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孤高の狂戦士-Ber Ser Ker-  作者:
第一章 混沌は壊滅と新生を招く
8/17

逃れた真実2

    30


(11月28日 17:15)


寺地には、そこで花壇の花に水をやるように爆弾を振りまく少女は、寺地の知る塩中ではない。と、確信を持って言えた。寺地の知る、というのは、塩中の人格がまるで別人のようだ、という意味ではなく、根本から別人だ、という確信。


それは、寺地の持つ『超特異体質』から来るモノであった。


『絶対音感』。


曲を一度聴いただけで完璧にそれを再現する、日常で聞く何気ない音の音階を言い当てたりと、色々あるが、それも人それぞれである。


しかし、寺地の場合はその中でも特殊で、絶対音感を応用し、“一度聴いた人間の声を照合”する事が出来る。


その事から、先程まで発せられていた少女の声が、塩中のモノだとは感じなかったのだ。



(アイツは、外見こそ塩中に酷似してるが、確実に別人だ。まずはそれを確かめる)



寺地は準備を済ませ、シアターの入口を見据える。



『そこかにゃーん?』



ボウンッ!! と淡白な爆音と同時に、一見重そうに見えるシアターの入口が一瞬でひしゃげ、前方へと吹き飛ぶ。その爆風は、辺りの埃まで一緒に巻き上げ、灰色の薄い煙が立つ。そこから、瓦礫を踏みにじるようにして入ってきたのが、白いパーカーに身を包んだ少女・“塩中”だった。



「はいはい、いい加減出てこないと、アンタら全員まとめてこの廃墟ごと吹っ飛ばすぞ」



「じゃあ何で最初からそうしなかった」



寺地は、客席の影から立ち上がり、入口から入ってきた“塩中”と対立する。その両手には、何も持っていなかった。



「『ルーレット』の元締め・寺地 宗也」



“塩中”は、まるで何かを読み上げるように寺地の顔を確認して言う。



「最初はここに来た『ルーレット』全員を殺せって命令だったけど、アンタ一人を弾くだけでも『ルーレット』には障害となるのか?」



「その質問に答えて欲しいんならまず俺の問いに答えてもらおうか」



「フン…気まぐれだそんなモン。一気に焼き払ったら全員仕留めたか分からないじゃねえか」



「なるほど。獲物は一人一人正確に狩る、か」



「ふーん…」



“塩中”は、平然と自分とやり取りをしている寺地を見て、まるで関心したかのように



「お前、俺の姿を見ても驚かないのね」



荒々しい男口調。寺地の知る塩中からは普段耳にできない言葉だ。表情も仕草も、どことなく塩中に似ているが、やはり違う。



「お前が塩中 優希じゃねえって事ぐらいとっくに気付いてんだよ」



「へえ…お前面白いな。普通の奴なら、俺とアイツじゃ全く見分けがつかないって言うんだがな」



「フン…やっぱりか。そんなこったろうと思ったぜ」



「…」



“塩中”は、まだ明かしていない真実を汲んだような寺地の表情に、何も言えずに立っていた。



「お前って―――」



    31


(11月28日 17:15)



「もう!! なんで優希、携帯置いて行っちゃったの!」



綾部は、電話を掛けた塩中の携帯が、一階のソファの上で鳴り響くのがわかった。


『ノウズ』に情報の開示要求を送っても、最低でも30分は返信が来ない。



「他に…何か他に優希の居場所を…ッ!!」




『そんなら塩中はどこにいる? いや、どこに行くって言ってた』



『え…レンタルDVDを返すって言って東地区に向かうって言ってはいたけど…』



『そんなら、東地区中の監視カメr―――』




不意に、綾部の頭に先程の寺地との会話が過ぎった。



「…そうか!!」



綾部はひたすらキーボードを打ち始める。最後に、ゴーグルのフレームに付いたボタンをカチ、と押すとレンズ内側のディスプレイには、東地区の監視カメラの映像が数個映し出される。


塩中がレンタルビデオショップの袋を持って出ていった一階の映像を見て、そのレンタルショップの店内映像と、『LU LA LA』とレンタルショップの間の道に仕掛けられた監視カメラの映像を抽出する。


映像をいくつも並べ、全てを早送りで眺めている。


そこに映っていたのは、『LU LA LA』から出ると、一度も監視カメラから姿を消すことなく、真っ直ぐに東地区のレンタルショップへ向かい、そして真っ直ぐと帰ってきている姿が、そこには映っていた。



「ッ!? どういう…こと―――」



綾部は、塩中が今現在写っている映像を抽出し、二つ並べる。一つは、『緑黄座』で寺地と対立している爆弾魔の“塩中”。そしてもう一つは、東地区と南地区のちょうど堺にある交差点を渡り、大通り沿いの歩道を歩く“塩中”。



