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才能に関する愚痴

作者: 却下

私と同じ運動系のサークルに入っている、サークル内でも活躍している友人は言いました。

「俺の実力を、才能という単語で片づけてほしくない。努力の結果だから。」

同じサークルの別の優秀な友人も、同じようなことを言っていました。恐らく、「出来る人たち」は、「才能があって良いなぁ」等と羨ましがられることが多く、それにうんざりしているのでしょう。


かかる状況でこのようなことを言うのは友人として失格なのかもしれません。ですが敢えて言いましょう。

「才能があるからこそ出来るようになっているんだ。」と。

才能という言葉がお嫌いならば、「幼少期からの得体の知れない積み重ねがあるから、今出来るんだ。」と言い換えても差支えありませんが、少なくとも今サークルでやっている競技にかけてきた努力値のお陰だけではありません。


私は運動が苦手です。何故かは知りませんが、小学生の頃からずっと、運動と名の付く物(物理学での「運動」は又た話は別ですけれど)にはとことん苦しめられてきました。かけっこ、水泳、鉄棒……殆ど悪い思い出しかありません。

そんなわけで、同じことをしていても、一年behindの後輩にさえ、易々と実力を抜かれてしまうのです。二倍の時間をかけてきた(当時、後輩は二年生なりたて、私は三年生なりたてでしたので)のですから、どう計算しても努力値で負けている筈はありません。

さらに言えば、或る高等テクニックを要する動きを、後輩はものの30分程で出来るようになっていましたが、私は一年以上練習しても未だに完成する気配さえ見えません。


どうでしょう、我が友人よ。

かかる悲惨な状況を見ても尚お、「努力が全て」と言い張りますか。「自分の才能は関係ない、お前と同じくらいだ」等と云うことをぬかしますか。良いですか、私は怒っているのです。



……ほうほう。「出来るまで練習すれば良いじゃないか。俺はそうした。」ですか。

確かに、その説得には一理あります。ですが、致命的な欠陥が在ることを、君は見逃しています。


周りの人々が易々とマスターしていく中で、努力値でカバーしようと一生懸命練習を繰り返す。このことがどれだけ苦痛であるか、君は知らないのでしょうね。

マスターする技が限られているならば話は別です。いつかは差は埋まりますから。でも技はたくさんあって、私が一つ目の技にかまけて足踏みしているところで、君は第二、第三の技に進んでいく。広がりゆく差を完全に埋めるくらいの練習をしようとすると、私は人間の宿命、即ち一日24時間を超越する必要が出てきます。それくらい、私の身体の「欠陥」ぶりは激しいのです。

時間を圧縮することと、苦痛を物ともしない鋼の心。これらを前提とすれば、「出来るまで練習すれば良い」は成立しますけどね。


ですから、友人、君は自分の才能に感謝せねばならない。君の実力の陰の、そして最大の立役者たる「才能」を蔑ろにしてはいけない。



……そうそう。序でに言えば、サークルを引っ張ってゆくのは主将と副将、いわば「最も出来る人たち」ですが、私に言わせれば「その学年の中で最も才能がある人」です。才能があって、且つ適切な努力をしたために、サークルトップの地位にまで立つことができたのです。

それゆえに、彼らには出来ない人たちの気持ちが分かるわけはありません。「こうすれば自分は出来るようになった」という経験から抽出して、下級生にアドバイスを与えるわけですが、「出来るようになる」前提が欠けているというパターンは彼らには想像不可能なのです。

それ故「実力が足りていないという状況は良くないけれど」等と云う残酷極まりないことを平然とお抜かしになるのです。良いですか先輩。私は非常に怒っておりますよ。




何が言いたいのかと申しますと。

もう運動は懲り懲りです。早く辞めてしまいたいのです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 個人的に身体的障害が在るが故に、才能というだけで片付けて欲しくないと思う側です。才能だって磨いてなんぼですし。努力にしても惰性で繰り返したものを努力とは言えないはず。如何に質の高い内容の濃い…
[一言] わしは学生の頃、柔道をやっていました。 練習は苦しかったけど、持ち技の一本背負いが決まった時は爽快でしたね。 才能といえば、手塚治虫は死ぬまでに150000枚描いたらしい。ここまでくると…
2016/08/07 23:58 退会済み
管理
[一言] 「努力をする才能」という言葉を思い出しました。 まあ、怠けることなく本当に同じ努力をしていて、それでその人に並べないというのならその人に才能があるとしか言えませんね。 現実は残酷です……。
2016/08/07 23:52 退会済み
管理
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