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NEWGAME(二)

「うーわっ雨降っとるじゃん」

帰る直前に窓を見たクラスメイトの女子が言った。

傘を持ってない俺は、幼馴染たちに目をやった。

「ただの夕立ならいいけどな。どうする?傘持ってない人は走って帰る?」

「俺はどっちでもいいけど?女子三人は?」

「異議なし」

「アタシは折り畳み傘持っているけど」

「私はさっき後輩から受け取ったけど」

そういや、さっき後輩らしき子が来ていたな...。

五人中二人が傘を持ってる。

「相合傘なら一人余るか。しゃーない、神楽は灯花と、お前とテレサで行っとけ。俺は先に走って帰るから」

「おいおい、お前はそれでいいのか?」

「だれか雨に打たれて風邪ひくよりも、俺だけ風邪ひいた方がマシだろ。それに、明日は体育祭の予行練習だ。風邪を引くならこのタイミングだ」

「せっこ」

「んなこと言うな、まぁその代わりにケーキ買ってきてくれ」

「ヤッタ!アタシケーキ大好き!光音!早く行こ!」

「ってことで、俺は家でスマブラしてっから。じゃあな」

真一はその場から走った。

「それじゃあ、私たちはゆっくり行きましょうか。灯花、入って」

「ん、濡れなくてらっきー」

神楽と灯花は同じ傘に入り仲良く帰った。

「お、おい!テレサは引っ張んなし真一は勝手に行くし神楽たちも...はぁ、行くぞテレサ。ケーキ屋」

光音は思考停止した。

「うん!アタシ、モンブランがいい!」

「そうかいな、俺はチーズケーキかな。神楽はチョコで、真一と灯花は...」

光音とテレサは二人で仲良く傘に入り、家とは反対方向にあるケーキ屋に足を運んだ。



出来るだけ早く、早く家に付くように足を動かす。一粒一粒がシャツに染み込み、体温が低下していくのが感じた。無人島生活している人たちもこんなこと考えてんのかなと思ったが、どうでもいいと思い別のことを考えた。

寒い。これは風邪が確定だな。あんなこと言ったが、体育祭に出るよりも風邪引く方が辛いんだが...まぁ、帰ったらシャワー浴びればいいか。

しかし、こんなに早く家に帰ろうと思うと意外と家って遠く感じる。普段は話しながら歩いているとすぐ着くが、一人で走る方が遅く感じるとか、ぼっちって辛いんだなって思う。

だが、こんなに遠いか?自分の体内時計は割と狂っているので今が何分経ったかは当てにならないが、十分近く経っているはずだぞ?いつもなら家についてスマブラを起動している。

俺の足が止まる。雨に打たれるのを気にせず辺りを見渡す。

ここはいつも通る住宅地、雨のせいか俺以外の人はおろか、車は一つも走ってないし、いつも吠えてる犬の鳴き声も聞こえない。

思わず固唾を飲む。雨が降る音が異常に大きく聞こえる。こういうの、本なら「家の窓から人間とは思えないような形をした化け物がこちらを見ている」的なのがあるが、ありがたいことにそういうのは無いらしい。安堵の溜息。よかった、俺はフィクションの世界に巻き込まれていなかったか。

そう思いながら、歩いた。いや、倒れた。こけたのではない、倒れた。

力が入らない、下がり続ける体温、たどり着かない家。

何が起きてる、何が起きてる、分からない、助けて、一緒に帰れば、何が、誰か...。

困惑と恐怖が同時に来るが、何故か、眠気が襲った。

寝たら死ぬぞ、なんてテンプレな言葉をマジで思う日が来るとは思わなかった。

...なんか、もう、いいや。寝てしまおう。きっと夢だ。夢じゃなくても、これには、抗えない。

生への諦め。墜ちる意識。寝る瞬間、一瞬体が浮いた気がするが、真一は特に気にしなかった。

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