涙の温度
初めて投稿させていただきます。
小説に限らず、誤字脱字が多いので、お見苦しい点もあるかと思いますがよろしくお願いします。
涙の温度
「エルダは、いつも にこにこしてるよ」
「すました顔しか見たことがないですよ、エイダ 様は 私の事は見てもくれないんですもの」
赤毛に緑の瞳がかわいい キリール男爵令嬢 アニーのほほが膨らむ
隣には琥珀色でストレートの長い髪を後ろに結んだ紫の瞳がほほ笑んでいた。
私の婚約者、トルリア国の第一王子リアム様だ。
私は遠くから二人の寄り添う姿を眺めていた。
「エイダ。。。大丈夫?」
「 クロエ。 大丈夫よ、行きましょう、カイル様はもう生徒会室よね、生徒会の仕事に遅れてしまうわね。」
私と騎士団長の娘クロエ伯爵令嬢、リアム第一王子は幼馴染だ、小さなころ私は泣き虫で活発な女の子だった。そんな三人を一つ年上のカイル王弟殿下は、兄のように見守りいつも優しかった。
このままの時間が続くと思っていた。婚約が整うまでは。
✿ ✿ ✿
「エルダ!あなたはリアム様の妻となり、王妃となるのよ、王妃たるもの周りに心の内を悟られてはいけません。高貴で正しく、誰からも信頼される淑女になるのです。泣いているうちはリアム殿下と合わせるわけにはいきません。教養も姿も、完璧でなければならないのです」
「はい。。。ぐず。。。お母さま」
母は隣国の第5王女として育ち、留学先で侯爵令息である父に出会い、結婚した。母は多くの兄弟である、王子王女と競い合い育ち、王族たるもの完璧でなければならないと常に話していた。私とリアム様の婚約が決り、母は完璧な淑女になる事を7歳の私に課した。
「完璧な淑女となるまでは、屋敷から出る事を禁じます。泣いていけません。気持ちが顔に出るのもいけません」
もともと貴族としての基本的な教育は受けていたが、ダンス、歴史、経済、国政状況と多くの事を母とえりすぐりの教育係から学び、家族以外との交流を絶たれた。
私は、リアム様に会いたい一心ですべてを受け入れ頑張った。リアム様の笑顔に一日も早く会いたかった。
✿ ✿ ✿
リアム 視点
あの日エルダは、王宮の庭園、白い小鳥をハンカチに包み泣いていた。
「エルダ!どうしたの? どこか痛いの?」
「リアム様 この子 動かないの。。。」
「見せて。この小鳥はどうしたの?」
「あの木の下にいたの、小さな声が聞こえたの」
小鳥はすでに息をしていなかった。
ぼくはエルダに寄り添い、小鳥の話をし、一緒に悲しみ、庭の片隅にお墓を作った。
「ありがとうリアム様」
彼女は泣きはらした眼をこすり、僕に満面の笑みを見せた。
「小鳥さん きっと天国に行けるね、お友達にも会えるね。」
僕はエルダの笑顔も泣き顔も、まっすぐな心も好きだった。
この笑顔を、心を守りたいそう思った。
だから婚約者は、エルダがいいと父上に頼んだ。彼女を苦しめるとも知らずに。
「母上、エルダとの婚約は整ったのですよね。なぜエルダに会えないのです?」
母上はため息と共にこう話した。
「エルダの母侯爵夫人は、隣国のイギール王帝国で育ったの、イギールは相続争いが激しく、王族として生きていくには、家族も疑わなければならない、だからエルダを守るために厳しくしているのだと思うのだけれど。。。。 やりすぎよね。会える様に私から話しておくわね」
「ありがとうございます。母上」
王族でありながら、父上と母上は仲睦まじく、息子の私にも年の離れた妹にも存分に愛を注いでくれた。エルダとならそんな家族が作れると思っていた。
エルダのあの笑顔に早く会いたかった。
侯爵夫人を招いたお茶会にて、母上は何度かエルダの事を話してはくれたが、エルダに会う事は叶
わなかった。
会う事が出来たのは、1年後、私達は8歳になっていた。
✿ ✿ ✿
「お久しぶりです、リアム王太子殿下」
私は、きれいなカテーシーのまま頭を下げていた。
「エルダ元気にしていたかい?かしこまらずに顔を上げて」
「はい。殿下」
許しを得て私は顔を上げた、久しぶりに見るリアム様のキラキラした笑顔は、私の顔を見たとたん失われた。
