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13:今夜は洒落たディナーのはずが・・・

本当なら、このまま少年と二人で洒落たディナーでも・・・と、瑞穂は考えていた。


が・・・


「お料理出来ました〜!!」

「お、きたきた!!」

「あら、ホントに美味しそう!」

「・・・・・・」


目論みは、夏希の言葉で呆気なく崩れた。




遡る事、30分前―


「さて、それじゃそろそろ・・・」

「ねぇね〜!廉くんの家ってどんな感じ?」

「私も興味があるわ。お料理とか・・・」


と、世話になっている廉をエスコートしようと声をかけたら、夏希が要らぬ一言。当然、真菜も口を挟んだ。


「どうって、普通の家ですけど」

「ん〜見てみたいんだけど、どうかな?」

「ち、ちょっと待っ!」

「ああ、いいですけど・・・おもてなしは、料理ぐらいしか出来ませんよ?」


廉はあっさり承諾。


「し、少年・・・今日はせっかくの給料日だし、感謝の意味を込めて、私がディナーに・・・」

「瑞穂さん、いくらお給料が入ったからって、無駄使いは良くないですよ?」


廉は堅実派だった。


「じゃあ決まりね」

「やった!んじゃ私、店に置いてる“お泊りセット”取ってこよ〜!!」

「えっ?えっ??」


蚊帳の外の瑞穂をよそに、話はとんとん拍子に進む。こうして、豪華ディナーは自宅パーティーに変わったのだ。










突き出し・前菜・メインディッシュの魚料理に肉料理・・・小1時間で、あっという間にテーブルを埋め尽くす料理の数々。対瑞穂用に、量も普段と桁違いである。


「さてと、廉くんも揃った事だし・・・乾ぱ「ありゃ、賑やかだと思ったら・・・」」

「姉さん!!」


グラスを持ち上げ、乾杯の音頭をとろうとした夏希の声に、いつの間に来てたのか、廉の実姉である瑠華るかの声が被さった。


「なーに驚いてんの?姉が実家に帰って来るなんて、当たり前の事じゃん。それに、綺麗な女の子はべらせて・・・」

「お邪魔してるよ〜!」

「久しぶり、相変わらず元気みたいね」


真菜も夏希も、瑠華とは専門学校からの友達である。挨拶も軽い。


「ああ、夏希も真菜も、うちに来た事なかったっけ?」

「ってか、急にどうしたの?」

「明日店休日だしさ、ついでに瑞穂と仲良くやってるか、心配になって来てみたって訳!」


弟思いの姉である。


「・・・で、なんで瑞穂はご機嫌ナナメなの?」

「瑠華〜!」


ぶすくれた瑞穂は、瑠華に泣き付き事情を説明。


「ああ、廉はお人よしだしね・・・ま、諦めなさいよ」

「そーそー!んじゃ、瑠華も加わった事だし、改めまして・・・」


“乾杯〜!!”


こうして、自宅パーティーは始まった。




「これ、美味しい!!」

「こっちも美味い!」

「あ〜最高だわ〜!」

「廉、お代わり!!」


あれだけの量があったのに、あっという間に消えていく料理。席に着くひまのない廉だが、腕をふるうその表情は嬉しそうだ。




「ふあぁ、終わった〜・・・」




ようやく落ち着いたのは、パーティーが始まって約2時間後。瑞穂対策用に買い占めた食料も、底を尽いた。冷蔵庫で冷やしておいたフルーツゼリー(廉のお手製)を配り終えた廉は、心地良い疲れが眠気を誘い、テレビ前のソファにもたれながら、静かに瞼を閉じた。


「おや、寝てしまったのか・・・」


缶ビール片手にソファに近づいた瑞穂は、すやすやと眠る廉を見ながら目を細める。


「眠ってる顔も可愛いわねぇ・・・」

「ま、廉は生まれてくる前に性別を間違えたようなもんだし」

「お料理上手で洗濯・掃除の家事も出来るし、オマケに年下の美系男子・・・彼女が居なかったら、マジで立候補するわ私」


最後に放った夏希の言葉が、瑞穂の片眉を吊り上げた。


「おいおい、仮に百歩譲って少年に彼女がいなかったとしても、彼女になるのは私だろう?」

「経済能力皆無の夏希と色気ゼロの瑞穂なら、私の相手にならないわ。この三人の中なら、確実に選ばれるのは私ね」


何となく話が脇道に逸れている三人。外野で傍観者と化した瑠華は、ある意味ハラハラしていた。


「あ〜・・・煽るようで悪いんだけど、たしか廉に彼女はいないはず・・・」

「「「マジ!?」」」

「でね・・・」

「はいはーい!アタシ立候補しま〜す!!」


・・・・・・・・・


「いや私のはな「待て待て!私の方が、少年の彼女に相応しい!!なんせ一つ屋根の下、一緒に暮らしてるんだぞ!」」


・・・・・・


「ち、ちょっと聞「たった二日の居候、しかも家事一切を廉くんにさせてる“私生活ダメ人間”と“経済無能の甲斐性無し”が選ばれるわけないわ。間違い無く、選ばれるのは私!」」


・・・


「廉が起き「「「外野は引っ込んで!」て!」ろ!」」


ブチッ!!


「あっちゃ〜・・・」

「うるっせぇぞ貴様らぁ!!人が気持ちよく寝てりゃあごちゃごちゃぐちゃぐちゃ騒ぎやがってっ!!近所迷惑も考えろボケがぁ・・・!!」


瑠華は頭に手をあて、瑞穂・夏希・真菜の三人は、怒りMAXの廉に恐怖を覚えた。


「・・・ったく、少しは近所付き合いしてる俺の身にもなれってんだ」

「「「・・・ごめんなさい・・・」」」

「わかりゃいいんだよ、わか・・・・・り・・ゃ・・・」

「少年?」


スー・・・スー・・・


「廉くん?」

「・・・寝てる?」

「あ〜弟って、寝てる時に騒がれたらこうなるの。でも、今日はまだマシな方だわ。一度リビングにある電化製品全て破壊した事もあるし・・・ほら、あの絵の裏とか、廉が壁に穴を開けたから隠してるのよ」


淡々と説明する瑠華に、


“もう少し早く言って欲しかった”


と、心の中で呟いた三人。下手にからかうのはよそう、寝てる廉の前で騒いではいけない、と教訓。特に瑞穂は居候の身、迂闊に機嫌を損ねないように気をつけようと、心に誓った。

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