何が起こったのかな・・?
Ⅳ
誰が、責められるだろう。僕は血まみれだった。肉塊と骨を前にして、立ちすくんでいた。黒い髪に深紅の血を滴らせながら、呆然としていた。何が起こったのかも分からないまま。
-「馬鹿?」
だが彼女は、そんな僕を一蹴した。僕を蹴って、無理矢理前を向かせた。だんだん僕の視界がホワイトアウトしようとしてきた。
「ちゃんとしてよ。責任を放棄しないで。」
だが彼女は容赦しない。だがある意味、彼女の言葉は真髄だった。
「別に馬鹿でいい。僕にどういう責任があるってんだよ。」
僕の口からはいつもの、いつもの僕の常套句が口を突いて出る。彼女はそれを聞いて一瞬顔をしかめたと思うと、不憫そうな顔をした。赤い目でこちらを睨むが、僕はたじろがない。
彼女はため息をついた。
「本当に何も知らない・・」
「何を」
僕は彼女の知ったかぶりのような態度への苛立ちから、答えを急いた。彼女の口は貪欲だった。何も答えようとはしない。ただこちらを睨んでいる。
-僕を責めるように。
僕は何も知らなかった。ただそれだけだったのに。
何故、君は見ず知らずのの僕をそこまで責められるんだ?何もかも知ったような顔をして・・・。君は誰なんだ。そして君はおもむろに口を開いた。
「あなたは馬鹿。」
「何がだよ。お前が何を知ってる?」
僕が無愛想な声で突き放すように言っても、彼女はまるでたじろがなかった。そのかわり、少し考えるような仕草をすると、ボソッと言った。
「・・・色々・・、あなたが知らないことを。」
「じゃあ教えろよ。」
「それは無理。」
埒が明かない。僕は彼女に一歩近寄った。
-とたん、彼女の顔からさあっと血の気が引いた。
「こ、来ないで。」
「何故?」
僕は歩みを止めなかった。彼女は驚いたことに、恐怖の色を顔に浮かべ、後ずさって言った。それでも僕は、歩みを止めようとはしなかった。
-何故だろうかと、思った。それは、僕の彼女に対する腹いせという幼稚なものだった。
僕はそのまま硬直する少女の前に立った。なあ、と言おうとして口を開くと、偶然にも彼女の毛先に手が当たった。
-ただ、それだけだったんだ。そんなつもりなんて、これっぽっちも無かったんだ。
耳を劈く爆発音が上がり、爆風が起こって-。
気付くと、僕も彼女も血まみれだった。
・・・・
鮮やかな赤紫のロングヘアー。腰まで届くその艶やかな髪は月光に照らされ、宝石のように輝いていた。青白気味のほっそりとした手足。右腕から手にかけては大きな黒い数珠が巻きつけられ、足には草履。整っているがどこか不思議で妖しい顔立ち、滑らかな白い肌。身に着けた紺の質素なワンピースだがどこか涼しげに遠くを見つめている・・。
それが、彼女だった。