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15:その頃瑞穂は?

PV10000件突破。ありがとうございます!!

一方の瑞穂


「でも、昨日の廉くんは怖かった・・・」

「ああ、まさかあんなに豹変するとは・・・」

「敵にはまわしたくないタイプだわ・・・」


午前中の客足も落ち着きだした頃、ROSE・GARDENの三人は、遅い昼食を摂っている最中である。話題は、昨夜の廉の事について。


「だが、要は寝ている少年の傍で騒がなければいいだけの事だ、問題無い」

「まあ昨日は瑞穂をからかう事に集中し過ぎた結果だから、確かに問題が無いといえば問題無いわね」

「ま、たしかに!」


真菜に相槌を打つ夏希。元々、二人は廉に対する恋愛感情は無い。だが、羨ましいと思ったのは事実である。


「ま、昨夜の瑞穂にはびっくりしたわ。独占欲の塊ね」

「いや、その・・・」

「まさか“少年の彼女になるのは私が相応しい”なんて言っておきながら、今更あれは嘘だった・・・なんて事は言わないよね?」


“やられた!”と気付いた瑞穂だがもう遅い。二人はニヤリと口角を吊り上げながら、無言で威圧。


「だ、だが少年は瑠華の弟だ。それに年の差もある、第一私が言い寄った所で現状が変わるかどうか・・・」


急にもじもじとし始めた瑞穂に、二人は確信した。


“完全に惚れているな”


と。


「胸も無いし色気なんて皆無の私が、果たして彼女になれるかどうか・・・」

「あら、自覚はしてるみたいね」

「なら簡単じゃない、まずは色気ね!」


完全に玩具扱いされている瑞穂だが、今は二人だけが頼り。とりあえず、色気という事は、夏希に任せる事になった。










PM4:00


「や、やめて下さい」

「カーット!!ぅおら月島ぁ!演技に身が入ってねぇじゃねぇかっ!!!」

「す、すみません」


放課後と同時に、廉達演劇班は台本合わせ。しかし、修羅と化した東金が、廉に罵声を浴びせている最中だった。


「ったく心が篭ってねぇんだよ貴様はぁ!!てめぇは男じゃねぇ女だ!その事を忘れんなボケェ!!!」

「し、詩織・・・そこまで言わなくても・・・」

「あんたもだ咲ぃ!演技がぎこちねぇんだよ!!気ぃ入れろボケがぁ!!!」


止めに入った咲までもが、とばっちりを受ける始末。その後も罵声を浴びながら、台本合わせは2時間続いた。










「疲れた・・・」


学校から帰って来た廉は、疲労に愚痴を零す。辺りは暗いが、未だ瑞穂は帰って来てないらしく、家の中は真っ暗だ。

だが、廉に休まる時間は無い。直ぐに着替え、洗濯機を稼動させながら、台本片手の料理作り。手間ではあるが、こうしないとセリフを覚えられないうえに、東金の罵声を浴びるのは目に見えている。


「あ、あなたは・・・」

「なに独り言を言ってるんだ?」

「あ、お、おかえりなさい!」


いつ頃帰って来たのか、キッチンで料理と台本の両方に格闘していた廉に、怪訝な表情で声をかけた瑞穂。廉も慌てて言葉を返す。


「お、今日は肉じゃがか!好物なんだ!!」

「あ、よかった・・・あれ?」


さりげなさを装いながら、廉に顔を近付けた瑞穂。どうやら廉も、瑞穂の雰囲気に気が・・・


「っくしゅ!ヘ、へっくしゅん!!・・・み、瑞穂さん、化粧してます?」

「あ、ああ・・・」

「ち、ちょっとすみま・・・くしゅん!!」


さすが廉、くしゃみを即座に鍋とは逆方向ヘ。火を止め、洗面所ヘダッシュ。瑞穂は訳もわからず、呆然とキッチンに立ち尽くしたまま・・・


数分後ーーー


「すみません、昔っから化粧品の香りが苦手で」

「そ、そうか・・・すまなかった!」

「でも、なんで化粧してたんですか?」

「い、いや・・・ちょっと商談があってな・・・ハ、ハハハ・・・」


さすがに廉の為とは言えず、どうにかごまかした瑞穂は、ぎこちなく笑った。


「ん〜・・・瑞穂さんは化粧しなくても綺麗ですよ。まあ個人の意見ですが」

「ホントかっ!?」

「え、ええ・・・」


喰い気味の瑞穂に気圧される廉だが・・・


「ふぇ・・・ヘ、へっ」

「ああっ、スマン!!」


瑞穂が近付いた瞬間、再び廉を襲うくしゃみ。再度、廉が洗面所に向かったのは、言うまでもない。














夕食も済み、洗濯も終えた廉は、再び台本を手にした。瑞穂は、残った肉じゃがをつまみにひとり晩酌。だが、これは夏希に教えられた“作戦その2”であった。


「しょーねーん・・・なにをしてるんだ〜?」


台本片手にぶつぶつ独り言を連発する廉に、瑞穂は酔ったふりして近付いた。さりげなく顔を近付ける瑞穂の顔は、廉の顔に触れそうな程。もちろん、身体も密着しかけている。

この作戦名は、題して


“酔ったふりして密着作戦!これで意識しない男はいない!!”


長いくせに薄っぺらいタイトルだ。

もちろん、真に受けた瑞穂は早速実行。結果は


「酒臭っ!!」


廉、部屋に避難。作戦は失敗に終わった・・・


「むぅ・・・こうなったら・・・」


作戦1・2が失敗し、残る手は一つ。瑞穂はいそいそと風呂場に向かった。


“作戦その3酔ったふりして風呂場に突入!!”


案の定、廉は風呂場にいた。磨りガラス越しに、身体を洗っているのがわかる。いざ、作戦決行!!


「あ、開かない!?」

「あ〜すみません、先に入ってます!!」


内側から鍵を掛けられていた。瑞穂、撃沈・・・












「瑞穂さん、お風呂空きました・・・げ!」

「んあ?」


リビングに戻った廉が目撃したのは、本格的に悪酔いモードに突入した瑞穂の姿。一升瓶と缶ビールが散乱したテーブルに突っ伏す瑞穂の視点は定まっていない・・・


「瑞穂さん大丈夫ですか?」

「あ〜?」

「ほら、部屋に戻りますよ?」


瑞穂の手から缶ビールを取り、肩を貸す廉。しかし瑞穂の足どりがおぼつかず、バランスが保てない。ならばと、瑞穂をお姫様抱っこした廉。高身長ながら意外と軽い瑞穂に少し驚きつつも、部屋のベッドに寝かせる事に成功。


「おやすみなさ・・・い?」


自室に戻ろうとした廉だが、動けない。いつの間にか眠ってしまった瑞穂が、廉のパジャマの裾を、がっちりと掴んでいたのだ。


「ど、どうしよう?」


瑞穂の力は意外に強く、引っ張ってみても、ビクともしない。声をかけても反応が無く、スヤスヤと寝息を立てるばかりだ。

廉とて、台本合わせで罵声を浴びせられてもいるし、演技指導もやったから肉体的にも精神的にも疲労が蓄積されている。次第に、意識は薄れていった・・・

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