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エピローグ:居候から同棲ヘ

エピローグは、瑞穂視点です。

ジリリリリー!!


「むぅ・・・」


目覚ましのけたたましいアラーム音が部屋中に響き渡り、私の意識も現実ヘと引き揚げられる。


ジリリリリー!!ジリリ(ガチャン)・・・


全く、私がゆったり惰眠を貪っている最中だというのに、不粋な奴(目覚まし)だ。どうせなら、愛しい少年の声で起きたいものだがな・・・


コンコン!


「瑞穂さーん!おはようございまーす!!」


噂をすれば・・・


「うん、おはよう!」

「おはようございます!朝ごはん出来てますよ」

「・・・・・・」

「どうかしました?先にリビング戻ってますね」


さっさとリビングヘ下りていった少年。

今、私の格好は黒の下着のみ。我ながら意外とセクシーな感じだったのだが・・・


「むぅ・・・」


少しムカツク。

なんの態度もそぶりも見せない少年に不満を抱きつつ、私は着替えを始めた。










今日は土曜日、店は休み。ゆったりと朝食を摂った後は、二人でまったりタイム・・・という訳にもいかず、少年は洗濯に掃除をテキパキと熟している。


「よし、終わった!」


先に掃除を済ませ、最後の洗濯物を干し終えた少年が、リビングヘと入ってきた。


「ヒマですね・・・」

「ヒマだな・・・」


ソファで寛ぎながら、ダラける私と少年。ヒマではあるが、どこかへ行こうという気にもなれない。

無駄に時間が過ぎて行く・・・と、思った矢先


「・・・おっ!」

「どうした?」


チラシに目を配っていた少年は、あるチラシを手に取り小さく声を出した。


「いつも行ってるスーパーが、10周年で特別大売り出しですって!」

「ほぉ・・・どれどれ・・・おっ、今日は特に魚が安いな!」


私は肉も好きだが魚も好きだ。刺身・煮付け・焼き物・揚げ物・・・なんでも好物!


「行くか!」

「大丈夫ですか?」

「なにが?」

「・・・いや、口で説明するより体験してもらったほうがいいかな?」

「?」


体験ってなんだ?

まあとにかく、開店まで時間もないし、行くか!!










「・・・うぅ・・・」

「大丈夫ですか?」

「な、なるほど・・・少年の言いたい事がよくわかった・・・」


開店10分前に着いた私達だが、すでに入り口には先客が多数。しかもみんな、運動靴にジャージやトレーナーの、動きやすい格好だ。少年も例に漏れず、上下黒のトレーニングウェア姿。入念に、準備運動までする始末。


「危ないから、後から店に入って来て下さいね!」

「?」


なぜ注意事項?少年の意味する事がわからず、何となく少年の隣にいた私。

少年は少年で、困惑気味に私を見ていたが、隣のオッサンに話しかけられ、開店数分まで話し込んでいた。そして・・・


「おはようございまーす!!」


の声で、勢いよく開かれたドア。そしてなだれ込む客。

まるで障害物競争でもするように、全員が各々の目的地まで猛ダッシュ!気付けば隣にいた少年もいない。捜そうにも、後ろから波のようにぐいぐい押されっぱなしで、自分の力では思うように進めない。

どうにか人込みの少ない場所を発見し、避難。そこは売り出しとはあまり関係のない菓子コーナーだ。


「少年は・・・あ、いた!!」


背伸びして辺りを窺えば、激戦区と化した鮮魚コーナーで奮起する少年を発見。カゴの中には、大きなブリを一尾丸ごとキープ。しかし、他の魚を手にしているが、カゴヘ入れる気配は無い。

と、そこへ人込みを掻き分けてやって来たのは、開店前に少年と話し込んでいたオッサン。

よく見れば、オッサンは肉を渡し、少年は手に持っている魚介類を渡している。物々交換か?


「あ、いた!」


少年は私を見つけると、人の波を摺り抜けて私の元ヘ。


「お待たせしました!結構いい物ゲットです!!」

「ほぉ!いいサイズの鰤だな・・・そういえば、さっきオッサンと交換したのは?」

「黒毛和牛のサーロインブロックです。あの人は小料理屋の大将で、この店の常連さんですよ。鮮魚と精肉って離れてるから、たまにこうやって分担するんですよ!」


ほぉ、なるほどね。


「しかしでかい肉だな・・・は?グラム百円!?」


重量2306グラム。金額2306円・・・つまり1グラム1円。安っ!!


「滅多に無いですよ。普段なら倍以上しますから」


さすが10周年・・・恐るべし。というより、人込みが凄いな。










という事があり、私は初めて人込みで少し酔った。隣でけろっとしてる少年は、心配そうに私を気遣っている。


「ん、もう大丈夫だ!」

「・・・よかったぁ」


本来なら、もう少し少年の看護に甘えたいのだが、まだスーパーの外のベンチに座っている。あまり長居も不要だし、そろそろ家に帰るかね。










ま、とりあえず一度家に帰り、今日買った食品を冷蔵庫ヘ。そして少年は、キッチン下の棚から大きな出刃包丁を取り出した。


「お、おい、大丈夫かね?」

「大丈夫ですよ、慣れてますから!」


と、大きな鰤の頭後ろに出刃を振り下ろした。


「お、おお!」


見学中の私は、出刃一本で鮮やかに鰤を捌く少年の腕に、驚きと感動。

ものの数分で、綺麗な身がまな板に二つ並んだ。


「ん〜、刺身はどれくらい食べます?」

「そうだな・・・ここからここまで」


と、指で大体の量を決めた私。少年は背と腹の間に二本の切れ込みを入れ、丁寧に皮を剥ぐ。すると、あっという間にスーパーで並んでいるお刺身用ブロックに早変わり。


「少し味見します?」

「ん、よろしく!」


丁寧にブロックに刃を入れ、両サイドの切れっ端を頂戴した私。


「美味い!」

「じゃ、残りは夕食までお預けです」


と、大皿に花のように刺身を盛りつけた少年は、ラップして冷蔵庫ヘ。

残った半身は、適当な大きさに揃え、塩で味付け。他にぶつ切りにしたり中骨を適度に切断してグリルで焼いたりと、色んな事をしている。

今日の夕食が楽しみだ!


