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俺の平穏な日常を壊すのは誰だ  作者: 土原和正
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六 ミスコンのカラクリ


 街から少し離れた閑静な住宅街に建っている俺の家のリビングで異様な光景が繰り広げられていた。

 俺が座っている向かいのソファでは凛先輩が真美ちゃんを抱きしめて「可愛い! 可愛い!」と言いながら頭をなでなでしている。

 真美ちゃんは迷惑そうな顔をしながら凛先輩のされるがままになっている。

 その横に座っている今日子は呆れた顔で二人を見ている。

 その右隣の一人掛けソファには徳井が座っていて「始めて友達の家に招待された!」と言って目を潤ませている。

 その向かいの一人掛けソファには昌が座っていてタブレットを出して真面目な顔でしきりに何か操作している。さすがは昌だ。事の重大さを考えて岡田生徒会長のことを調べ直しているのだろう。

「えーと、これから大事な話をしようと思うんだけど…………」

 って、誰も俺の話を聞いてないし…………。

「あっ! ごめん! 真美ちゃんがあまりに可愛いのでつい夢中になっちゃたわ。みんな! 徹くんが何か話しがあるそうよ!」

 凛先輩の声でみんながいっせいに俺の方に向き直った。

 えーっ、俺の言った事は無視で凛先輩の言った事は聞くのかい! いいさ、いいさ、どうせ俺の言う事なんて……と一人愚痴っていると

「徹! 話しがあるのならちゃんと話しなさい」

 今日子に思いっきり怒られてしまった。

「わぁ~っ、今日子ちゃん、徹くんの奥さんみたい」

 凛先輩が目をキラキラさせながら嬉しそうに言った。

「えーっ、やだ! 何言ってるんですか、白石先輩!」

「そうだよ。今日子は単なる幼馴染だから」

 俺と今日子は先輩の誤解をあたふたしながら解こうとしているときに突然昌が大きな声を出した。

「わーっ! クリア出来なかった! このパズルゲーム難しいんだよなー」

「昌! おまえはそのタブレットでゲームやってたのかよ!」

 まったく! さっきおまえのことを感心した俺の気持ちを返して欲しいよ!

