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俺の平穏な日常を壊すのは誰だ  作者: 土原和正
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「えっ! 何? どうしたの? 徹!」

 今日子は急に飛び込んできた俺に驚いて目をまんまるに見開いていた。

「今日子! おまえは知らないだろうけどな! こいつは女の子を取っ替え引っ替えして沢山の子を泣かせているんだ。俺はおまえにはいつも笑顔でいて欲しいと思う。だからこいつだけはダメだ!!」

 俺は今日子にそう言い振り返って徳井を睨みつけた。

 徳井はそんな俺の目を見て悲しげな困った様な表情をしている。

「ちょっ、ちょっと待ってよ! 徹!」

 俺と徳井の様子を俺の背中から見ていた今日子が口を開いた。

「徹が私のことをそう言うふうに思ってくれているのはものすごく嬉しいんだけど、何か勘違いをしているわ!」

「勘違い?」

「そう。徳井君が好きなのは私では無くてあなたよ。徹」

「はぁ~~~~~~っ!?」

 な、何? 今日子は何を言っているんだ? 徳井が好きなのは今日子じゃなくて俺だって!?

 いやいや、意味がわからないし!

混乱している俺を見て今日子は笑いながら話した。

「えっと、徹のことが好きだって言ってもラブの方じゃ無くてライクの方ね」

「ん?」

「つまり私が徳井君に呼び出されたのは徹と友達になりたいから手助けして欲しいって言う事なの」

「ちょっと待って、そんなの今日子じゃなくて直接俺に言えばいいんじゃないか? なんで今日子なんだ?」

「それはね……本人から聞いてみて」

 徳井は相変わらずうつむき加減で困った様な表情をしているのだが小声でぽつりと話しだした。

「うらやましかったんだ」

「うらやましい? って何が?」

「羽多野君の周りにはいつも友達がいて、いつも笑顔がいっぱいで、互いに心配しあって助け合って、僕はいつも羽多野君達と友達になりたいと思っていたんだ」

「いや、でも徳井、お前の周りにはいつも女の子達がたくさんいるじゃないか」

「うん。確かに女の子達はみんな僕に話しかけてくれるんだけど彼女らが親友になり得るかというと難しいと思うんだよ」

それはそうだ。彼女らは徳井の彼女になりたいのであって徳井の親友になりたいわけじゃないからな。

「話はわかったけど、何で俺に直接じゃなくて今日子に頼んだんだ?」

「それは…………」

 徳井は照れた感じで顔を赤らめて言った。

「実は僕は男の友達がいないんだ。いや、いないんじゃない。今まで一度も男の友達がいたことが無いんだ」

「マジか…………?」

「本当のことなんだ。僕の家は家庭の事情で父親がいなくて、姉と妹と母親との四人暮らしで全く男っ気が無かったことから男の子と話すより女の子と話す方が楽だったんだ。正直、僕にとって男の子と話すことはとても勇気のいることなんだ」

「それで今日子に頼んだってわけか」

「うん。それから、さっき羽多野君が言った女の子を取っ替え引っ替えしているっていうのは間違いで誰とも付き合っていないというのが事実なんだ」

「じゃあ、たくさんの女の子を泣かせているっていうのは?」

「それは事実だよ。でも、状況が違うんだ。噂では僕が女の子を取っ替え引っ替えして泣かせている様に流れているけど、実際は僕が告白を断わって涙している女の子がたくさんいるっていうことなんだ」

 う~ん、徳井の言ってることはよく分かるんだけど何か自分のモテる自慢を聞かされているようで複雑な気持ちになる。そんな俺の気持ちに気づいてか徳井が続けた。

「えっと、たくさんと言っても僕はまだ誰とも付き合う気は無いし、そんなに告白されて、ありがたいんだけど僕自身は困ってもいるんだ」

 嘘偽り無く困り切った表情で話す徳井に少し離れたところから声が飛んだ。

「徳井! お前の気持ちはわからないでも無いが、今の話を聞いているとモテ無い男に対する嫌味に聞こえるぞ!」

 俺と今日子と徳井が声のする方を見ると先程まで木の影に隠れていた昌と真美ちゃんがこちらに向かって歩いてきていた。

「すまない。そういうつもりで言ったわけでは無いんだけれど……」

 徳井はいちだんと小声で謝った。

 その徳井の姿を見て昌は大声で笑いながら

「冗談だよ! モテるっていうのも案外苦労するもんだな」

 そう言って徳井に右手を差し出した。

「ようこそ羽多野徹と愉快な仲間たちへ(仮)!」

 徳井は差し出された手をしっかりと握り返した。

「昌くん、何? その羽多野徹と愉快な仲間たちっていうおかしなネーミングは!」

 今日子が納得できない顔で昌に聞いてくる。

「いや、ほら、俺たちのグループって名前付けてないから。それに(仮)って付けてあるじゃない」

 昌が楽しそうににやけながら答えている。

 いやいや、普通は友達のグループに名前は付けて無いだろ。バンドの名前じゃああるまいし。

「まあ、(仮)ならいいわ」

 今日子は渋々納得した様子である。

 おいおい! そこで納得するなよ! 今日子!

 今日子が納得しても俺は納得出来ないので一言昌に文句を言ってやろうと口を開いた時、昌の後ろにいた真美ちゃんが小声で言った。

「徳井さん……大丈夫ですかぁ?」

 真美ちゃんの声に反応して俺たちが徳井の方を見ると徳井は涙を流していた。

「ちょっ、ちょっとどうしたんだ! 徳井!」

 俺は慌てて徳井に声をかけた。

 徳井は涙を流しているけどにこやかに笑いながら答えた。

「始めて男の友達が出来ただけじゃなく、こんなにたくさんの友達が一度に出来るなんて嬉しくて………………」

「そうなの、よかった。私は昌くんが付けたグループ名がイヤで泣いているのかと思った」

 今日子は昌の方を見て半目で睨みながらイヤそうに言った。

「う、うっ……また、そこを突っ込むのか……。徳井、(仮)だからいいだろ?」

 今日子の口撃を逃げるかのように昌は徳井に同意を求める。

「僕は羽多野徹と愉快な仲間たちって云うネーミングは結構好きなんだけど」

 徳井の顔からは涙が消えて満面の笑顔で言ってのけた。

 こいつは! 爽やか系イケメンなのになんでこんな残念な感性の持ち主なんだ。

「えーとぉ、私たちのグループ名はまた改めて考えるってのはどうでしょうかぁ?」

真美ちゃんが甘い声でやんわりとダメだしをする。

「そうよね。真美ちゃん! 絶対に後で考えよう!」

 今日子が真美ちゃんの意見に激しく同意する。

「そんなにイヤかな? 徹?」

「あははは…………」

 聞いてきた昌に俺は苦笑で答えた。

 みんなが昌の付けたグループ名の話で持ちきりの中、昌が俺の側まで来て小声で言った。

「岡田先輩の件、分かったぜ」

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