⑤
校門を抜けて学校に入ろうとした時、俺たちに向けられた強い視線を感じ、目をやった俺は視線の先にいる女子生徒を見て固まった。
そこにいたのは、スレンダーな体にオリーブ色のブレザーとスカートにオレンジ色に黒のラインが入ったリボンを首に結んだ制服をスマートに着こなし、腰あたりまである艶やかで長い黒髪、登校中の男子たちがついつい目で追ってしまう整った顔。
こ、こいつは昨日俺の家に来たやつじゃないか! なんでここに……!?
固まっている俺の横にいる昌が声のトーンを上げて言った。
「マジかよー、白石先輩じゃないか! 今日はついているな!」
「昌、あいつが誰か知ってるのか?」
「当然だろ! 白石凛。高校二年生。成績は入学時からずっと学年一、去年のミス清明では一年生にして並み居る先輩達を抑えて過去最多得票でぶっちぎりのグランプリ獲得、おまけに生徒会副会長までやっている。今年入学した男子で白石先輩がいるからこの学園に決めたって言うやつがいるくらい有名人なんだぜ」
「へぇー、そうなんだ」
ああ、それで彼女が昨日俺の家に来たときどこかで見たような気がしたのか。
「ところでさ、徹」
「ん? 何だ?」
「白石先輩、お前をずっと見てないか?」
昌にそう言われて彼女を見てみると、確かに俺を見ていて昨日とは全く違う涼しげな微笑みを浮かべている。
やばい! 目が合ってしまった!
俺は彼女の微笑みを完全に無視して昌に言った。
「そんな事あるわけないだろう。誰かと見間違えたんじゃないか」
「そうだな。お前と白石先輩に接点なんてあるわけ無いからな」
「う、うん」
ごめん。昌! 昨日、接点ができたんだ。でも、そんなに有名な彼女と姉弟になるかもしれない事がばれると、俺の平穏な日常が崩れ去ってしまうんだ。昌にはいずれきちんと話をするから許してくれ。
俺は心の中で昌に謝りながら、その場を早く立ち去りたくて少し足を速めた。
「しっかし、白石先輩と付き合える男がいるって羨ましいかぎりだな」
昌は悔しそうな顔をして後ろを振り返って彼女の方をちらちら見ながら歩いている。
「誰かと付き合ってるのか?」
「ああ、信憑性は怪しいんだが生徒会長で三年の岡田先輩と付き合っているって言う情報が俺の所に入ってきている」
「へー、あの眉目秀麗で有名な?」
「そうだよ。お似合いのカップルだろ、俺なんかどう頑張っても岡田生徒会長からやさしくて頭が良くて女神みたいな白石先輩を奪ってお付き合い出来るなんて無いだろうし、なあ徹」
「え、えーと、やさしくて頭が良くて女神みたい……ね……あはははは……」
同意を求めてくる昌に昨日の彼女を知っている俺は笑いで返すしかなかった。
「とりあえず昌が白石先輩のことが好きなのはよく分かったから、早く教室にいこうぜ」