「あははは、おふざけはそれくらいにして、徹、本題に入らないか?」

「おまえが言うか! おまえが!」

 昌は俺の言葉を流してソファに腰掛け直し真顔で話す。

「とりあえず、今日子ちゃんと真美ちゃんと徳井は事の発端を知らないから、徹、もう一度説明してくれ」

「わかった」

 俺はひと呼吸置いてからゆっくりと話し始めた。

「俺が凛先輩に生徒会室に連れて行かれたのは三人とも知っているよね」

「みんなが連れて行かれた羽多野君を待っていたあの日の事だね。僕も羽多野君の事が心配で待っていたんだ」

 徳井はにっこり笑いながら話す。

 お前も俺を待っていたのか…………嬉しいような……何か怖いような……。

「で、生徒会室でパソコンの打ち込み作業をしていたのよね」

 今日子はあの日のことを思い出して恥ずかしいのか少し顔を赤らめている。

「うん。その時にパソコンの中の一部の文字が点滅し始めて、その文字を繋げて読むと"生徒会長岡田の不正を暴け"っていう言葉になったんだ」

 三人は話しの内容が内容なだけに真剣な表情で聞いてしばらく黙り込んで考えているようすだった。

 誰もが口を開かない中、以外にも真美ちゃんがゆっくりと話を切り出した。

「それって、羽多野くんの見間違いってことはないんですかぁ?」

「俺も始めはそう思ったんだけど、はっきりと目で追って読んだから光っていた文字の内容に間違いない」

「そうですかぁ」

 真美ちゃんは彼女に似つかわしく無い険しい表情で答えた。しかし、すぐさま何かを思いついたように俺に聞いてきた。

「羽多野くん、この家にネットに接続してあるパソコンはありますかぁ?」

「無線LAN接続してあるノートパソコンならあるけど……」

「じゃあ、それを貸して貰えますぅ?」

「うん。いいよ」

 俺は何に使おうとしているのかわからないままにノートパソコンを真美ちゃんに渡した。

「今から学園のホストコンピューターに接続しますぅ」

「はい? 真美ちゃんアクセスコード持っているの?」

「いいえ、持って無いですよぉ~」

 真美ちゃんはノートパソコンのキーボードを凄い勢いで打っているのだが、それとは正反対に声は変わらずのんびりしている。

「それじゃ無理…………」

「はい! 接続完了しましたぁ」

「マジか!」

 ほんわかした笑顔で凄いことをやってのけた真美ちゃんに俺は驚いた。

「では、生徒会室のコンピューターへのアクセス履歴をたどっていきますぅ」

 みんなが真美ちゃんのパソコン操作を見守る。

「あ、ありました! 確かに特定の文字を点滅させてますねぇ。"生徒会長岡田の不正を暴け" 間違い無いですぅ」

「真美ちゃん! 何処からアクセスしているかわかる?」

「今、調べてみますぅ」

 再びパソコンを操作する真美ちゃんだったが少し間をおいてその手が止まった。

「ダメですぅ。足跡が消されてますぅ」

 真美ちゃんはこちらに向き直ってしょんぼりした表情で言った。

「そうか。発信元は掴めなかったか…………」

「すみませんですぅ」

「いや! 真美ちゃん良くやってくれたから!」

 発信元が掴めずに少し暗い雰囲気になっているなかでひとり元気な男が口を開いた。

「はいはい! 皆さん! 暗くならない! そこでおいらの出番ってわけさ!」

 昌は笑みを浮かべ自信ありげにソファから身を乗り出す。

 おいらってなんだよ! キャラ変わってるぞ! 昌!

 誰も突っ込みを入れないのをいいことに昌は話を続けた。

「岡田生徒会長についていろいろ調べてみた。まず、生徒会長だから当然絶対的な権力を握っている。ただこれは生徒会内だけにとどまらず各部活動や学園内のイベント事や学内での販売物にまで及んでいる」

「どういうことなんだ?」

「会計面では、部活費の割り当て、イベント費用の収支、学内販売物の選定及び収支、人事面では各部署に適切な配置と任命かな」

 今日子が困った顔で昌に聞いてくる。

「なんか、難しい話ね?」

「ごめん! おいらとしたことが! もっと分かりやすく説明するずら」

 おーい! 昌! いちだんとキャラが変わってるから!

「例えば部活に関してだけど、生徒会は各部の部費の管理や対外試合の交渉という事になっているが岡田生徒会長は次期キャプテンの選定やレギュラーメンバーの決定も行なっているらしい」

「それって部活内で決めることじゃないの」

「普通はね。でも岡田生徒会長の意向が反映しているみたいなんだ」

「ていうことはレギュラーメンバーに選ばれて当然の実力がある選手でも岡田生徒会長がNOと言ったらレギュラーになれないってこと?」

「そういうことになるかな」

「えっ! 何! そんなのどう考えてもおかしいでしょ!」

 テニス部所属の今日子は昌の答えに憤慨しきっている。

「そんなこと可能なのか?」

 昌はタブレットをテーブルに置きソファに深々と座り直して天井を見上げながら答えた。

「んー、なんて言ったらいいのかな? おいらには知りたくもない大人の都合ってか?」

「はあ~? なんだそれ?」

 俺は昌のわけのわからないキャラ作りとわけのわからない答えに呆れたような声を出した。

「なんだって言われても困るんだけど、ほら、大人の世界には良くあるお金とか権力とかの絡みがあるんじゃない? おいら、子供だからよくわかんないや!」

「それじゃあ岡田生徒会長がその大人の世界に絡んでいるってことなの?」

 今日子が昌に不満げに尋ねた。

「さあね、そんなものが存在するのかどうかわからないけど、一つだけはっきり言えることがある。生徒会長が岡田先輩であり全校生徒がその事が当たり前で誰も反対しようする生徒がいないって事だ」

