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「ったく…………真美ちゃん……何やってんだか」
「えーっ! どうしたの徹くん。こんなに可愛い子なのに! 好みじゃなかった?」
「いや、そう言うんじゃなくて。この子、俺の友達なんだよ」
俺のその言葉を聞いたとたんに凛先輩の目が爛々と輝き始めた。
「えっ! 徹くんの友達なの! ねぇ、ねぇ、私に紹介してくれないかしら。すっごく可愛いよね。あーっ! もしかして徹くんの彼女なのかな?」
興奮気味に聞いてくる凛先輩を俺は手で遮って冷静に答えた。
「真美ちゃんは俺の彼女じゃないよ。なにより俺は彼女なんていないし、それから凛先輩には今度、俺の友達をみんな紹介するよ。……っていうか、なによりもまず服を着てきてよ! 本当に目のやり場に困るから!」
「ダメだったかしら?」
「ダメです!」
渋々、自分の部屋に戻っていく凛先輩の綺麗な裸の後ろ姿に目を奪われている俺を俺自身で叱咤して自分の部屋に入った。
着替えを済ませてリビングに戻るとライム色のTシャツにジーンズ姿の凛先輩がテーブルにご飯とハンバーグとスープを並べていた。
「うわっ、美味しそう」
プレート皿に乗った肉厚のあるハンバーグがジュウジュウ音を立てて肉の表面に薄っすらと焦げ目がつく香ばしい香りが漂ってくる。
「どうぞ、食べてみて」
「いただきます」
ハンバーグを一口大に切って口の中に入れる。昨日のカレーで分かってはいた事なんだが、このハンバーグも美味しい。肉は柔らかくふんわりと、噛んだときに肉汁がジュワッと口の中に溢れ、少ししつこい感のある脂分をソースの酸味と甘みが程よく調和させている。
「美味しい! ファミレスでコーヒーだけにして良かった」
「ということは、徹くんは私の作る夕食に少しは期待してもらっていたのかしら?」
「少しなんかじゃなくて、すごく期待していた」
「そう」
凛先輩は恥じらいの表情を見せながら微笑んだ。
「こんなに美味しいご飯を作ってもらえるなんて、凛先輩の彼氏は幸せ者だな」
「えっ? 彼氏って何の事かしら?」
あれ? まずい話題振っちゃたかな。もしかして、生徒会長の岡田先輩と付き合っているのはみんなに内緒にしてるのかな?
「えーと、ほら、ウワサで耳にしたものだから……」
「そうなの。でも私、彼氏なんていないわよ」
凛先輩は真顔でさらっと言った。その顔は嘘をついているようには見えなかった。
「で、徹くん? そのウワサってどういうものなのか教えてもらえるかしら?」
「その~……あの~……凛先輩と生徒会長の岡田生徒会長が付き合っているみたいな……」
凛先輩はテーブルに頬杖をついてため息をひとつついた。
「徹くんの耳にまで届いているんだ。困ったものね」
「徹くんは生徒会役員の選出方法を知っている?」
「ううん。知らない」
「生徒会長は全校生徒の投票で決まるのは知っているでしょうけど、その他の役員、副会長、書記、会計などは生徒会長が選任出来るの。私の場合はミスコンがあった後で前任者が解任され、当時、1年生だった私が選ばれた事から、私と岡田生徒会長が付き合っているんじゃないかって云うウワサが立ったの」
「じゃあ、岡田生徒会長と付き合ってはいないんだ」
「当然! 私があんな薄気味悪い人と付き合うわけ無いでしょう」
「薄気味悪いって……岡田生徒会長はかっこいいし頭も良くて女子生徒から人気あるじゃ……?」
「そうみたいね。でも、私はあの人を見下したような話し方、何を考えているのかわからない作り笑顔、とてもじゃないけど好きにはなれないわね」
確かに、俺がさっき生徒会室で初めて岡田生徒会長と会ったときに受けた印象もあまり良い感じではなかったな。
生徒会室と岡田生徒会長の事を考えていたら重大なあの事を思い出した。