この1年、彼に似合うために、必死に頑張り完璧な淑女になった私は、彼の笑顔を奪ってしまった。
この一年に及ぶ母の教えで、私の表情は全く動かなくなっていた。少し青みが差す銀髪と薄い水色の瞳がさらに冷たさを引き立たせた。
しばらく沈黙があったが、リアム様はにっこりと微笑み、私の手を取りぎゅっと握った。
ほほ笑む瞳の奥には悲しみの色が広がっていた。
その色を見て私の心はひび割れた。この一年リアム様の隣に立つにふさわしくなるためと母の教えに忠実にしたがい、頑張ったのに。。。。。
苦しく締め付けられる気持ちとは反対に、私の表情は微塵も動かない。
リアム様と庭園で茶を飲みながら、たわいもない話をした。リアム様は優しく気持ちがぽかぽかした、リアム様の笑顔に答えたい。そう思っているのに、私は笑顔が作れなかった。自分の意思で、口角も頬も動かない。
悲しくなり、突然うつむいた私の顔をリアム様が覗き込んだ。
「エルダ、頑張ったんだね。 僕が。。。僕には笑顔を見せてほしい。」
リアム様はうっすらと涙を瞳にため、ぎゅっと私を抱きしめた。
それでも、耳まで赤くなった私の表情はまるで動かない。
リアム様を悲しませている。。。。。動け私の顔! 動け!
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リアム 視点
ショックだった。。。 この一年エルダがどんな教育を受けているのか、母上から聞いていたが、
笑顔を失うほど、厳しいものだったとは、婚約者なのに何もできなかった自分が恥ずかしい。
僕が、エルダの笑顔を取り戻すんだ。
僕が、僕が、守るんだ。
気が付いたら僕はエルダを強く抱きしめていた。
「エルダ、頑張ったんだね。 僕が。。。僕には笑顔を見せてほしい。」
良く笑い、素直に泣く、必ずあの頃のエルダを取り戻す。
それからはできるだけの時間をエルダと共に過ごした。
エルダの表情は取り戻せていないが、僅かなエルダの表情の変化で、彼女の気持ちが僕にはわかる
ようになった。
だから必ず取り戻すと誓った8歳の気持ちも、長く過ごしてお互いの気持ちがわかっている。
僕がエルダを深く愛しているのに変わりはないのだから。
✿ ✿ ✿
リアム様はいつも私に優しい。どんなに私の表情が動かなくても、婚約者としてちゃんと接してく
れている。
リアム様が大切にしてくれているのはわかっている、早く笑顔を見せたいと思う気持ちと、こんな
私で本当にいいのか、王太子妃としてふさわしいのかという気持ちと。。。でもリアム様の
隣に立っていたいという気持ちと。
とにかく ぐしゃぐしゃ。
いっぱい笑顔を取り戻すためにいろんなことを試したけれど、小さな時に心にできた心の傷は、
消えることなく、どんどん月日が流れ。
私たちは2年制の王立学院に入学した。
入学してから私とクロエは、カイル様が会長を務める生徒会に推薦され生徒会活動を始めた
リアム様は、生徒会のメンバー活動は王族が関わりすぎるのは良くないと、カイル様の卒業後、
生徒会長を引き継ぐこととなった。
学生生活と生徒会の仕事を忙しくする中、私の心の中に小さな不安の種が生まれた。
リアム様は変わらず優しく、私の事を優先してくれるが、入学後半年ほどして、アニー男爵令嬢を
傍らに置くようになった。
彼女はいつも緑色の瞳をキラキラ輝かせダリアが咲き誇るような笑顔。
私にはできない笑顔。
日に日に不安は増し、私の心の傷はかさぶたで塞がることなく、ずきずきと痛い。苦しいのに
涙も出ない。
リアム様に気持ちを確かめる勇気もなく、優しさに甘え、表情のない、つまらない私がいつまでも
リアム様のそばにいていいのか。
王太子妃となる役割をこなす事ができれば、私はお飾りとしてそばにいてもいいのか。
学園内では二人の寄り添う姿が噂になり。私は表情のない冷血例所で、いつ婚約破棄されるのかと
噂されている。
「私が、決断するべきかしら。」
「エルダどうしたの?暗い顔して」
「クロエ。私の表情がわかるの?」
「当り前じゃない。カイル殿下もリアム殿下もわかってると思うわよ」
