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俺の平穏な日常を壊すのは誰だ  作者: 土原和正
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凛先輩にスマホを返した親父は申し訳なさそうな顔をしながら言った。

「嫌な役割を演じさせてすまなかった」

「いえ、お父さまが徹なら気がつくはずだって言ってらしたし私自身も徹くんを信頼してましたから」

 凛先輩は晴れやかな笑顔で答えた。

「ちっ! 全ては親父の思惑通りってことか…………」

「えっ? 何がどうなってるんだ?」

 俺の背後にいる昌、今日子、真美ちゃん、徳井が目の前で起こった出来事についていけてない様子で困惑していた。

「全部、こいつが仕組んだんだよ」

 俺は苦虫を噛み潰した様な顔で説明を始めた。

「自分が客員講師になった段階で大まかな策は考えていたんだろ?」

「さすが我が息子! ただ俺が客員講師になったのは岡田くんのことだけではなくて、学園全体にはびこる問題を解決して欲しいという事で引き受けたのだよ」

「どういうことなの? 徹?」

 今日子が頭の上にいっぱいの ? マークを浮かばせた様子で聞いてきた。

「つまりは凛先輩を俺の家に入らせたのも、生徒会室で俺に"生徒会長岡田の不正を暴け"というパソコンの文字を見せたのも全てこいつの仕業だったってことさ」

 そう言った俺はふとある疑念が頭をよぎった。

「親父! まさか、香織さん(凛先輩のお母さん)との再婚のこともお芝居だって言うんじゃないだろうな!」

「さすがにそれは俺でも出来ないな。香織さんとはいっしょに暮らしているし、ラブラブな日々を送っているよ」

「言ってろ!」

 親父のニヤけた顔を横目にうんざりしながら俺は話を続けた。

「で、ここからが昌の活躍だけど、岡田生徒会長の不正を調べて、今回のミスコンに徳井の力を借りて今日子を送り込んで岡田生徒会長のもくろみを壊そうとした」

「でも、失敗した」

 昌は肩を落としてつぶやいた。

「いや、そうでもないぞ。木崎くんの策は失敗ではない。実際に岡田くんをある時点までは追い詰めていた」

 親父は昌に優しく諭している。

 親父の言うように昌の作戦は岡田生徒会長の賭けを成立しなくした上、付帯条件と言う言葉まで引っ張りだしたわけだからな。

「結果的に失敗に見えるがあの追い詰められた状況で逆転したという優越感が岡田くんの心の隙間を作ったと言えるだろう」

「でもぉ、どうしてあの場面で白石先輩は私たちを裏切った演技をしたんですぅ?」

 相変わらずこの場にそぐわないあま~い声で真美ちゃんが聞いてきた。

「ごめんね! 真美ちゃん!」

 凛先輩は慌てて真美ちゃんに駆け寄りギュッと抱きしめて答える。

「あのときは岡田生徒会長の心の隙間を広げたかったのと会長の隣で声をしっかりスマホに取りたかったから……本当にごめんね!」

 凛先輩の真美ちゃん好きも大概なものである。みんなは苦笑いしながら凛先輩が真美ちゃんを抱きしめているのを眺めている。

「あー、いいな、僕も羽多野くんにギュッと……」

 徳井が何か恐ろしい事を呟いてるがスルーして。

「それでどうして徹は白石先輩が演技していると気がついたんだ?」

 昌が不思議そうに聞いてくる。

「それはあのときに凛先輩が言った言葉さ」

「言葉?」

「そう。あのとき凛先輩は "もういい加減やめましょう。あなたたちの負けよ!" って言ったよね」

「うん。覚えている」

「本当に凛先輩が裏切ったのなら "もういい加減やめましょう。不正なんて何処にも無いのよ!" になるはずなんだ、それが敢えて負けっていう言葉を使ったのは……」

「そうか! 不正は有るのだけどそれを証明出来なかった俺たちの負けってことか!」

 昌は感心しながら話しを続けた。

「でも、そんな事よく気がついたな?」

「それは…………俺が凛先輩のことを信じていたからだと思う。少しの時間だけど同じ時間を共有して凛先輩の良い所も悪い所も見れたし、その全てをひっくるめて俺が凛先輩を信じようと思ったから、凛先輩からのメッセージを受け取れたのだと思う」

 俺と昌の話を聞いていた親父がニンマリしながら会話に割り込んできた。

「これぞまさに愛だな!」

「はぁ~~~~~~っ?」

 何を言ってるんだこいつは!

 俺がそう思っている隣で昌が何か焦っている。

「おじさん! ちょっとその発言はマズイっすよ!」

「んー? なんでだ?」

 呑気に応えた親父だったが昌の後ろから氷のような視線を感じて慌てて言い直す。

「え、えーと、あ、あれだ! 今日子くん、姉弟愛だよ! な? 昌くん!」

 昌は親父に小声で なんで俺に振るんすか! と抗議しつつも

「はい。そ、そう、姉弟愛ですよね」

 と同じく慌てて口を合わせる。

 親父は話題を変えようとひとつ咳払いをしてみんなに言った。

「とりあえず、不正の件は解決したし岡田くんも一生徒に戻って真面目に頑張ってくれることを願っている。君たちに今回はたくさんの迷惑をかけたな。すまなかったと共にありがとうと言いたい」

 親父は俺たちに深々と頭を下げた。

 凛先輩、昌、今日子、真美ちゃん、徳井。

 みんな少し恥ずかしそうにしながら今回の件を解決した自信を持った顔で笑っていた。

 俺はといえば、こんな親父を見た事が無かったので少々面食らっていたが、みんなの笑顔を見てやっと終わったっていう安堵感で満たされてきた。

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