「ちょっと待てよ! 昌! 岡田先輩が生徒会長なんだから当たり前の事だろ?」

「そうだな。ただ、徹、部活ひとつとって見てもあれだけ無理を通しているんだ。おいらには不平不満が出てもおかしくは無いと思えるずら?」

「それは…………」

 確かに昌の言う通り各部活のレギュラー選手の決定にまで口出ししてくるとなると少なくとも各部の部長たちが黙っていないだろう。いや、ちょっと待てよ、その部長さえも岡田生徒会長が決めているのか……。

「わかったよ。そういう事があったとして、昌! その変なキャラで話すのやめてくれないか? 大切な話をしているのに緊張感が無くなるよ」

「あははは……ごめん! あまりにも良くない話だったんでつい…………ね」

 昌は頭を掻きながら照れ笑いを浮かべた。

「ということは岡田生徒会長の他にも誰かが何らかの形で関わっているということになるのか……昌はある程度は知っているんだよな?」

「まあ、小耳にはさんだ程度には……言わないけどね。ねっ白石先輩」

「え、えっ、ま、まあ…………」

 何の脈絡も無く昌に突然話を振られた凛先輩は当惑した様子で頷いている。

「さて、ここからが徹がメッセージを受け取った岡田生徒会長の不正の話になるんだけど、複数の先輩達から話しを聞いてみると、どうやらミスコンで不正を行なっていたのは間違いなさそうだ」

「不正の内容は?」

「ミスコンを賭けの対象にして金銭の授受を行なっている」

 リビングには緊迫した雰囲気と物音一つしない異様な静けさが息を詰まらせるような空間を作り出していた。

 そんな中、昌は話を続けた。

「つまり、岡田先輩はミスコン出場者の女子生徒にオッズをつけ客である生徒にお金を賭けさせていたってことになる」

「でも、それってみんなが本命の人に賭けてその人がミスコンで優勝したら岡田先輩は大損するんじゃないの」

「普通にやっていればそうなんだけどね」

 みんなが不思議そうな顔をしていると、昌はテーブルの上に紙とボールペンを出して、二重丸、丸、三角の印を付ける。

「昨年のミスコンを例に説明すると」

 二重丸の印の横にナナセとカタカナで書き

「これが本命だった当時3年の七瀬さん」

 次に、丸の印の横にニジノと書いて

「そして対抗だった同じく3年の虹野さん」

 最後に三角の印の横にフジノと書いた。

「それから2年の藤野さん」

 昌はその三人の名前が記入された紙を真ん中に置いて俺たちに向き直った。

「この三人だけが当初出場する予定だったんだよね。白石先輩?」

「そ、……そうね」

「そこでだ、徹は誰に投票する?」

「うーん、そうだなぁ。ここはシンプルに本命の七瀬さんで」

「七瀬さんに1票」

 そう言いながら昌は二重丸の印の横にナナセと書いてあるところに一と書いた。

「徳井は誰に投票する?」

「僕は対抗の虹野さんに1票」

 丸の印の横にニジノと書いてあるところに一と書く。

「それじゃあ、今日子ちゃんと真美ちゃんは誰に投票する?」

 昌に聞かれた今日子と真美ちゃんは二人とも少し困った様な顔をしながら答えた。

「私はミスコンにあまり興味が無いからちょっとパスかな」

「わたしも遠慮させていただきますぅ」

「わかった。二人は棄権と云う事で……ここに白石先輩が出場者として加わる」

 昌はそう言って三角の印の下にバツ印をつけてその横にシライシと書く。

「これで昨年の出場者が出揃ったわけだが、徹、お前が賭けるとしたら誰に賭ける?」

「結果が分かっているから凛先輩と言いたいところだけど、この段階だとどう見ても本命の七瀬さんか対抗の虹野さんが優勝するでしょう。……っていうか、この三人がいる中でどうして凛先輩が出場する事になったのかが分からないよ」

「じゃあ、本人に聞いてみようか」

 みんなの視線が凛先輩に集まる。

 凛先輩は少し苦々しい顔をしながら口を開いた。

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