「優希が―――二人?」



綾部は、目の前の映像に呆然と視線を向けるしかなかった。表示される時間は二つの映像とも同時刻。『SSQ』を作ったり、監視カメラの映像をハッキングする綾部でさえ、この映像の時刻表示がバグってないかとか思ってしまう。


しかし綾部は自分の作ったモノに絶対の自信があった。考えると出てくるのは疑問ばかりだったので思考を切り替える。



(もしかして―――)



綾部は、一つの可能性に辿り着く。しかし、綾部の思考は途端に途切れる。それは、背後の鉄扉が突如開け放たれたからだ。


そこに立っていたのは、赤黒いペンキの入ったバケツの中身を思い切りひっかけられたように染まる制服を着た少女だった。


顔や首、腕や足にこびり付いていた血痕は綺麗に拭き取られていた。少女は眼鏡を掛け直して



「寺地が今いる場所を教えろ」



亜美は、重たく呟く。



「亜美たん…今の状況―――」



「分かってる。全部下にいる奴らに聴いた」



「…南地区、ホワイトランドの隣にある廃墟『緑黄座』。でも、今からじゃもう間に合わないよ…」



聞き終わった途端、亜美の姿はそこにはなかった。綾部の目を覆うゴーグルのレンズには、監視カメラの映像が流れていた。それは、亜美が『LU LA LA』から飛び出し、高速で走る姿だった。


それはもはや、人間とは思えない。そう、まるで―――機械のようなスピードだった。



    32


(11月28日 17:30)



「大正解」



パチパチ、と“塩中”は馬鹿にするように両手を鳴らす。寺地の予測はあたっていた。目の前にいる少女。寺地の知る、塩中 優希とは別人だった。



「自己紹介はしてもらえねえの?」



寺地が口元を引き伸ばしつつ、しかし警戒を解かない鋭い視線を“塩中”に浴びせる。



「そうだな…必要、ねえだろ?」



“塩中”の目付きが変わる。蛇のような鋭い視線を向けてくる塩中は、いきなり腰に提げた巾着袋から二つのカプセルを取り出し、寺地の側へ放ってくる。



「や…ばッ!!」



その二つのカプセルは、閃光と同時に激しい爆音を鳴り響かせ、そこら一帯の座り心地の悪そうな客席を丸ごと吹き飛ばす。


間一髪。寺地は段々となっていた客席を転がるように降りて下の方の客席の影に素早く身を隠す事で爆発からは逃れる。この爆発の規模からして、設置されていた時限爆弾とは比べ物にならないほど小さなの威力。手榴弾よりも弱かった。



(アイツの持つ爆弾、見たところ手榴弾のように安全ピンを外す仕草も、何かの起爆スイッチを押す素振りも見せなかった。ってことは、地面に着弾した時に中身の何かに衝撃を与えて爆発を引き起こしているのか? いや、それならあんな巾着なんかにいくつも乱雑に入れといたらそれこそ自爆に繋がっちまう)



寺地が思考を巡らせる。カツ、カツと“塩中”の足音が背後から近寄ってくるのがわかる。


寺地は、四つん這いになって客席の影を移動する。



「馬鹿じゃねえの? 今更こんな狭い部屋の中逃げたって無駄だっつの」



“塩中”は巾着から一つのカプセルを取り出し、“それを強く握ってから”寺地の隠れている椅子の影へ放る。


寺地はその素振りを見逃さなかった。椅子の影から素早く飛び出て、階段をさらに下がる。爆風が寺地の背中を押し、少しだけ足取りをよろめかせた。


寺地は客席の背に掴まり、なんとか転倒を免れる。



「無様だな。一組織の親玉でありながら、俺みたいな女から逃げ惑うことしかできないなんて」



「フン。言ってくれるじゃねえの」



寺地は、ポケットから球を取り出し、床へ叩きつける。すると、モクモクと白く透明度0の煙が瞬く間に劇場内を覆い尽くす。



「ッチ!!」



“塩中”は、自分の横を通り過ぎていく足音と、背後から出入口の扉が開閉する音を聞き逃さなかった。



「逃げられたか…」



“塩中”は気だるそうに呟くと、一瞬差し込んだ光を頼りに、出入口へと向かった。



    33


(11月28日 17:40)


亜美を拠点まで背負ってきたのは塩中。そして先程まで亜美を看病していたのは塩中だった。今現在、塩中以外の『ルーレット』の面々、寺地や喜市達が第二拠点を守るタメ、爆弾魔に護身具だけで挑んでいると亜美は聞いた。


そして、亜美は今やるべきことを考えた。亜美は、寺地達に対し、『邪魔になるようならすぐに切り捨てる』と啖呵を切った。



(これじゃ、私自身が粗大ゴミじゃない)



