⑥
俺達が通っている学校は小中高一貫教育の学校で敷地が各エリアに分かれている。その中央部に校舎があり、その校舎は一階から職員室、保健室など、おもに教員が使うスペース、二階から四階が下から一学年、二学年、三学年というクラス配置になっていて、それより上の階が音楽室とか、科学実験室とか、図書室といった特別教室になっている。
俺と昌は教室に入り自分の席に座った。教室はいつもと変わらず、数組の少人数のグループと徳井を取り巻く女子たちが話しに夢中になっている。
「徳井の奴、相変わらずモテまくりだな」
昌は徳井を目で追いながら前の席でこちらに向き直って話す。昌とは同じクラスになっただけでなく、こうして席も前になってすごく助かっている。新しく高校に入学して誰も知らない中に一人ぼっちってのもきついからなあ。
「あの見た目だししょうがないんじゃない?」
「そうだけどさあ、やっぱり男は中身じゃないか! そう思わないか徹!」
「えっと……、言いたくないけどそのセリフって、もてない男の死亡フラグだよね」
昌は俺の机の上に上半身を突っ伏して沈んだ。
「楽しいお話中申し訳ないんだけど!」
今日子が話しに割り込んできた。ちなみに今日子も同じクラスなんだけど、なぜだか小学校の頃からほとんど同じクラスだったので居て当たり前みたいな感じである。
「徹! あんた、何かやらかしたの? 生徒会副会長の白石先輩が睨んでたそうじゃないの?」
「ちょっ……それ誰から聞いたの? ……ってか、何もやってないし、睨まれてもないよ」
「あやしいなあ~、ねえ、真美ちゃん」
今日子は自分の後ろに隠れて顔だけひょっこり出している女の子に同意を求めた。その女の子は申し訳なさそうな顔をしながらこくりと頷いている。
彼女は長瀬真美、高校一年生、今日子の親友で彼女もまた俺達と同じクラスである。今日子もそんなに大きいわけでは無いのだけど、長瀬さんは今日子の後ろにすっぽり隠れてしまうほど小柄で色白の肌の顔に大きくてぱっちりした瞳、頬が少しぷにっとした感じでよく中等部の生徒と間違われるほどの童顔である。
「えーと、真美ちゃんなの? 見てたの?」
俺の言葉を聞いて真美ちゃんは慌てて今日子の後ろに隠れた。
「徹! 真美ちゃんを怒ったりしたらダメよ!」
「いや、怒ってないから、真美ちゃーん、怒ってないよー」
今日子の後ろに隠れている真美ちゃんに声を掛けると再び顔だけおそるおそる出してきた。なんか、いつも思うんだけど真美ちゃんって小動物みたいでかわいい感じだな。
「今日子も、真美ちゃんも、勘違いしているよ。白石先輩は俺を誰かと見間違えたんだよ。だよな昌」
俺は目の前にいる昌に同意を求める。
「うん。今のところ徹が白石先輩と接点があるっていう情報が入ってないから、見間違えの線が濃厚かな」
「わかった。木崎くんが言うんだったら信じるわ」
「えぇーっ、昌が言うと信じるの?」
「そうね。木崎くんの情報はかなり確かだからね」
昌のおかげで何とか今日子が納得したところで授業開始のベルが鳴り、今日子と真美ちゃんは自分の席に戻って行った。
やれやれ、今回は切り抜けれたけど、そう隠し通すことも不可能だろうな。どうしたものか。…………ってか今日、家に帰ったらやっぱりあの人がいるんだろうな。
気が重くなってきた。