「さてと、後は頭か」

「頭?食えるのか!?」

「兜焼きとかあら煮で。なかなか美味しいですよ」


ほほぉ、美味いなら是非とも食べてみた・・・い?


「お、おい、危ないぞっ!」

「え?ああ・・・」


あろう事か、少年は鰤の頭をまな板に立て、力で半分に切断していく。見てる方がハラハラする!


ダンッ!!


「よし、終わり!」

「ふぅ・・・」


真っ二つになった頭を手にニコッと微笑む少年だが、図的にグロい・・・










昼食パスタに舌鼓を打った後は、再びまったりタイム。

食後にソファでコーヒーを飲む私は、流し台で食器を洗う少年に目を配る。

何となくだが、この何気ない時間が永遠に続いて欲しいと思う。二人だけの時間を・・・


食器を洗い終えた少年が、ソファにやってきた。

そして次第にうつらうつらと、瞼が重くなっているようで、時折首がカクッと下を向く。


「おいおい眠いのか?」

「みたいです。ちょっと部屋で寝て来ますね」

「まぁ待て、ほれ、こっち来い!」


私は自分の座るソファに少年を呼ぶ。眠気が強いのか、少年も素直に私の隣に座る。


「ほれ、横になれ!枕もある!」

「え?でも・・・」

「いいから!」


と、半ば強引に少年を横にした私は、自分の膝上に少年の頭を乗せる。


「どうかね?」

「・・・気持ち良い」

「そうかそうか!なら、ゆっくり寝ろ」


目を閉じた少年の髪を優しく撫でながら、のんびりと時間を潰す私は、至福の時に意識を落とした・・・










「・・・ん・・」


知らぬ間に私も寝入ってたようで、リビングには西日が射し込んでいる。少年はまだ起きておらず、私のひざ枕でスヤスヤと眠っている。

再び髪を優しく撫でれば、気が付いたのか、寝ぼけ眼を擦りながら起きる少年・・・


「おや、起こしてしまったかね?」

「・・・?」

「私のひざ枕は気持ち良かったか?」

「・・・極上でした」


お粗末様。

ゆっくりと起き上がった少年は、時刻確認後、手早く洗濯物を取り込んだ。

あ、言い忘れてたが、洗濯物に関しては私が粘り強い交渉で、私の分も少年が洗っている。

恥ずかしくないのか?いやいや、たかが布きれ、別に裸を見られる訳じゃないから心配無用!


「自分の分は畳んで下さいね!」

「はーい」


まぁ畳む位は私もできる。テキパキと乾いた洗濯物を畳む少年・・・主夫だ。


「それが終わったら、夕食にしましょうね!」

「おう!」


夕食と聞けば、俄然張り切る私。

居候生活も2ヶ月目に突入し、この家に帰る事が当たり前になった今、少年の存在はとても大きく、とても大切・・・


「どうかしました?」

「ん、いや、居候生活もだいぶ慣れたなぁ・・・と思ってな」


振り返った少年・・・そして切断された魚の頭を片手の疑問系は、変なグロさだよ。


「ん〜・・・その表現は間違ってません?」

「いやいや、居候だろう?結構マシにはなったと思うが・・・」

「やっぱり間違ってる!瑞穂さんは居候生活してるんじゃないですよ?」


おいおい、気でも狂ったかね?

口を尖らせる少年は、ビシッと私を指指した・・・指というより出刃包丁で。


「瑞穂さんは居候してるんじゃなくて、同棲してるんですよ!」

「・・・お?」

「だって恋人ですよ、居候はおかしい!」

「・・・おお!確かに!だが少年、凄くいい事を言ってる少年と、手に持ってる魚の頭のグロさがアンバランスだ」

「・・・あ、ホントだ」


アハハッと笑い、テキパキ調理にかかる少年の背中を見ながら、気付かない内に張っていた力が自然と抜けていく・・・


居候から同棲か・・・。まだまだ恋人としての進展には時間がかかりそうだが、今はこの時間を、二人でゆっくり過ごしたいものだな・・・



















「できましたよ、食べましょう!」

「うん、いつもありがとうな、廉!」

「・・・え?今、名前・・・」


恋人同士なのに、いつまでも少年呼ばわりする訳ないだろ?ただ恥ずかしくて、名前で呼ばなかっただけさ。何か言いた気な少年を余所に、私はあら煮るをパクリ!・・・うん、美味い!!




こんな私と少年の一日。平凡だけど、幸せだ!














おしまい!

完結しました!この作品のモデルになった友人いわく、

「私ってこんな感じ?」

と言われましたが、

「まんまこんな感じよ!」と、周りから突っ込まれてました(笑)

まずは、友人に感謝!!そして、最後までお付き合い下さった読者の皆様に感謝!!

今後はまだ未定ですが、短編でも書こうかなぁ・・・。

などと思う私ですが、次の作品まで、しばしのお別れ!より良い作品を書き上げるべく、日々精進!

長々と後書きまでお付き合い下さって、ホントにありがとうございました!!そして、これからもよろしくお願いします!



真稀

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