亜美は、歯を食いしばりながら、駆ける。常人では有り得ない速度で走る亜美は、軽く通常運転の原付バイクを追い越すほどのスピードだった。


しかし、そんな少女がいても、陸上選手にスカウトしたり、写メを撮ったりする人間は、一人もいなかった。


それは亜美特有の体質によるものだった。『見ようという意志を持ってしっかりと視認しなければ、流れ目で亜美を認識することは出来ない』というモノだった。


亜美の目には、数十メートル先にホワイトランドが見えていた。



「あそこだな」



化物と呼ばれた少女が、猛スピードで近づく。『ルーレット』に加勢するタメに。爆弾魔を抹消するタメに。



    34


(11月28日 17:40)



「お前らは先に帰れ」



寺地は、『緑黄座』の瓦礫になった正面玄関で叫ぶ。それは、この内部のどこかに身を潜めているだろう『ルーレット』の仲間達へ向けた言葉だった。


返事はない。ということは、皆はそれを黙認したということだろう。寺地はポケットへ手をしのばせる。そこには、金属製の硬い物があった。



(俺の予想が当たっていれば生きれる。外れてれば死ぬ。ただそれだけの事なのによ)



ドンッ!! と01シアターの扉が開け放たれる。それと同時に、内部から白い煙がモクモクと立ち込めてくるが、正面玄関は大破しているため、煙はすぐさま外へと流れ出る。



「手間ァ取らせんじゃねえっての」



煙を背に出てきたのは、もちろん“塩中”だ。肩に付いた細かい瓦礫を払う。



「こっからは本格的に俺が相手だ」



「…」



“塩中”は、寺地の威勢から、周りを少しだけ見渡す。何が分かったのかは分からないが、“塩中”は、深いため息を一つ吐く。



「仲間は逃がしたってか。ったく報酬が減るじゃねえか」



「フン。ざまあ見やがれってんだ」



「ッチ。まあいい。お前の首を持って帰ればそれなりのモンは貰えるだろうよ」



“塩中”は巾着に手を忍ばせる。それを見計らって、寺地もポケットに手を入れる。



「あれ? 拳銃でも持ってるの? 『ルーレット』は自分の身を守ったり逃げる事だけに特化してるって聞いたけど」



「銃なんざ生まれてこの方使ったことねえっての」



「そっか。ま、どうでもいいけど」



“塩中”は無情にカプセルを取り出し、そして投げて来る。


その時だった。


ドッ!! とカプセルは爆発する。“空中で”。


爆風は“塩中”と寺地の両方に押し寄せ、二人が後押しされて数歩後ろへ下がる。



「なんだ!? 何が起きた…」



“塩中”が慌てる。それは、もちろん予測していた場所よりも手前で爆弾が爆発したことに対するものだ。


バヂヂヂヂ!! と、何かが鳴り響く。それは、寺地の右手から迸った閃光から鳴ったモノだ。


別に寺地は、電気を操ることが出来たりはしない。『超特異体質』の絶対音感以外は、ただの常人なのだ。その手には、全長20cmほどの黒い長方形の物体が握られていた。その先端に付いている、1cmほどの二つの金属角から、純白の電気が迸っていた。



「スタンガン…ッ!!」



“塩中”は犬歯をむき出しにして、寺地を睨む。しかし寺地はもはや勝ち誇ったように口元を引き伸ばして自慢気にそのスタンガンを弄ぶように電気を放電させる。



「しかもただのスタンガンじゃねえ。ちょいとウチのちっこいのに改良してもらってな。ここのストッパーを外して放電スイッチを押すと」



寺地は、スタンガンを壁へ向け、それを持つ手だけで側面に付いたスイッチを上げ、そしてボタンを押す。すると、ガヂヂヂッ!! と音を立て、まるで鞭のように曲線をいくつも描き、それでも狙った場所に眩い電撃が着弾する。


すると、鉄製の壁に、いくつもの糸のような電気が迸る。


それを見て、“塩中”の頬に冷や汗が浮かぶのを見る。



(ビンゴ!!)



寺地は心の中でガッツポーズを決め、次にそのスタンガンを“塩中”へと向ける。



「お前のその爆弾、投げる寸前に手で握って圧力を掛ける事によって内部に熱を与えて起爆してるんだろ?」



「…ッ」



“塩中”は更に表情を歪ませる。寺地を睨みつけ、犬歯を更に剥き出す。



「って事は話は簡単だ。コイツでお前の爆弾に急激に熱を与えて着弾する前に空中誘爆させちまえばいい」



“塩中”は、巾着から爆弾を出さない。いや、出せない。もし取り出したところであのスタンガンを食らったら、それこそ自爆してしまう。



「その巾着、断熱素材で出来てるんだろ? なら容易にそっから出さないこったな。お前も自分の武器で死にたくはねえだろ?」



さて、と。と、寺地はジリジリとスタンガンを構えながら“塩中”に近寄る。



「クソが」



“塩中”は吐き捨てるが、その表情はまるで何かを切り替えたように余裕だった。


ダンッ!! と“塩中”は床を思い切り蹴飛ばし、寺地の眼前まで迫る。そこで、硬く握り締められた“塩中”の左拳が寺地の顔面に迫る。寺地は咄嗟にそれを右手の手刀で受け流す。



