01:居候って?
「どうぞ」
姉とその“お友達”と頭の中で解釈した彼は、二人をリビングヘ招き、麦茶を差し出した。
「ありがと!」
「すまないな」
と、二人の反応が返って来る。姉の対面に座り直した彼だが、ふと疑問が浮かんでいた。
「それより急にどうしたの?まさか友達を連れて遊びに来たって訳じゃないよね」
彼の問いに、姉はコップに付けた唇を離す。
「そうね・・・とりあえず紹介するわ」
と、姉の隣に座る女性を紹介し始めた。
「彼女は高校の頃からの友達で、狩谷瑞穂」
「よろしく」
「あ、どうも・・・」
「んで、単刀直入に言うけど・・・今日から、この家で暮らす事になったから!!」
そう高らかに宣言した姉。対して彼は、このあまりに突飛な話に
「・・・は?」
と、間抜けな声を出した。いや、いきなりこんな事を言われたら、誰でもこんな反応をしてしまうのだろうが。
「えっと・・・誰が?」
「瑞穂が」
「私が」
“はい”と、挙手する狩谷と、狩谷を指差す彼の姉。そんな突拍子もない事をいきなり言われて“はいそうですか”と納得するわけもなく・・・
「ち、ちょっと待って!いきなりそんな事言われても・・・」
と、あたふたとする廉。
「あ、てことは姉さんも一緒・・・だよね?」
さすがに見ず知らずの女性と二人で暮らすという非常識な事は言わないだろうと、半ば軽い気持ちで尋ねた廉だが、
「アタシは店があるから無理!」
非常識な姉だった。
「姉さん!いきなりそんな事言われて納得できるわけないじゃないですか!!第一、狩谷さんだって・・・」
「いや、私は別に構わないが」
似た者同士だった。
「んじゃ、話も纏まった事だし、アタシは店の仕込みあるから!」
「え、ち、ちょっと姉さ・・・」
バタン!
姉、退場。
残された廉と狩谷の二人の間に、シーンとした静けさが漂う。気まずそうな廉とは対照的に、狩谷はのほほんと麦茶に口を付けた。
たった数分間の静けさだったが、廉にはとても長く感じられた。ほんの少し前に姉のごり押しで狩谷の居候が決まったのだが、どう接すれば良いのかわからない。まして姉と同じ年なら、話題すら出て来ない。
そんな静寂を破ったのは、狩谷だった。
「なぁ?」
「は、はい?」
「少年は、料理は出来るかね?」
「はぁ、一応は」
“少年”と呼ばれた事よりも、なんとも変な質問に、強張った表情は緩み、間抜けな声を出した廉。
「そうか・・・フム」
「あの〜、狩谷さんはどうして家に来る事になったんですか?」
そう、廉は肝心な事を聞いていなかったのだ。そもそもの経緯を、彼は質問にして聞いてみた。
「ああ、そういえば言ってなかったな」
ふむ、とひと呼吸いれた狩谷は、順を追って話し始めた。
1・職場から近い物件を探そうと不動産屋ヘ行く
2・自分の条件を不動産に提示した。(家政婦さん付きで、月々の家賃が五万円以下の借家)
3・そんな物件は無い、と追い出される。仕方なく他の不動産屋ヘ行くが、同様に見つからなかった。
4・諦めて家(実家)ヘ帰る途中に廉の姉に会い、事の経緯を話す。
5・現在に至る。
「とまあ、こんな感じだな」
「てことは、俺は家政婦・・・」
「ああ、心配するな。家賃はきっちり払う」
何が“心配するな”なのだろうかと不安になる廉だった。
久々に書き始めた訳ですが、相変わらず文章が拙いです。ごめんなさい。
ですがまだまだ始まったばかり、頑張ります。