「そうかしら。氷姫と言われる私の隣はいても楽しくないのではなくて?」
「エルダの凛としたとこ私は好きよ。きっとあの二人も」
クロエに促され、窓の外を見ると、中庭の木陰にカイル殿下と向かい合うリアム様その横には
アニー男爵令嬢。
カイル殿下がリアム様のむなぐらをつかんでいる。
「クロエ大変」
私は中庭に急いだ。
✿ ✿ ✿
「何度言えばわかるんだ。エルダを傷つけるならエルダは俺が貰うぞ」
「カイル様 リアム様は悪くないんです。あの冷血なエルダ様がリアム様に冷たいから!私がそばに居るんです」
「リアム、お前もそう思っているのか?」
「カイル。。そんな事ない、エルダを悲しませてなどいない」
「じゃあなんで、アニー男爵令嬢をそばに置いている!」
「そばになどいつもおいているわけでは無い!エルダは、生徒会の仕事で忙しいから昼にも誘えない、外で昼食をとるためにここに来るとアニー男爵令嬢が居るから一緒に過ごしていただけだ!」
カイル様の拳に力が入る。
「お前たちが、なんて噂されているのか知らないのか!」
「噂?」
「お前が冷血令嬢のエルダと婚約破棄して男爵令嬢と真実の愛を貫くそうだ!俺はそれでもかまわないぞ!お前は男爵家に婿に行け、後の事は俺が引き受ける!」
「カイル!俺はエルダ以外を愛してなどいない!真実の愛なら当の昔に見つけている!真に愛するのはエルダだけだ! エルダ以外を隣に望まない。自分のために傷つけたエルダをまた笑顔にするんだ、今は忙しくて学園で一緒に居られないが、出会った時から彼女を守ると決めている!」
カイル様がそっとリアム様を離した。
「そんな。。。リアム様」
「私はリアム様をお慕いしていますし、エルダ様よりも幸せにできます」
アニー男爵令嬢がリアムに駆け寄り腕にしがみつく。
そっとリアム様は、アニー男爵令嬢の手をほどき彼女の正面に立つ。
「すまない。アニー男爵令嬢、私の行動が君に誤解を与えて居たことを謝罪する。しかし私の隣はエルダ以外にはいない。僕は心から彼女を愛しているし、これから彼女とあたたかな家族を作っていきたいと願っている。今の彼女の表情はみんなには見て取れないかもしれないが、彼女は心豊かな人で、いっぱいの愛を抱えているんだ。僕には彼女の笑顔も悲しい顔もわかるんだ」
「あら。私もわかるわよ」
「わたしもだ」
いつの間にか私の隣にいたクロエとカイル様が私の肩を抱く
二人を交互に見た私の頬にはあたたかく止めどない涙があふれた。
「エルダ!」
私に気が付いたリアム様が二人を押しのけ抱きしめた。
「エルダ。 なんで泣いてる。泣いてるよ。 どこか痛いの?悲しいの?」
リアム様は私の頬を両手で挟み瞳を覗き込む。
「リアム様。私泣いているのですか?本当に?」
「うん。泣いてる、僕が不安にさせたのごめん」
そう言ってリアム様はもう一度私を強く抱きしめた」
「私。。。。 嬉しくて。カイル様とクロエとリアム様の愛の告白と勝手に不安になってごめんなさい」
「エルダ!泣きながら笑ってる!」
クロエが抱きしめられたままの私に抱き着く。
カイル様は笑顔でなく私を見て、にっこりと微笑んだ。
「エルダ!僕より先に二人に笑顔を見せたの!ずるい!これからは僕だけに見せて」
ぷりぷりと怒るリアム様をカイル様が私から引きはがした。4人で顔を見合わせて笑った。
8年も凍り付いていた私の心は、家族のお様な大切な3人が溶かしてくれた。
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中庭での出来事は、学園中に広まり穏やかに日々が訪れた。
そしてリアム様は私の隣にいつも居る。
「リアム!関係者以外は出ていけ。」
「駄目だよ。エルダを不安にさせたくない」
「カイル様、あきらめましょう。何ならお手伝い願いましょう」
私の隣を離れなくなったリアム様にカイル様もクロエも、他の生徒会メンバーも生暖かな視線を送られていが、毎日幸せだ。
ちなみにクロエは ミルクティーのストレートヘア ピンクの瞳
カイル様 深みのある金髪で短髪 紺色の瞳 です。