「が、はッ!!」



しかし、本命はそれではなかった。寺地の顔面に向かった左手で視界を遮られた、今寺地の鳩尾に深々と突き刺さっている右拳。寺地は、まるで肺の中の酸素を全て吐き出してしまったかのような苦しみと、胃袋を抉られたような激痛が、体中を駆け巡る。


その拳は、まるで普通の女子高生では考えられないほど硬く、そして重かった。



(なんだコイツ…人間じゃねえ!!)



寺地は倒れ込みそうになる意識を必死に抑え、右足で思い切り“塩中”の左足を払う。そこで、寺地は左手に持つスタンガンを、よろける“塩中”の腹に当てようと左手を伸ばすが、“塩中”は寺地の左手首を取り、捻ろうとする。が、寺地がそれを許さなかった。


すぐさま左手を引き、体制を立て直すべく後ろへバックステップする。


“塩中”はそれを追撃するように身体を一回転させ、その回転に任せて右足を寺地の左コメカミに叩きつけようとする。


しかし寺地はすぐさまその場にしゃがみ、スタンガンのストッパーを外す。



「パンツ丸見えだぞ」



「欲情しちゃった?」



“塩中”の右足は空中で停止し、しゃがんだ寺地の頭上へとカカトを振り下ろすが、それも外れる。寺地が転がるように回避した。


そこで寺地は驚愕した。今まで寺地がいた場所の床が、半径10cm程度のクレーターになっているのだ。それは紛れも無く“塩中”のカカトが砕いたモノだった。



「ったくちょこまかと…。ゴキブリかお前は」



「Gよりタチが悪いのは確かなんだがな」



寺地はスタンガンのスイッチを押す。ヂヂヂヂ!! とスタンガンの先端から純白の電撃が鞭のように波形を形作る曲線を描き、“塩中”へと向かう。


が、それは“塩中”が蹴り上げた瓦礫によって遮断されてしまう。


バヂヂッ!! と糸のような電気を帯びて瓦礫は数メートル横へと飛ぶ。



(どうなってんだ…? 常人の体力、しかも女子高生の筋力とは思えねえ。なんなんだ、コイツは!!)



寺地は、背後の壁に手を当てながら立ち上がる。



「ほら、まだ終わっちゃいねえぜ」



“塩中”はその拳をまるで石のように硬く握り締め、寺地の顔の真正面から突っ込んでくる。


ゴンッ!! と鈍い音を立てる。しかしそれは寺地の顔面にヒットした音ではない。寺地がさっきまで背中をあずけていた壁が、まるで粘土を思い切り殴ったようなクレーターと亀裂がはしる。



「なんなんだテメェは。化物か?」



「フン。ま、普通の人間じゃねえって事だけ言っとくわ」



(チクショウ、参ったぜ。ただの爆弾魔と侮ったが、超人相手にスタンガン一個で立ち向かうなんざ自殺行為だ)



寺地の額から汗が一筋垂れる。とても焦っているのが本人でも分かった。



(俺としたことが、バッグは01シアター内に置いてきちまった…。手元にあるのはこのスタンガン一つ。ッチ。逆転出来たと思ったんだがな…また覆されちまった…)



「これでおーしまい」



“塩中”は勢い良く、大きく踏み込む。硬く重い、女子高生の平均を、人間の平均を超えた鉛のような拳を寺地へ叩きつけるタメに。



「ち、くしょう!!」



寺地は、手元のスタンガンの存在を忘れ、右手を強く握り締め、クロスカウンターを狙うべく、拳を振りかぶる。


しかし、“塩中”の拳は寺地の顔面へ向かう事はなかった。すぐさま拳を引き、寺地の視界から消える。寺地の拳は空を裂き、むなしく威力が減る。


次の瞬間、寺地の左手に衝撃が走る。それは痛みではない。今まで握っていた物がスルリと抜け落ちたような、違和感のある感覚。



「やられたッ!!」



寺地は、拳の勢いに引かれて前方へ数歩よろめく。しかし足を無理やりに止め、その場で強引に背後へ振り返る。


そこには、黒い長方形の物体を片手に、勝ち誇った笑みを浮かべる“塩中”の姿。瞬間、バキ、ガシャンッ!! と嫌な音を立て、その長方形の物体を握りつぶす“塩中”が目に映った。


