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『ドラゴンテイマー』 ~追放された不遇職使いの僕は、婚約者だった公爵令嬢と共に生き抜いていく~  作者: 保志真佐


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08レーナの強さ




 危険な魔物が生息している『漆黒の森』を歩き始めて、初めての会敵である。


 「ウガガガ!!」


 目の前に現れた魔物は、ハイローウルフと呼ばれる魔物であった。


 背丈は二メートルほどで、見た目は完全に二足歩行になった狼である。

 しかし、ただの二足歩行になった狼ではない。


 このハイローウルフと言われる魔物は、高い俊敏性を持っており、牙と爪を巧みに扱いことから、中級の冒険者でも後れを取ることもある。


 何はともあれ、僕にとっては非常に危険な魔物であることに変わりは無い。

 と言うか、『漆黒の森』にいる魔物自体みんな僕にとって遥か格上であり、僕なんて小指一つでやられてしまう。


 僕はハイローウルフを見て、足を小刻みに震えさせ、歯を音を立てて鳴らせる。


 あんな魔物が目の前でいるのだ。

 恐怖以外の何物でもない。


 しかも、ハイローウルフのこちらを見る目は、完全に獲物を見る目だ。

 きっと僕とレーナを歩くご馳走とでも認識しているのだろう。


 僕は無意識に後退る。


 それは、


 「レーナ?」


 レーナが手で静止させた。

 当の本人は、目の前に魔物がいるのに対し、これっぽちも恐怖を感じていない穏やかな顔で僕を見る。


 「大丈夫です、リック。私に任せてください」


 そう言って、僕の前に出たのだ。


 その足取りは優雅であり、ピクニックにでも出るみたいな軽さ。


 僕と同い年の女性が、魔物に向かう。

 普通なら、僕が叫んで止めるべきだろう。


 だけど、僕は無言でレーナを見守った。


 何故なら、止める必要がないからだ。

 さっきまで忘れていた。


 僕は知っているんだ。


 レーナにとって、あんな魔物は()()だからだ。

 彼女にとって、取るに足らない存在だからだ。


 どういう事か。

 それは今から分かる。


 「ウグアアア!!」


 ハイローウルフは、近づいてくるレーナに歓喜の声を上げる。

 牙の隙間からは涎が垂れていた。


 ご馳走が自らこちらに来たと思ったのだろう。


 「ガウ!!」


 次の瞬間、ハイローウルフがレーナに向かって飛びつく。

 その飛びつきは、離れて見ていた僕でも、捉えられない程、俊敏なものであった。


 迫るハイローウルフに足し、レーナは以前として、表情は穏やかなものであった。


 ハイローウルフが大きく開けた口が瞬きする間に、レーナとの距離を詰め、そして……………。


 ドン!

 まず低く思い音が響く。


 「ウガアアア?!」


 そして、ハイローウルフに悲鳴が響く。


 ガン!!

 次いで、後方に吹き飛んだハイローウルフが大木に衝突する音が森中に響き渡る。


 後に残ったのは、巨大なハンマーで叩かれたような陥没した跡が腹部に残るハイローウルフの死体だけであった。


 これは全て数秒以内に起こった出来事だ。

 もっと言うと、これらの出来事は、みんなレーナが引き起こしたことである。


 僕は一連の出来事を、全く捉えることが出来なかった。


 精々、吹っ飛んだハイローウルフが大木に衝突した瞬間だけしか目の端で捉えられなかった。


 「ふぅ…」


 因みに、レーナ本人は、ほんの一仕事を終えたように、軽く息を吐くだけ。


 レーナは腰を低くさせ、両足を開いた状態で、左腕を背中側に引き、右腕を真っすぐ前方に伸ばした格好をしていた。

 あの態勢……恐らく、右手での”正拳突き”を放ったのだろう。


 先程は襲い掛かるハイローウルフに対して、レーナは僕の目でも捉えられないぐらいの速度で右の正拳突きをハイローウルフの腹部に放った。


 それによって、ハイローウルフは吹き飛ばされ、巨大なハンマーで叩かれたような陥没した跡を残した状態で、死んだのだ。


 やはり僕が思った通り、レーナにとって、ハイローウルフなど雑魚だったのだ。


 僕はレーナに駆け寄る。


 「凄い!やっぱり、レーナは強いね」

 「ふふ…そうですか」


 僕の誉め言葉に、レーナは満更でもない様子で答える。


 「魔物が来たら、私が倒します」

 「………うん、お願いするよ」


 魔物なら自身に任せろと言うレーナに対して、僕は一瞬の間の後、返事をする。


 一瞬の間があったのは、レーナに対する後ろめたさであった。

 本来なら、男の僕が、女のレーナを守るはずなのだ。


 だけど、知っての通り、不遇職の僕にはレーナを守る力なんて無い。

 単純に情けない。


 『ドラゴンテイマー』の僕と『呪導師』であるレーナ。

 どちらも【ジョブ】の儀式で不遇職を得てしまった身分であるが、魔物に対して全く役に立たない僕である一方、レーナは魔物と戦える強さを持っている。


 ハイローウルフを拳の一撃で倒したところで分かるが、レーナが幼い頃から鍛え上げた格闘術『魔闘術』は強い。


 まぁ…『魔闘術』もだが、それを扱うレーナも強いのだ。

 恐らく、レーナの格闘術を扱う技量に関して言えば、『格闘家』や『体術使い』など言った近接格闘による【ジョブ】を得た者たちと比べても謙遜が無いだろう。


 『魔闘術』は、独自の重心移動や、突きと蹴りを組み合わせた技を多用する格闘術であり、レーナの格闘術『魔闘術』は、今は無きレーナの母親によって教えられたものだったはず。


 実は、レーナの母親は、僕と同じく正妻ではない。

 確かは、今は没落した子爵家の出であったと思う。


 『魔闘術』は、その子爵家が代々受け継いできた格闘術であり、子爵家自体も元々は近接格闘を得意としていた冒険者が始まりだとか。


 因みに、冒険者とは依頼を通して、魔物を討伐する職業のようなものである。


 ところで、何故僕がレーナの格闘術について、ここまで詳しいかと言うと、本人から色々聞いたからだ。


 あれは一年前に僕の母が亡くなった時から少し経った…暑い日の事だったか。


 母親を亡くし、塞ぎこむ僕に対して、レーナは僕を連れて、彼女の故郷であるシンギュラル公爵領の避暑地に案内されたのだ。


 しかし、馬車で向かっている最中、運悪く魔物の群れの遭遇に逢ったのだ。

 魔物の群れは、護衛達を次々に倒し、僕とレーナだけになった時、僕は見たのだ。


 『魔闘術』を使って戦うレーナを。


 レーナは護衛達を倒した魔物の群れを、瞬く間に倒したのだ。

 僕と当然、まだ【ジョブ】も授かっていないレーナの強さに度肝を抜かれた。


 その時に、僕はレーナ本人に教えて貰ったのだ。

 自身の家系と、『魔闘術』について。


 「う~ん…久々に『魔闘術』を使って、拳を繰り出しましたが、少し鈍っていますね」


 そう言って、レーナは体を解すように、空に向かって、突きや蹴りを放つ。


 あれで…鈍ってたんだ。




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