表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/37

花街産まれ

初投稿です。よろしくおねがいします。

 昔から母や薔薇園の女将、はたまた薔薇園で働くねえ様がたに

「ロゼはほんとに手のかからない子ね」

と幼いころから言われ続けてきた。


 確かにわたしと同じ花街産まれの子供たちに比べて、なぜかわたしはいつも一歩引いたところにいた気はする。

 みんながいたずらをしようとするのを軽くたしなめてみたり、これをやったら必ず怒られる、と幼いながらも理解し、自分はそそくさと退散するなど、まあずる賢い子供だった。

 無邪気さももちろんある。

 だけど、子供特有のわがままやぐずりはほとんどなかったのだと思う。








 王都からそう遠くないところに娼館、薔薇園 (ばらえん)は存在する。

 薔薇園に限らず、娼館勤めの娼婦が客なのか、はたまた相瀬を交わした恋人なのか、子を成すことはそう珍しいことではない。

 そんな娼婦を母に持ち、娼館が集う場所、花街で産まれ育つ子供のことを花街産まれと言う。

 花街産まれの子供たちには決まった父親という存在がいないのが特徴だ。


 わたしもまた、花街産まれの子供であった。


 このあたりの娼婦のなかで、5本の指に入るであろう売れっ子である薔薇園の娼婦を母に持つわたしは、母譲りの綺麗な緑色の瞳と透けるような白い肌をしている。


 髪は残念ながら母様のようにサラサラな金髪ではなく、どこの誰ともわからない父親譲りなのだろう、くるくると癖っけのある赤毛だった。



 わたし達、花街産まれの子供の将来はほぼ決まっているようなものだ。

 女ならば娼婦。

 男ならば駒使いか娼館の用心棒。

 運が良ければお金持ちの客に身請けして玉の輿ってこともなくはないが、花街産まれは花街で産まれ、花街で育ち、花街で散って逝くことが多い。


 それが悲しいことだとも嫌なことだとも考えたことはない。

 わたし達にとってはそれが普通なのだから、外の世界を知らない限りそんなことは考えもしない。


 たまに外から売られてきたねえ様が「帰りたい、ここから出して」と夜な夜な泣いていることも珍しくはないが、何が不満なのかわたしには全くわからなかった。



ここ花街の何がいやなのかな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