黒い破片がバラバラと床へ舞う。無残に。



「形勢逆転って奴ぅ?」



“塩中”は、すぐさま巾着へ手を突っ込む。



「もう少し楽しませてくれよ」



カプセルを取り出し、放る。カプセルが宙を舞う。圧力をかけられ、内部で摩擦が起き、その熱で起爆する、全てを吹き飛ばす球体が、寺地へと近づく。


その時だった。


何かが、“塩中”と寺地の間を高速で過ぎった。


それは、宙を舞っていたカプセルを正確に射貫き、そのまま壁へと突き刺さる。カプセルは壁に着弾すると同時に爆破し、飛んできた何かと共に朽ち果てる。



「ッ!? …く、クゥゥゥゥウウウウ!!!」



“塩中”は、犬歯を剥き出しにし、ギリギリと歯を軋ませ、何かが飛んできた方へ、威嚇する猛獣よりも鋭い目を向ける。


そこには、血にまみれた制服を着た少女が立っていた。『緑黄座』の粉砕されたガラスの向こうから、ザッ、ザッ、とガラスの破片を踏みにじりながら寄ってくる少女。


“塩中”は彼女を知っている。



「水城…亜美ィ!!」



「なんだよ、なんだよ。どういう状況なの、これ?」



亜美が頭を掻きながら『緑黄座』の中へと入ってくる。ジリ、ジリ、とまるで磁石の同極を近づけられているかのような圧迫感に覆われる。



「こっち来んなッ!!」



“塩中”は、巾着からカプセルを素早く取り出し、亜美に向かって勢い良く投げつけた。



しかしそれは、亜美と“塩中”の間の空中で爆発してしまう。



「なん…でッ!?」



“塩中”はそれに疑問を抱いたが、即時に解答へと移る。“塩中”が目をやったのは数メートル横にいる寺地。“その手には、先程のスタンガンが握られていた”。



「テメェ、二つも持ってやがったのか!!」



“塩中”の余裕だった笑みが豹変する。険しく歪んでいく。



「残念でした。俺は最初からコイツ一つしか持ってねえよ。お前がさっき壊したそれ、“ただのトランシーバー”だ。本部と連絡が取れなくなっちまったからもう使い物にならねえし、いいんだけどな」



寺地は、片手に持つスタンガンをぷらぷらと“塩中”に見せつける。



「ッフ…」



“塩中”は険しい表情を崩さなかったが、何かを思い立ったかのように、少しだけ、ほんの少しだけその表情が緩んだのを、寺地は見逃さなかった。



「そんじゃあ、これならどうだよォオ!!」



“塩中”は、片手だけでカプセルを三つ取り出し、その全てに圧力を加えつつ、寺地へと放った。



ヂヂヂヂヂヂッ!! とスタンガンが鞭のように曲線をいくつも描き、二つのカプセルを誘爆させる。しかし、電撃の外れた一つのカプセルが、二つの爆風に後押しされ、加速して寺地へ向かってきた。



