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 次の日も次の日も王妃様はミラに聞きました。


「鏡よ鏡。世界で一番美しいのは誰?」


「それはあなた様です。王妃様」


ーーピシリ


 その度にミラは嘘をつきます。そうしてその度に魔法の鏡にヒビが入っていきました。

 魔法の鏡にヒビが入ったことなどなかったのですが、ミラにはこの原因がなんなのかわかっていました。

 初めてミラが嘘をついた日にヒビが一つ入りました。そうしたその日々は嘘をつく度に増えていきます。これで原因がわからないほどミラは馬鹿ではありません。

 嘘をつく度にヒビが入り、魔法の鏡が壊れていきます。

 ヒビに王妃様は気付きましたが、適当なことを言ってミラは誤魔化しました。その時にもまたヒビが増えていきます。

 私はいったい何をやっているのでしょうか?そう何度もミラは思いました。嘘をつくたびに体が壊れていく。その度に恐怖が襲います。しかし、嘘を止めることはできません。

 ミラが嘘を止めれば白雪は死んでしまいます。それが、何故か知りませんがミラは嫌でした。難しい気持ちなどミラにはわかりません。ただ、その嫌な気持ちは恐怖よりも強いものでした。

 日に日にミラの体が壊れていきました。

 あともうそんなに多くの嘘はつけない状況までになりました。

 いつ壊れるのか。もしかしたら明日かもしれない。そんな恐怖の中で、ミラはふと思いました。


「白雪に、会いたいです」


 もう何年も会っていません。もう何年もその声を聞いていません。あんなに煩わしかったのに、今では、そう、ひどく恋しいとミラは思いました。


「初めて、だったのです……」


 ミラにとって初めてでした。あんなふうに友達のように接してもらえたのは。

 ミラにとって初めてでした。名前を与えられたのは。

 ミラにとって初めてでした。楽しいと思ったのは。

 ミラにとって初めてでした。誰かの訪れを待ったのは。

 ミラにとって初めてでした。寂しいと思ったのは。

 ミラにとって嵐のような少女でした。彼女との時間は鏡生の中でもほんの一時。しかし、鏡生の中で最も貴重で大切な時間でした。


「また明日と言ったのに」


 あれから何日も日は経っています。白雪は嘘つきです。でも、鏡はもっと嘘つきでした。 

 もう来なくても良いなんて嘘でした。ミラはまた来てほしかったです。

 話したくないなんて嘘でした。ミラは彼女の声も話も大好きでした。

 ミラは魔法の鏡なのに嘘つきでした。だから、こんな目に合っているのかもしれないとミラは思いました。


「謝ります。何でもします。だから、だから、どうか、お願いします。お願いです。もう一度、私が壊れる前に……」


 魔法の鏡は願いました。強く強く願いました。


「白雪に会わせてください」

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