happening
「あーっ!10分おくれ!どーすんだよ」
「自分のせいだろ押し付けんな裕輔。」
今、二人は、待ち合わせの駅前から500mほど離れた場所を、全力で走っていた。
10分遅れた成り行きはこうだ。
朝、十分すぎる時間に起きたくせに、裕輔が服を、紳士風かパンク風にするかでさんざん迷い、紳士風にすると、ダサい格好でいくなと裕聖がパンク風を着せられた結果、遅刻したのだ。
しかし、汗だくで走っていても絵になる男は絵になる。二人は、みちゆく女たちからかなりめだっていた。
「…あ、発見!」
人混みに、長い黒髪を見つけた。鈴音だ。
彼女を見つけたとたん、裕聖の頭に言葉が浮かんだ。
【雑草の中の白き花…】
まさに、それに等しかった。人混みに紛れながらも際立つこの存在感。
(やっぱり、天性のなにかがあるんだな)
真っ白なマンガみたいな清楚ワンピースを着こなして、鈴音は、凛とそこにいた。
「…おそかったね」
「すいません!何せ服に迷ったもので…」
すると、鈴音は、じっと裕聖を見つめ始めた。
「…?えっ…と…?」
言葉に詰まる裕聖。
「かっこいいな、その格好」
裕輔が愕然としている。
「裕輔君みたいなのは見慣れてるんやけど、裕聖君みたいなのは見たことない。自由で、とがってて、強い感じ」
………なんだろう。突っ込みどころが多すぎてわからない。
はじめてダメージジーンズをみたのか。とがってるはわかるが自由がわからない。アーティストは違うのだなあ。自分もだが。
「…裕輔君も年齢のわりには似合うな」
「あ、ありがとうございます!」
「よかったな、辛うじてフォローもらえて」
ゴスッ ヒョイ
「ふん、昨日みたくいくとおもうな」
「なぬ!?やるかー」
「なあ。」
鈴音が遮った。
「電車もう出るで。」
「「あ」」
また、全力で走ったのは言うまでもない。