「しまっ…ッ!!」



しかし、そのカプセルは寺地へと着弾しなかった。パンッ!! という乾いた音が鳴り響き、カプセルは思いもよらぬ方向へと弾かれ、寺地の斜め後ろの壁に着弾し、爆発した。



「なんだよ…なんだってんだ!! さっきから!!」



寺地は、音が聞こえた方へ視線をやると、ハンドガンを両手で構えて銃口をこちらへ向けている喜市の姿があった。



「私は寺地さんのグループです。護衛くらいさせてください」



それは、『ルーレット』の護身具の一つだった。装填されているのはゴム弾だが、当たればそれなりの激痛は与えられる。



「白柳と篠崎はどうした?」



「二人は無関係ですからね。説得して帰ってもらいましたよ」



“塩中”の三方向を抑える『ルーレット』。



「さて。三対一。卑怯だなんだとか吠えるようなクチか?」



一歩、三人が“塩中”に近づく。



「裏切り者は粛清ってヤツ?」



ジャキ、と亜美の両手が光沢を帯びた日本刀の刃へと変化し、まるで一刻も早く血を得ようとする。



「安心しろ。このスタンガンの電流は低めにしてある。気絶はするだろうが死には至らねえだろうさ」



寺地がストッパーをしながらバチチ、とスタンガンの電気をチラつかせる。



「できれば女性に銃は向けたくないのですが…」



それでも銃口を下ろさない喜市。


“塩中”は三人の顔を順番に見る。


スタンガンを鳴らし、自分の意識を奪おうとする寺地。


銃口を向け、決して外さない距離に近づく喜市。


伸縮自在の刃物を弄ぶように見せつけ、歩く兵器と言われた亜美。



「フン、そんなんで勝ったつもり?」



言ったのは“塩中”。無理やり笑みを形成するが、彼女の肌を滴る冷や汗が、迫力を削る。


“塩中”は巾着に手を突っ込んだ。寺地は警戒してストッパーを外す。



「この中で爆発を起こしたら、どうなると思う?」



“塩中”の手は巾着から引き抜かれない。“塩中”が腰に付ける巾着は、確かに耐熱素材で出来ている。しかし、その中で爆弾を起爆することが出来ないワケではない。


圧力を加えれば、もちろんカプセルは爆発する。



「自爆するつもりか?」



「だったらどうする?」



「させない」



言ったのは亜美。日本刀に変化した右手を振り上げ、“塩中”の腕を切り落とすタメに、振り下ろす。


ガンッ!!! と、“まるで、金属と金属が激しくぶつかるような音が響いた”。



「ッ!?」



驚愕の表情を露わにしたのは、意外にも亜美だった。亜美の日本刀になった右手は、確かに“塩中”の肩へ、垂直に当たった。


しかし、“塩中”の肩は抉られ、腕が切り落とされる事はなかった。鈍く重たい音が鳴り、“塩中”の肩が、亜美の刃物を受け止めたのだ。



「フフ、びっくりした?」



“塩中”が、驚愕を露わにした亜美を馬鹿にするように笑う。


別に、“塩中”の肩に特殊なサポーターが取り付けられていたりしたワケではない。“生身の”肌が、亜美の斬撃を受け、それを受け止めたのだ。



「変だね。アンタとは私と同じニオイを感じる」



亜美は、“塩中”の肩から刃をどけながら、そんな事を言う。よく見ると、“塩中”の着る白いパーカーの亜美が切りかかった肩の部分は切り裂け、中の肌が見えていた。そこには、確かにパックリと割れた肩があり、その中からは少量の血が溢れていた。


しかしそこに見えるのは肉でも骨でもなく、無機質な、銀色の個体だった。


それがまるで“塩中”の中身と言わんばかりに、そこに存在していた。



「痛ゥ…」



“塩中”は、切られた右腕をダラリとさせ、その傷口を左手で抑える。



「アナタ、ロボットだったんですか?」



喜市が、その銃口を下ろさずに慎重に言葉を選びながら問う。



「それは違うぞ」



答えたのは寺地。この中で唯一“塩中”の正体を知る者。その彼が、重たい口を開く。



「コイツはウチの、“塩中 優希の妹だ”」



その場にいた二人が驚愕する。数秒の沈黙。その間、亜美は気づいた。先程自らの手で傷を付けた“塩中”の肩が、みるみると再生していく。


生々しくパックリと開いた傷口は、まるでその縁同士がお互いを引き合い、混ざり合うように粘液を帯びてふさがっていく。


チチチチ、とまるで小さな沸騰でも起きているかのような音を立ててその傷を再生していく“塩中”。


そして、それが綺麗に閉じきったのを合図に、“塩中”は飛び込んでくる。


その重く硬い拳を、亜美の腹へと突き立てるタメに。


ガァァァン!! と、まるで鐘を打つような轟音が響きわたった。それは、亜美の左手が、丸く平べったい鉄板へと変わり、盾の役割を果たしたからだ。



「私が変化出来るのは刃物だけだと思った?」



ニヤリと、亜美は笑う。そして右手を全長3mほどの鎖に変え、伸ばされた“塩中”の右腕をまるで蛇のように巻きつけていく。“塩中”は素早くをの鎖を掴み、勢い良く自分の元へ引きつける。


