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誕生パーティ 1



ご無沙汰しております。


毎度のことながら遅くなり申し訳ありません……



今回は懐かしい人物たちが出てきますので、簡単に人物紹介。


国王・・・デュラン・アルシュタイン


第一王妃・・・フリージア

第三王妃・・・レイニア

第四王妃・・・ユーリ

第五王妃・・・アイリーン


第一王子・・・ルーファス(母レイニア)

第二王子・・・エドワード(母レイニア)

第三王子・・・エリオット(母フリージア)

第四王子・・・リュオン(母ユーリ)


第一王女・・・ジュリア(母フリージア。他国に嫁いだ)

第二王女・・・リリアーヌ(母フリージア)

第三王女・・・アメリア(母レイニア)

第四王女・・・マリアンヌ

第五王女・・・メイシャ



では、どうぞ!






 その人が会場に入った途端、場を支配していたざわめきが止む。何百という視線が向けられ、常人であっても吐き気を覚えそうな程の注目が集まる中を、マリアンヌは顔色一つ変えずに、むしろ挑発するようにゆっくりとした足取りで、歩いていく。

 注目されることには慣れていた。生まれてから、注目を集めなかったことの方が少ない。視線に含まれる嫉妬も、侮蔑も、羨望も、マリアンヌには慣れ親しんだもので、今さら臆するようなものではない。むしろないほうが違和感があるだろう。


 いや、あってもなくても、マリアンヌにはどうでもいいことであった。

 ローズマリー以外の人間には、マリアンヌは興味がなかったから。


 「貴様、何を暢気に歩いているっ?!もう始まるんだぞ!」


 マリアンヌが兄弟の集まる会場の一番奥に着くや否や、沸点の低いエリオットが噛みついてくる。


 「知っているわ。だから来たのでしょう?」


 「違う!そうじゃなく、遅いと俺は言ってるんだ!!親族が遅れたんじゃ、他国にも自国の貴族にも示しがつかんだろうがっ!!」


 「遅れた訳ではないのだから、平気でしょう?それに、示し云々なら、貴方の方がつかないのではなくて、エリオット?これだけ注目されている中、女性に対し怒鳴るだなんて……一体、いつになったら貴方は紳士になるのかしら?」


 呆れたようにマリアンヌが言えば、エリオットは顔を真っ赤に染め牙をむく。


 「き、貴様――」


 「まぁまぁ、二人とも落ち着けって」


 マリアンヌとエリオットの間に体ごと入れて、ルーファスが止めに入った。しかしそれすらも癇に障ったらしく、エリオットが今度はルーファスを睨みつける。

 怒鳴り散らそうと開かれたエリオットの口は、しかし何の音も発することは出来なかった。横から出てきた扇子が、彼の口を叩いたのだ。


 「お止めなさい、エリオット。……もう、陛下がいらっしゃるわ」


 第二王女リリアーヌ――同じ母を持つ姉に咎められ、エリオットは剥き出しの敵意を納めるものの、不服そうに「しかし」と言葉を継ぐ。


 「お黙りなさい。これ以上、醜態を晒すなと言っているのです」


 ピシャリと言われ、エリオットは主人に怒られた犬のごとく項垂れる。……フリージアの家系は、どうも女性の方が強いようだった。


 あのキャンキャン煩いエリオットが見事に御される様子を、何とはなしに見ていたマリアンヌの耳元に唇を寄せて、ルーファスが聞く。


 「ところで、ローズマリーは?」


 王族は男性なら近衛騎士を、女性なら侍女を一人側に付けることが許されており、基本的には皆付ける。マリアンヌの侍女はローズマリーだけなので、当然いるものと思いルーファスは聞いてきたらしい。


 そんなルーファスに、マリアンヌは飛びっきりの笑顔を向けて、言ってやる。


 「連れてきておりませんわ」


 あからさまに肩を落とすルーファスに、マリアンヌは不安を覚えた。


 (……まさか、貴族の娘をほったらかして、ローズマリーを口説くつもりだった、なんて、恐ろしいことは考えてないわよね)


 それほど本気でローズマリーを想っているのであれば、対処しなければならない。なにせこの男は歩く性欲だ。すれ違い様に襲われる、何てことも十分に考えられる。ローズマリーは見ているだけなら男だとバレる可能性は限りなく0に近いが、流石に触れば分かってしまう。


