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しまった! うかつだった!
放課後の教室に今日子と徳井の姿が見えなかった時点でこうなっている可能性を考えておくべきだった。
「昌! 二人はどこにいる?」
『高等部と中等部の間にある園庭だ!』
「わかった! 今すぐに行く!」
俺と昌のスマホでのやり取りを聞いていた真美ちゃんが心配そうに聞いてくる。
「どうかしたんですかぁ?」
「うん! 緊急事態だ! 今日子が徳井に呼び出されたらしい。急いで学校に戻らないと!」
「わかりましたぁ。私も行きますぅ!」
俺と真美ちゃんは今歩いて来た道を引き返す為に全力で走りだした。
頼む! 間に合ってくれ!
俺は祈るような気持ちで走った。
私立神楽坂総合学園は膨大な敷地内に幼稚園、小等部、中等部、高等部、大学が建てられている。その建物同士を仕切る形で遊歩道と園庭が設けられている。幼稚園と小等部の間は春の庭、小等部と中等部の間は夏の庭、中等部と高等部の間は秋の庭、高等部と大学の間は冬の庭という名前がつけられて季節ごとの花が各々の庭で咲いて学園を彩っている。
「徹! こっちだ!」
秋の園庭に向かって全力疾走していた俺を昌が呼び止めた。
昌は園庭から少し離れた木の影に隠れるようにしている。
「今日子と徳井は何処だ?」
「静かにしろ、徹、声が大きいぞ」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」
「いいから、こっちに来い」
俺は昌に引かれていっしょに木の影に隠れた。
「何か様子がおかしいんだ。あの二人。徹、見てみろよ」
昌が指差した園庭にある木製のベンチに今日子と徳井が座っている。確かにおかしいといえばおかしい気もする。二人は並んで座っているのだが告白すると言うような甘い感じでは無く、徳井はうつむき加減で深刻な表情をしているし、今日子はどちらかと言うと慈愛に満ちた優しい笑顔で徳井を見ているという感じである。
「俺がここに来てからずっとあんな感じなんだ」
「だからと言ってそのままにして置けないだろ!」
「まあ、そうなんだが……」
なんとも煮え切らない返事を聞いたところで、俺といっしょに引き返してきた真美ちゃんが到着した。
「やっと追いつきましたぁ~。今日子ちゃんの様子はどうですかぁ?」
「見てのとおりさ。なんか微妙な雰囲気なんだ」
真美ちゃんも俺たちと同じ木の影に隠れて今日子と徳井の方を見た。
「そうですねぇ~、告白をしているって感じでは無いかもですぅ…………あっ! でも今徳井くんが今日子ちゃんの手を握ってますぅ!」
「なっ!」
俺は思わず飛び出していた。どんな感情が俺を動かしたのかは自分でもわからないが、とりあえず今は今日子を助けることだけを考えていた。
「ちょっと待った!」
俺は今日子と徳井の繋がれた手を振りほどき二人の間に割って入った。