引っ張られるようにして亜美は前のめりになるが、亜美の左手が刃渡り30cmほどの出刃包丁に変わり、引かれる勢いに乗って“塩中”の腹へと突き立てようとする。


しかし、再びガンッ!! という金属と金属がぶつかる音が響き、“塩中”の身体は亜美の刃の侵入を拒絶する。


だが傷つけられないワケではない。先程の反応から見て、痛覚は通っているものと思われる。



「くっ…!!」



再び、腹を刺された事による痛みの表情が、“塩中”の顔に現れる。



「ほらよッ!!」



“塩中”は、身体をひねり、肩越しから亜美の鎖を引く形で、まるで背負投げでもするかのように亜美を頭上へと振り上げる。


しかし亜美は鎖を次々と生み出し、長さを引き伸ばして、“塩中”の前方10mの位置へ着地する。



「こんな事も出来るんだよ」



亜美は、その右手の鎖を急激に、巻き取るように縮めていく。それは腕の中に鎖が吸い込まれていくように思えた。



「ッ!?」



抗う術もなかった。“塩中”は引かれるがままに亜美の元まで引き寄せられ、その勢いに任せて再び鎖が力が解かれたように引き伸ばされ、亜美の後方の壁に激突する。


ダンッ!! と壁に叩きつけられた“塩中”は一瞬という長い時間を掛けて床に落ちる。


鎖は全て亜美の腕に吸い取られた所を見ると、“塩中”を捕らえる物はなくなったと思える。


寺地と喜市は、何もできずにただ立っている事しかできなかった。目の前で行われているのは、もはや人間の成す戦いではない。


異常と異常がぶつかり合う、全くの別世界。


寺地の場合、スタンガンによる電撃を放ったところで、亜美に避雷してしまったら元も子もない。よって全く手が出せずにいた。


喜市の場合は、ゴム弾を放ったところで亜美の斬撃をも凌ぐ“塩中”にどの程度のダメージを与えられるか知れたことである。


そんな寺地は目にした。壁に叩きつけられ、そのまま床に倒れ込む“塩中”の腰に付いた巾着が、“塩中”の下敷きになるところを。


あの中に入っている爆弾は、握る圧力によって内部に熱を加えて起爆する物。彼女の付ける巾着はあくまで耐熱素材であって、耐圧素材にはなっていない。


つまり、外側から強引に衝撃を与えれば、内部誘爆は免れないという結論に至る。


全ての音が消えた。


一瞬の出来事だった。


赤い光が見えたと思ったら、それを包み、食い潰すように周りの瓦礫を舞い上げて黒煙を立てた。


寺地と喜市はそれぞれ床に伏せる。


残りの爆弾が少なかったのか、爆発はそれほど大きくはなかった。しかし、ハンドボールほどの大きさの瓦礫が普通に地面とほぼ並行して飛来するほどの爆風だ。


その中心に生身の人間がいれば、どうなるかは一目瞭然である。


しかし、その場の全員が想像するような惨劇には至らなかった。


亜美の目には、ハンドボール程の瓦礫に埋もれる“塩中”の姿を、生死を確認するように見下しながら眺めていた。


しかし、血液は一切見えなかった。先程亜美が切りつけた時同様、開けた傷口からは光沢を帯びた、金属にしか見えない“骨組み”が姿を見せるが、みるみるうちに皮膚同士が引き寄せ合い、結合して傷が癒えていく。


亜美の目から見ても、とても人間とは思えなかった。それこそ先程喜市の口から発せられた、“ロボット”という言葉がピッタリだと思った。


金属製のロボットに、人間の皮膚を塗装した、最新鋭のロボットのような、無機質さを出している。


常人なら即死だったはずの爆発が、必然すらも拒む形で“塩中”を救う。


寺地は、床からゆっくりと立ち上がり、そのまま亜美の傍らへと寄る。



「死んで…はいないみたいだな」



「そのようだね」



「ぅ…く、」



瓦礫の隙間から聞こえる“塩中”の呻き声。同時に動く“塩中”の身体。それは、自力で身体の上に乗る瓦礫を背中で押しのけて立ち上がろうとする。



「…俺はこんな所でやられるわけにはいかないんだよォ…」



「それは、姉貴のタメか?」



寺地が徐にそんなことを口走った。亜美の視線が、自然と寺地へと向けられる。



「違うッ!!」



“塩中”が怒号を発する。カッ!! と、寺地を威嚇するように。それでいて、何かを隠すように。



「俺は、お前らを殺すために来たんだ!!」



それはまるで、子供が自分の意見を強く主張する時のように、何の根拠もない言葉をただひたすら大声で叫ぶような感じだった。



「じゃあ何で最初から俺らを皆殺しにしなかったんだ?」



寺地はもはや“塩中”の言葉を聞かない。自分の思いを、何故か“塩中”が直視しようとしない答えを紡ぐ。



「ウチの情報網によると、お前が仕掛けた他の娯楽施設の爆弾はホワイトランドに仕掛けられたと言われていた爆弾の比にならない程の量だったらしいじゃねえか。なぜ、ここだけ減らした? なぜ、本当の数を知らせた? なぜ、俺達もろとも爆破しちまおうと思わなかった?」



「く…ゥ!!」



「何で答えられねえのかくらい、分かってるはずだ」



寺地は、何も反論できない“塩中”に対し、更にその気持ちを決定づける。



「姉貴を、塩中 優希を、殺したくなかったんだろ?」



“塩中”は両腕を突き、俯いて完璧に言葉を失う。



「だから俺らが処理しやすく、必要最低限の数の爆弾を仕掛け、そして正しい数をホワイトランド側へ知らせた。ここに集まった俺らをまとめて爆破しなかったのは、もしもそこに塩中がいたら、と考えたからだ。俺らの前に現れた時も同様、館内に散らばった俺らを探すフリをして、本当に塩中が来ていないかどうか確かめるタメに隅々回ってたんじゃないか?」