 注意深くルーファスを観察していたマリアンヌだったが、ふとの腕に柔らかくて温かな何かが纏わりついてきたことで、意識を逸らしてしまう。


 「お・ね・え・さ・ま」


語尾にハートマークを付けそうな甘ったるい声に、マリアンヌは鳥肌が立った。見なくても分かる。メイシャだ。きっと今マリアンヌの腕に絡みついて、媚びるような上目遣いで見つめてきているのだろう。それを見たら、可憐な妹を全力で振り払う自信がマリアンヌにはあった。


このように人目のある場でそんなことをする訳にもいかず、どうするべきか、と逡巡するマリアンヌを救うように、会場に金管楽器のファンファーレが鳴り響く。その瞬間、全ての者が膝を付き頭を垂れた。王の、登場である。


ゆったりとした動作で、王が歩いてくる。その足音すらカーペットに吸いこまれ、会場は水を打ったように静かになった。息遣いと、布ずれの音だけが耳に届く。王が目の前を通り過ぎて、そこでようやくマリアンヌはあることに気が付いた。


王の後には、王妃が続く。だから王の後には4人の女性がいるはずなのに、通り過ぎたのは3人だけ。いつまで待ってももう1人が通ることはなかった。


「面をあげよ」


厳かな声に許可され、皆が顔を上げ立ち上がる。


王は、いつものように精悍な顔に甘い微笑みを浮かべており、会場内の女性達から感嘆のため息が零れる。その様子に、マリアンヌは別の意味でため息をついた。これが自分の父親であると、マリアンヌは信じたくなかった。


朗々と王の挨拶が始まるが、マリアンヌは話を聞かずに王の後ろの人達を確認する。

そして


(……いない、わね)


期待を裏切らない彼女にも、ため息をついた。


(……流石、というべきなのかしら?まさか陛下の誕生日パーティに遅刻してくるなんて思いもしなかったわ。……いえ、そもそも来るのかしら?)


悪戯っぽく笑うアイリーンの姿が目に浮かび、マリアンヌは生真面目そうな彼女の近衛騎士に深く同情した。きっと、今頃血眼になって城内を大捜索しているに違いない。


さぞフリージアの機嫌も悪かろう、と彼女に目をやり――マリアンヌは目を見張る。フリージアが口元に笑みを浮かべていたからだ。

彼女の性格からいって、このような国の重大行事に遅刻してくるなど、我慢ならないことであるはずだ。普段からあまり感情を隠すのが上手くないフリージアが、今無理を押して微笑んでいるとは考えにくい。


おかしいといえば、彼女のドレスもおかしかった。

フリージアは、普段は着ないような真っ赤なドレスを着ていた。赤は、若い女性に好まれる色で、フリージアが着るには色彩が強すぎる。しかも胸元が大きく開いており、彼女の気品が損なわれていた。もし、ここにマリアンヌの唯一の侍女が居たならば、大激怒の上辛辣な批評を、ドレスを作った人間にぶつけていただろう。


(いったい、何があったのかしら?)


そんなことを推察していればいつの間にか王の挨拶も終わり、皆が挨拶に並び出す。王の子であるマリアンヌ達は招待客の前に王に挨拶することができるので、さっさと終わらせて壁の花を決め込もう、とマリアンヌはすぐさま王の前に出た。


「おめでとうございます、陛下。この新たな歳が幸福なことで溢れるよう、お祈りしております」


「あぁ、ありがとう、マリアンヌ…………そなたは、今年も黒いドレスなのだな」


少しだけ寂しそうに呟かれたな王の言葉に、マリアンヌは艶やかな笑みを浮かべる。


「わたくしは、黒薔薇ですもの」


「そうだな」と少しだけ目を伏せて、王は色男の名に恥じない笑みをみせる。


「今日は、心ゆくまで愉しむといい」


「恐れ入ります」







次回は、何やら怪しい公爵様とのお話がメインです。

ローズマリーはしばらくお休み・・・


ちょっとシリアスな場面がおおくなるかもしれません。


それでは、読んでいただきありがとうございました!




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