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07:駐車場までの道程で・・・

営業を終え、廉・瑞穂・夏希・真菜の4人は、帰りもせずに、話に耽っていた。最初は他愛のない内容ばかりだったが、いつしか話題は瑞穂のお弁当の話に。


「でもさ、ホントにびっくりしたのよ!コンビニ弁当ばっかりの瑞穂がお弁当なんて。地震が来るかと思ったわ!!」

「私は火山が噴火するかと・・・」

「お前ら・・・」


夏希はケラケラと笑い、真菜は真顔で瑞穂をからかう。瑞穂は額に青筋を立て、片方の眉を吊り上げた。


「でもさ、まさか瑞穂の居候先が廉くんのお家だったなんて」

「少年のお姉さんと私は高校時代からの友人でな、お互い気心の知れた仲だったし、部屋を貸してくれたってわけだ」

「成る程、それでこの“私生活ダメ人間”を、廉くんが健気に世話してる・・・と」


二人に“ダメ人間”扱いされ、瑞穂は怒りを忘れてうなだれた。


「まぁ家事は慣れてるし、一人分も二人分も変わんないから気にしてませんけど。あ、でも洗濯だけは覚えてもらいました!」

「なぁ少年、洗濯はまとめて洗えば節水にもなると思うんだ。だから私の分も、少年が一緒に洗えば・・・」


さりげなく廉は瑞穂のフォローをしたのに、当の本人が、“ダメ人間”を証明した瞬間だった。


「夏希さん、真菜さん、この人に“恥じらい”という言葉を教えてやって下さい・・・」


廉は切に願った。


「でも、廉くんってすごいわね!デザイナーとしてのセンスは抜群だし、家事はやってくれるし、オマケにお弁当まで・・・瑞穂、アンタが羨ましいわ」

「ホント、羨ましい・・・」

「フフン、生憎少年は私だけで手一杯だ!」

「自慢にしないで下さい!」


冷ややかにツッコむ廉。程なく会話も終了し、夏希と真菜を見送った後、瑞穂は店に施錠して廉と二人で帰る事に。


「瑞穂さん、車はこっちですよ!」


明らかに駐車場とは逆方向ヘ歩き出した瑞穂を廉は呼び止めた。


「いや、しかし・・・世話になってるだけでも厚かましいのに、さすがに車庫まで借りるのは・・・」

「でも、あの駐車場って月極めでしょう!?うちならタダですよ。それに、うちって車庫はあるけど車は無いんですよ。使って下さい!」


言葉を濁した瑞穂だが、廉は笑って説いた。


「ホントにいいのか?」

「全然OK!です。それに・・・」


“それに?”と聞き返そうとした言葉が、喉から出かかって、ふっと消えた。


「俺、なんとなく寂しかったみたいです。独りでご飯食べて、独りでテレビ観て、会話する相手もいなくて・・・昨日、瑞穂さんが居候するって聞いた時には困惑したけど、本当は嬉しかった」


今、自分が思う素直な気持ちを廉は言葉に変える。


「馬鹿馬鹿しいと思うかもしれないけど、瑞穂さんは俺にとって、もう一人の“家族”だと思ってます。だから遠慮しないで下さい!」


言い終えた廉は、照れ臭そうに頭を掻いた。


「・・・ありがとう!」


ただ“彼の姉の友達”ってだけで、半ば強引に“居候”して・・・本当なら嫌がられるのが当たり前。なのに廉は、自分の事を“もう一人の家族”だと言ってくれた。

その心が、瑞穂は嬉しかった。だからこそ、素直な気持ちで“ありがとう”の一言が出て来たのだ。


「あ、でも自分の服は、自分で洗濯して下さいねっ!」

「むぅ・・・ケチ!」





悪戯っ子のような廉の笑みに、ぷぅっと頬を膨らませる瑞穂。

しかし、二人の心は温かい“気持ち”でいっぱいだった・・・

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