「―――う」



呻くように、絞り出すように“塩中”の口から出る言葉。



「なんだ?」



「違うっつってんだよ!! 俺はそんな善人じゃない!! そんな綺麗な思考を持ったマトモな人間じゃねえんだよッ!!」



ドンッ!! と音がする。しかしそれは爆発音ではなく、“塩中”が勢い良く瓦礫を押しのけて立ち上がり、その瓦礫達が互いにぶつかり合って鳴り響いた轟音だった。


振り乱れた黒い長髪の間から覗く“塩中”の肌は、本当に白く、傷一つ付いていなかった。今まで瓦礫の下敷きになっていたとは思えないほど、とても美しかった。


しかし彼女の着る衣類は所々破れていた。それがより一層彼女が無傷なのに疑問を抱かせる。



「姉貴を殺したくないから…助けたいから俺がお前らを一掃するのを惜しんだァ? ッハハ、笑わせんじゃねえよ。そんなモン、俺がお前ら一人一人を甚振って殺すタメに決まってんじゃねえか」



「そうやってお前は今まで自分に嘘をついて生きてきたんだな。哀れなヤツだ」



「ふざっけんな!! テメェに俺の何がわかるってんだよ!!」



“塩中”はその細い、少し力を入れて掴んだだけで折れてしまいそうな脚で、そばに転がっていたバスケットボール程の大きさの瓦礫を思い切り踏み潰す。


文字通り、瓦礫は粉砕された。



「見ろよこの力。こんなのが人間だと思うか? そんな哀れな悲劇のヒロインに見えんのかよ!? アァッ!?」



“塩中”は手を大きく振り、怒号と共に訴える。それは寺地に向けられたものと、その隣に佇む亜美に向けられたものだった。



「アンタなんかと一緒にしないでくれるかな?」



亜美はその右手をウネウネと動く生き物のように変化させ、長い刃物へと変えると、近くに転がっていた全長一メートルの瓦礫を真っ二つに切り裂いて見せる。



「くだらねえ。だからなんだってんだ。ただ人にはない特別な力を持っちまったってだけで自分を化け物呼ばわりすんじゃねえよ。大体、そんな面と向かって自分の気持ちをぶつけられるような奴を、俺は化け物とは思えねえよ」



寺地は片手に握るスタンガンをプラプラと見せる。次の瞬間、寺地はそれを足元へ叩きつけた。ガシャンッ! と音を立てて、スタンガンはバラバラに砕ける。


そして、真っ直ぐ“塩中”を見据える。



「そこまで言うんならかかって来いよ。テメェが化け物なら、俺なんて一捻りだよなァ?」



寺地は、片手をヒラヒラと見せ、“塩中”を挑発する。



「―――ッ」



“塩中”の表情が変わる。獰猛で、凶悪な表情に。亜美はその表情を知っている。いつも自分が露わにしているモノだった。



「ッハ!! 上っ等じゃねェか…」



グン、と“塩中”は腰を曲げて低く身構えた。



「死ね」



ダン、と足元の瓦礫を踏み潰して駆ける。


亜美が両手を日本刀の刃へ変えて身構える。しかし寺地はそれを片手で制した。行動を制したのは、亜美だけではなく、背後の床に伏せながら“塩中”に銃口を向ける喜市にも向けられていた。


真っ直ぐ、寺地は“塩中”を睨み付ける。


勢いよく“塩中”は寺地の懐へと飛び込んできた。


その硬く重い拳が、まるで弾丸のように放たれる。それは低い位置から真上へと放たれるアッパーカットだった。


ビュンッ、と、風斬り音が、“寺地の顔面スレスレで聞こえる”。


“塩中”の拳は外れた。重たいその拳は、何もない空気を押しのけるように裂いた。


寺地が、拳の当たる寸前で一歩後ろへ下がったのだ。たったそれだけの行為で回避されてしまう。そこで寺地は、眼前に伸びる“塩中”の腕を右手で力強く掴む。



「これがテメェの限界だ化け物(ニンゲン)。お前はただの男子高校生一人殴れない、“か弱い女子だったって事だよ”」



“塩中”の思考を、完全に打破する。寺地は右手に掴む、その細い腕を勢いよく下げ、そして強引に“塩中”を地面に捻じ伏せた。



「はい、おしまい。お前の役目は終わりだ“塩中”。これ以上俺らにチョッカイ出すってんなら、ウチの最終兵器(バーサーカー)ちゃんが容赦しねえからそのつもりで」



亜美が隣から鋭い視線を向けてくるが、寺地は知らないふりをして振り返る。



負けた。俺、負けたんだ。


“塩中”は放心というのを久々に体感した気がした。床に倒れ、天井を眺めながら、『ルーレット』達が去って行くのが何となくわかった。


独り。


俺に、何が残った? 任務失敗だ。・・・コロ、される


“塩中”の目が見開かれる。


瞬間、館内に悲鳴が響き渡った。

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