繋がっていなかった。繋がらないと分かっても一応電話を掛けてみたが、やはり繋がらなかった。
とりあえず、今は緊急事態だ。念のため電池はなるべく消耗しないようにしよう。
さてと...万策尽きたな。
と言っても、何もしないほど真一は馬鹿ではない。
真一は長くて軽い木の棒を持ち、地面に線を引きながら北方向に歩いた。
スマホは確かにWi-Fiが繋がらないため救援も呼べないが、コンパスや時計などの便利機能は問題なく使えるためスマホが邪魔になることはない。電子書籍などもあるから暇つぶしも出来る。やっぱスマホってWi-Fi無くても神だわ。
しかし、何か見つかる訳でもなく、ただただ体力と時間を浪費した。
そろそろ日が沈みそうだ。空を見ると夕焼け空が夜に喰われそうになっている。
森を抜けれる気配はない。そもそも出口に近づいてるのかも分からない。
身体が悲鳴を上げる。
俺はここで死ぬのかな。心の中でそう思った。
自分でも分かる、心身共に限界だ。
真一は近くにあった石に背を預け、スマホを開き時間を確認する。
十八時十四分、歩き始めたのが十六時だったから二時間歩いたことになる。
自分の歩くスピードは三十分で約二キロ、つまり八キロ近く歩いたことになる。
「どんだけ、広いんだよこの森」
真一は呆れながらそう言った。
もう、疲れた。寝てしまおうか。
さっきまで寝ていたけど、こりゃ寝ないとマジで死ぬ。
真一の判断は正しい。なにせ、どこか分からない森をただひたすら歩き続けてきたのだから。拉致なのか迷子なのかドッキリなのか考えはしたが、やはり分からなかった。
こんな状態で歩き続けていたら、一日足らずで死んでいただろう。
真一はそのまま石にもたれかかったまま、意識を落とした。