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05:廉と学校とお友達

AM8:02


「おはよ〜」

「ういーす!」


廉が教室ヘ入れば、見慣れた友人達が彼を迎える。窓側の最後尾が、廉の席。机にカバンを置きながら、ボケ〜っとするのが彼の朝の日課なのだが、今日は前の席に座っていた長身の男子生徒が、それを許さなかった。


「お前、彼女が出来たのか!?」

「・・・宮部、寝言は寝て言え」


“朝から訳のわからん事を言う奴だ”と、廉は思っていた。しかし、宮部みやべと呼ばれた長身の生徒は、真剣な表情だ。


「お前、昨日スーパーで美女と買い物デートしてただろ!」

「なぜに知ってるんだ?はっ!お前まさか!?」

「そう、俺はあの時「ストーカーか!宮部、悪いが俺は同性愛者じゃないんだ。お前の気持ちには応えられない」」

「ちがーう!!あの時俺も母ちゃんに頼まれてスーパーに来てたんだよ!!」


宮部は叫ぶように否定したが、周りでは


「え、宮部ってそっち系?」

「確かに黒崎君は女性っぽい顔だけど・・・」

「モテないからって、男に走るとは・・・」


哀れ宮部。この日から彼はゲイキャラとして扱われ・・・


「てたまるかーっ!!」

「誰にツッコんでるんだ?まあいい、あれは姉さんの友達だ。彼女ではない」

「どうしてその“お友達”と二人で買い物に来てたんだ?」

「ああ、うちに居候することに・・・なんだ、皆どうした?」


教室にいた男子、そして女子までもが、廉の言葉に硬直。


「え?確か黒崎君ってひとり暮らしだったよ・・・ね?」

「うん」

「って事は、一緒に住んでる・・・」

「まぁそういう事になるな」




ビシィィィッ!!!!




クラスに、亀裂音が走った。


ガシッ!!


「え、お、おい!何す「廉・・・」」


いつの間にか背後にいた別の男子から羽交い締めにされた廉は、まさかの宮部に言葉を遮られ、


「逝ってこい!」

「ちょ、待っ・・・」










「黒崎、随分ボロボロだなぁ」

「・・・・理不尽だ・・・・」


担任の中年男性教師(坂崎)は、見た目ボロ雑巾と化した廉に目を向けたが、クラス中の男子生徒全員の殺気を含んだ視線に、追及を断念した。










「で、実際はどうなんだ?」

「何が?」

「おいおい、今更とぼけるなって。あれだけの美人、そうそういないって!」


午前中の授業も終わり、宮部を含む男子三人と昼食を摂っていた廉。力説する宮部に適当に相槌を打ちながら“確かに”とは思うが、昨夜の夕飯、そして今朝の食事を思い出し・・・


「もう食べないのか?」


弁当に蓋をした。


「食べたいならやるけど・・・」


廉の対面に座る日焼けた肌の学生、相馬が尋ねた。


「なら貰う。なんせパン一個だけだと足んねぇかんな」

「早弁するからだろ?」


と、廉から見て右側に座る、相馬とは相対する白肌の学生、高上たかがみは皮肉る。


「確かに瑞穂さんは美人だと思うけど・・・」

「「「けど?」」」

「あの食欲を目にしたら・・・うぇ、胃が・・・」


げんなりとする廉。


「“よく食べる美人”・・・健康的でいいじゃないか!」

「あれは“よく食べる”という範囲を超えている。一瞬だけど、俺まで喰われると思った」

「性的な意味で?」

「ぶっ飛ばすぞ宮部」


“この変態め”と、冷笑を浮かべた廉に、宮部は軽い恐怖を覚えた。










午後の授業は、最初から水泳だ。ここで色めき立つのは、男子学生のみ。一方の女子生徒は、冷ややかに男子を敬遠していた。


本来なら、例年の今頃は持久走大会に向けてのマラソンがメインとなっているのだが、猛暑続く異常気象に、学校側がプール授業を延長したのだ。


「俺、プールの授業が1番好きだ!!」

「「変態」」


どうしてこんな奴(宮部)と“友達”なんだろうと、廉・相馬・高上は同じ気持ちになった。




柔軟を済ませ、少し痛い位に勢いのあるシャワーを浴びて、プールヘ入水する生徒達。例外なく廉達も入水し、早速バカ(宮部)が相馬(水泳部)に自由形で勝負を挑んでいた。

高上は同じクラスの彼女に呼ばれ、仲良く遊んでいる。必然的にひとり残された廉は、プカプカとのんびり漂っていて・・・


バシャッ!!!


「ぷぁっ?!」


誰かに水をかけられ、塩素たっぷりの水を飲んでしまった。


「・・・ッケホ、ゴホゴホ!?」

「何をぼーっとしてんの?」

「ッホ、いきなり何すんだよ佐原さわら!」


ムせる廉は、苛立ち混じりにひとりの女子に睨みを返す。


「腑抜けた顔してた廉が悪いのよ」


と、佐原は悪びれもせずに腕を組む。心なしか、胸を強調しているようにも見える仕草だが、


「アホかお前!ったく・・・」


と、廉は相馬達の方ヘと泳いでいってしまった。




「あららーだね・・・さき

「うわっ!?もう、びっくりさせないでよ詩織しおり!!!」


男子連中の方ヘ行ってしまった廉を見つめていた佐原(咲)の背後から声をかけた女子生徒は、やれやれといった感じだ。

東金詩織とうがね・しおりという名のこの女子は、佐原との付き合いが幼稚園から現在まで一緒という古馴染み。当然、


「ま、月島は鈍感みたいだし、苦労するね〜」

「なっ、なっ!?」


咲が廉に片思いしてる事も、把握済みである。


「あんた、バレてないと思ってんの?クラスのみんな知ってるわよ」

「うぞ・・・」「まぁ月島が気付いてないだけまだ救われてるわね。でも、油断は禁物!」


ビシッと人差し指を突き付けた東金。指差す方角には、宮部をプールに沈めようと奮起する廉の姿。


「バカ(宮部)が言ってたでしょ、月島が年上美人と買い物デートしてたって。おそらくデマじゃないと思うわ」

「り、理由は?」

「ま、勘だけどね。でもま、アタシの勘はよく当たるから」


フフン、と鼻を鳴らす東金に対し、咲は額に青筋を浮かべる。


「なんにせよ、遅かれ早かれ気持ちは伝えるべきね!!」

「ど、どうやって?」

「それくらい自分で考えなさい。ほら、集合掛かってる!」


困惑を浮かべながら、咲はとりあえず他の女子達の元ヘ向かうのだった。

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