表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/23

04:朝の一幕

「瑞穂さ〜ん、朝ですよ〜!」


・・・・・・・・・


「瑞穂さ〜ん!」


・・・・・・


「会社じゃないんですか〜?」


・・・


「参ったな、朝ごはん食べてもらいた「おはよう少年!今日はいい朝だな!!ん、どうして顔を逸らす・・・ああ、これか」」


扉を勢いよく開けた瑞穂は、瞬時に顔を背けた廉に疑問を投げかけ、自分の姿を見て納得。


「目の保養になったかね?」

「さ、さっさと着替えて下さいっ!!」


耳まで真っ赤になった廉は、ギクシャクしながらリビングヘ戻って行った。


「ふーむ、少し刺激が強かったかね・・・」


と、下着姿の瑞穂は悪戯っ子の笑みを浮かべた。










着替えを済ませた瑞穂がリビングヘ向かうと、既に二人分の朝食が並び、学生服姿の廉が、ぎこちなく座っていた。


「おや、待っててくれたのか。すまんな」

「い、い・・・・え?」


瑞穂の姿を見た廉は、疑問系で硬直。目の前にいたのは、昨日のラフなTシャツ姿でも、つい先程見てしまった下着姿でもなく、黒スーツにパンツスタイル、赤ぶちメガネのインテリ美女姿だった。


「ん?なにかおかしいか?」

「・・・瑞穂さん?」

「なんだ?ハハーン、さては惚れたな!?」


冗談のつもりだったのだろうが、予想に反して廉は口をパクパクさせていた。


「なんだ、反応がつまらん。それより、朝飯食べていいか?」

「あ、ど、どうぞっ!」


ようやく我に返った廉の返答を聞き、準備された朝食に箸を付ける。


「んん、んまい!!」


感嘆の声を出した瑞穂に対し、安堵の表情を見せた廉だが、昨夜の化け物のような食欲を見せた彼女に、若干の不安を残していた。

というのも、昨夜は歓迎会をかねての焼き肉パーティーをしようと考えた廉は、特売セールで国産牛肉を確保。総重量約2キロと大量に買い占めて“余ったら姉にでも分けてやるか”などと呑気に考えていた。

しかしながら、あの大量の焼き肉は、一夜にして消滅。というのも、あの細身の瑞穂が、まさかの1.5キロを胃の中ヘ。廉とて500グラムを処理したのだが、代償として胸やけを起こした。しかも、食後にプリンを5個食べるという化け物じみた事をやってのけた瑞穂に対し、


“今月は、食費だけでいくら遣うのだろうか”


と、内心不安になっていた。




「ふぅ・・・美味かったが、少し物足らんな」

「と思って、お代わりの準備も出来てます」


昨夜の事を知っているからこその、順応な廉の対応に、瑞穂は口角を少し吊り上げた。


「それじゃ、お言葉に甘えて・・・」


結局、朝食だけで鯵の開きを三枚、味噌汁五杯、ご飯を丼で二杯追加した瑞穂。“朝からよくそんなに食えるな”などと思いながら、野菜ジュースを一気に飲み干す廉。


「ふぅ、ご馳走様。少年、朝から野菜ジュースだけでは体がもたんぞ!」

「いや、昨日の焼き肉で胃がもたれて・・・」

「やれやれ・・・」


呆れ顔の瑞穂だが、むしろ廉の方が、呆れて何も言えなかった。


「おっと、もうこんな時間か・・・そろそろ行くとするかね」

「あ!瑞穂さん、これ・・・」

「ん?」


廉が差し出したのは、丁寧に包まれた四角い箱状の物体。


「お弁当です、足りないかも知れないですが」

「なんと!いやぁ少年はいいお嫁さんになるな!」

「男ですけどね」


嬉々として弁当を受け取る瑞穂。心なしか、足どりも軽やかだ。


「さてと、俺も行かなきゃ」


予め用意してあった指定カバンを手に取り、戸締まりの確認をする廉。そこでふと、瑞穂に視線を向けた。どうやら聞いてみたい事があるみたいだ。


「どうした?」

「そういえば、瑞穂さんのお仕事って?」

「あー・・・言ってなかったか。ん〜そうだな、実際見てもらった方がわかりやすいんだが・・・」


“ふむ”と間を置いて、瑞穂はなぜか、廉の終業時間を聞いてきた。わけも判らずとりあえず時間を教えた廉に、瑞穂はポーチからメモ帳を取り出し、ボールペンで何かを書き始めた。


「これ、私の携帯番号だ。学校が終わったら、電話してくれ。迎えに来るから!」

「はぁ・・・」


イマイチ理解出来ていない廉だが、メモ紙を受け取り支度を終える。


「さて、行こうか?」

「そうですね」




玄関の扉を開ければ、雲一つ無い青空が“今日も暑いぞ!”と、語りかけているようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