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四 異常な日常かも
「えっと、私はストロベリースペシャルビッグチョコパフェ!」
「き、今日子そんな大きいの食べれるのか?」
「俺は三種の肉のグリルプレートセットライス付きで!」
「昌、お前がっつり食べるんだな」
「あのぉ、私はオレンジジュースだけでいいですぅ」
「真美ちゃん、遠慮せずに好きなもの注文していいからね」
ファミレスの席に着いて三者三様の注文に俺が一通りツッコミを入れたところで話しは本題へと移った。
「で、徹が生徒会の仕事を手伝ったってどういうことなの?」
「文字通り、俺が生徒会室に連れて行かれて30センチくらいあるファイルの文章をパソコンに打ち込む作業をさせられたんだ」
「でも、どうして白石先輩は徹を選んだの?」
「それは……」
答えづらい俺の気持ちを察した様にタイミングよく注文したものが店内スタッフによってテーブルの上に並べられる。
今日子は目の前にある巨大なチョコパフェにスプーンを入れてうれしそうな顔でひと口頬ばって口溶けを楽しんでから続けた。
「それは?」
「それは凛先輩は俺の姉だからなんだ」
俺のカミングアウトに今日子はスプーンをくわえたまま固まり、昌は肉を喉に詰まらせたのか咳こんで、真美ちゃんはジュースをこぼしそうになってあわてている。
「おい! 徹! 何の冗談だ」
水を一気に飲んで昌が真顔で俺に聞いてきた。
「それが冗談じゃないんだよ。みんなも俺の母親が小さい頃に亡くなったのは知ってるよね」
みんな無言でうなづいている。
「今まで独り身だった親父に再婚話があるんだ。それが凛先輩の母親で……」
「って! ちょっと待って!」
今日子がすごい勢いで話しを止めた。
「徹! あなた白石先輩の事を凛先輩って言ってるわよね。どうして名前で呼んでいるの? まだお父さん再婚して無いのよね」
「えっと、それが……訳あって今一緒に住んでいるんだよね」
今日子はスプーンをテーブルに落とし、昌はナイフとフォークを落とし、真美ちゃんはジュースを盛大にひっくり返した。
二人が固まっている間にスタッフが素早くジュースのこぼれたテーブルを拭き、その間ずっと真美ちゃんが「すいません。すいません」と謝っていた。
スタッフが去った後真っ先に声を出したのは真美ちゃんだった。
「あのぉ? 一緒に住む事になった訳って何ですかぁ?」
おおっ、久しぶりに真美ちゃんの声を聞いたぞ! って喜んでる場合じゃなかった。
「親父は今、海外出張でオーストラリアにいるんだけどその出張に凛先輩のお母さんが付いていったんだ。それで高校生の女の子の一人暮らしは物騒だからってことで、親父が凛先輩に俺の家に行くように言ったみたい。で、俺もそう言われるとしょうがないので一緒に住むことを了解した訳なんだ」
「みんなには話しておかなければいけないと思っていたんだけど、突然の事だったから……みんなごめん」
「……そういうことか」
俺の説明を聞いて少し落ち着きを取り戻した昌が納得した様子で話した。
「で、徹、お前は大丈夫なのか?」
「正直言って、ものすごく戸惑ってる。親父の再婚の事も、姉が出来る事も、俺はまだ心の準備が出来て無いのに突然一緒に住む事になってしまって」
「だろうな。徹は平穏な日常をこよなく愛す男だからな」
「分かってくれるか。さすが昌だな」
俺は昌の気遣いがすごく嬉しかったが、次の一言がよけいだった。
「しっかし、イイよな、白石先輩と一緒に暮らせるのか。夢のような話だな」
「昌くん!」
向かいに座ってる今日子が昌をたしなめた。
「ごめん、ごめん、冗談だよ」
昌は頭を掻きながら咳ばらい一つして
「まあ、事の真相は分かった訳だし、とりあえずは徹の事を暖かく見守ってやるっていうのでいいかな」
今日子と真美ちゃんに聞いた。
「うーん……分かった」
今日子は少し不満げに答え、隣にいる真美ちゃんはゆっくりコクリとうなづいた。
「でも、何かあったら私たちに相談してね。ぜったいよ!」
「そうだぜ、今日子ちゃんの言うとおり何でも相談に乗るから」
二人とも真剣なまなざしで話し、真美ちゃんも同じく真剣なまなざしで首を上下させている。
ファミレスの窓の外に見える建物が茜色から本来の色に戻り、その色を闇が覆いLEDの街灯がまばゆいばかりの光を放ち始めている。
俺は三人に感謝して放課後の楽しい時間を過ごした。




