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19:彼の電話を待つ間・・・

ストーリーも終盤に入り、残す話もあと僅かとなりました。ラストスパートで頑張ります。

車を走らせた瑞穂は、とある喫茶店にいた。

昼もとうに過ぎ、客も疎らな喫茶店のカウンターに座る瑞穂は、若い女性マスターに話しかけた。


「一ヶ月前に、告白した・・・お前の弟に」

「ふーん」

「・・・それだけか?」


リアクションの薄さに眉をひそめる瑞穂。


「瑠華、お前の弟に告白したんだ。もう少しリアクションしたらどうだ?」

「いやいや、想定の範囲内だから」

「・・・は?」


マスターの名は、月島瑠華。廉の実姉であり、瑞穂の友人である彼女は、あっけらかんと言い放った。


「ま、廉って自覚は無いけどあんたみたいのがタイプだし、私としてはむしろそうなってほしかったから、万々歳だわ」

「だが、まだ返事はもらってないが?」

「ん〜・・・ま、大丈夫なんじゃない?」


根拠の無い瑠華の言葉。が、どちらにしても瑞穂と廉の関係に支障がでる事は無いと言いたげに、ニコッと瑠華は笑みを浮かべる。


「なんか、真剣に話してる自分が馬鹿らしくなってきた」

「そう?コーヒーのお代わり要る?」

「貰おう」


喫茶店独特の緩やかな時間の流れ。落ち着いていく心と共に、瑞穂は電話を待った・・・。














電話が鳴った。瑞穂が店を出てどれくらいの時間が経ったのだろうか・・・。辺りは薄暮れになり、客足の途絶えた喫茶店を見渡しながら、瑠華はフッと息を吐いた。


「上手くいったのかしらね?」


独り言を呟き、カウンターに腰掛ける瑠華。

我ながら、嘘をつくのは慣れていたはずだったのだが、さすがに今回は緊張したらしい。


“廉はあんたみたいのがタイプだし”


あれは、不安を隠していた瑞穂に対する優しい“嘘”。弟のタイプなど知るはずの無い瑞穂は、頭の中で言葉を反芻し、苦笑した。

だが、何となく予想していた事が現実になった今、瑠華の言葉は“嘘”でも“気休め”でもなく、願望になっている。

世界中を飛び回る父親、幼い頃に他界した母親・・・ろくに両親からの愛情を知らずに育ち、成長した弟には、幸せになって欲しかった。保護者代わりの瑠華は、廉に家事のイロハを教え込み、こうして現在もひとり暮らしを頑張っている弟の姿を誇らしく、そして心配もしていた。

けど・・・


「もし、姉さんと同じ歳の彼女が出来たとしても、賛成してくれる?」


一週間前、ひとりで店に来た廉は、開口一番にそう言った。


「当たり前でしょ!」


瑠華の返答に、廉は「そっか」と笑い、覚悟を決めた表情で、


「俺、瑞穂さんの事が好きだってわかった!」


言い切った。


弟の事を心配に思う時間も、どうやら残り僅かのようだ。

そう、瑠華は確信した。

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