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『ドラゴンテイマー』 ~追放された不遇職持ちである僕は、婚約者だった公爵令嬢と共に、何とか生き抜いていく~  作者: 保志真佐


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25ドラゴンテイマー




 「クロちゃんですか。良い名前ですね」


 レーナが微笑みながら、クロの頭を撫でる。

 そんなレーナに、クロは撫でられるのを気持ちよさそうにする。


 「でも、これからクロちゃんと行動を共にするのに、私だけクロちゃんの声が聞こえないのは、不便ですね」


 レーナが懸念を口にする。

 確かに、これから僕はクロを従魔にして、テイマーとしてレーナと戦うつもりだけど、僕にしかクロの言葉が聞こえないのは、不便である。


 『どうしたの?』

 「うん?レーナにも、クロの声が聞こえないかと思って」

 『ボクの声?出来るよ!』

 「そうだよね。出来る訳………え?出来るの?」

 『うん!こうして………こう!』


 クロがレーナに向かって、魔力の線の様な物を伸ばす。

 その線がレーナの体に触れられ、クロとレーナが線で繋がる。


 『こうすれば、ボクの声が聞こえるよ!』

 「へ?何ですか、この声は?!」


 レーナが酷く驚く。

 どうやら、本当にクロの声が聞こえるみたいだ。


 どういった原理何だろう?


 黒竜に、こんな力もあるなんて、何でもありだな。

 本当に黒竜は規格外だ。


 原理を真面目に考えても、馬鹿らしい気がする。


 『これで、ボクの声はパパとママにも聞こえるね』

 「ママ?」


 僕は首を傾げる。

 パパは僕のことだけど、ママとは………と考えたところで、ここでママと呼ばれる人なんてレーナぐらいだ。


 「ふふ…ママですか。何か新鮮な感じですね」


 レーナはママと呼ばれて上機嫌である。


 「しかし、どうしてママなのでしょう?」

 『ママからはパパの匂いが凄くついてて、パパからもママの匂いがたくさんついてるから!!』


 それは、クロの何気ない言葉。

 だけど、


 「「っ?!」」


 僕もレーナも一斉に顔を赤くさせる。

 互いに気まずい顔をする。


 クロが嗅いでいる僕に付いたレーナの匂い、そしてレーナに付いた僕の匂いは完全に、昨晩のアレが原因だ。


 あれだけ、したんだ。

 互いの体に匂いぐらい付いているはず。


 「そ、そう言えば…クロちゃんは飛べるのですか?」


 レーナが話題を逸らす。

 確かに、僕も気になる。


 クロには、親の黒竜と同じく、しっかりと翼が付いている。

 もし、この翼で僕とレーナが乗り、飛行することが出来るのなら、僕の兄のペルシャが乗っているスカイドラゴンのように、障害物を無視して直線的に移動が出来る。


 これからの「漆黒の森」の横断に、大いに容易になる。


 『う~ん…どうだろう。ちょっと飛んでみる!』


 そう言って、クロは翼を広げる。

 漆黒の翼が広げ、飛ぶ態勢を整える。


 そして、バサ…バサ…と、翼を動かし始める。


 クロの足元に砂埃が舞うが、


 『うう!くう!』


 少しだけ浮かぶ上がる。

 でも、それだけだった。


 僕の身長ぐらい浮かび上がったが、それ以上…上に飛べなかった。


 ほんの少し飛んでから、クロは地面に降りる。


 『………疲れた』


 どうやら、今ので飛びための体力を使い果たしたようだ。


 これでは、僕とレーナを乗せて、飛行は到底無理だろう。

 生まれたばかりだし、仕方が無いか。


 「今日は休みましょう。明日、また「漆黒の森」を歩きましょう」


 レーナの提案に、僕もクロも賛成する。


 『ボク、パパとママのお話聞きたい!』


 クロは、僕とレーナの事情について興味津々だった。

 だから、その日の夜…僕とレーナはそれぞれの身の上話をクロに聞かせる。


 元々、セイクリッド王国でアーカイブ辺境伯領とシンギュラル公爵領の出身であり、互いに婚約者であること。


 そして、二人共【ジョブ】の儀式で、不遇職と呼ばれる【ジョブ】を授かり、「漆黒の森」に追放にされたこと。









 クロが生まれた次の日の朝。

 僕とレーナ、そしてクロは、地下の大空洞を出て、また「漆黒の森」の中を歩こうとしていた。


 『パパ、ママ。これから、何処に行くの?』


 クロが、これからの行き先を聞く。


 「そうだね。僕とレーナは故郷のセイクリッド王国を追放されちゃったから、もう王国の戻れないんだよね。だから、兎に角…「漆黒の森」の向こう側に向かっているんだ」

 『そっか。ボク…パパとママがいれば、平気』


 子供ながらのクロの純粋な言葉に、僕もレーナも微笑む。

 二人して、クロの頭を撫でる。




 そして、僕、レーナ、クロの三人で、「漆黒の森」を歩き始める。


 と言っても、ここは「漆黒の森」。

 歩いて早々、魔物出くわす。


 「「「「「ガウウ!!」」」」」


 目の前に、ワイルドウルフの群れが立ちはだかる。

 僕達を逃がさないように、数の有利を活かして取り囲む。


 ワイルドウルフ自体、単体ではゴブリンより上だが、オークやオーガなどに劣る。


 しかし、厄介なのは数を活かした連携力だ。

 ワイルドウルフは高い知能を持ち、人間顔負けの陣形を組んで獲物を仕留めるのだ。


 決して油断していい相手ではない。


 「リックは下がってください」


 レーナが前に出る。

 『魔闘術』の構えを取る。


 「「「ガウ!!」」」


 前に出てきたレーナに、早速3匹のワイルドウルフが飛び掛かる。


 前方、右斜め前、左斜め前と3方向の飛びかかり。

 レーナが1匹に対処している間に、別の2方向から攻撃するつもりだ。


 知能の高いワイルドウルフらしい戦法だ。


 けど、


 「はあ!」


 レーナは左足を地面に付き、右足の蹴りで斜め右前、右拳の突きで前方、左拳の手刀で左斜め前のワイルドウルフへ、同時に攻撃を入れる。


 崩れる3匹のワイルドウルフ。


 レーナも並みの人では無い。

 そもそも人ではなく、半魔人だが。


 「これは!」


 レーナが首を傾て、攻撃を避ける。

 レーナの傾けた顔の横をワイルドウルフの爪が通り過ぎる。


 前方から襲い掛かったワイルドウルフの背後から、4匹目のワイルドウルフが隠れていたのだ。


 どうやら、3方向にもレーナが対処した場合を見越しての、2段構えだったみたいだ。


 「今です!〈呪闇・毒〉」


 ここで、レーナは彼女の【ジョブ】である『呪導師』のスキルの状態異常を引き起こす闇を纏わせた右拳を、4匹目のワイルドウルフに打ち込む。


 「はああ!!」


 それだけで無く、〈呪闇・毒〉を纏わせた右拳で、4匹のワイルドウルフを何度も攻撃する。

 まさに、毒突きの連打。


 毒による多段攻撃が叩きこまれる。


 それにより、レーナに攻撃を仕掛けてきたワイルドウルフ4匹は、口から泡を吐き、息絶える。

 あれは毒状態になった証拠だ。


 「毒が効いています。これが『呪導師』の本来の力ですか」


 レーナは自身の右拳に纏わせた闇を見て、感心する。


 あれが『呪導師』の正しい戦い方。


 クロの親の黒竜は言っていた。

 『呪導師』のデバフを引き起こす闇は本来、近接戦で使うものだと。


 近接攻撃と一緒に使うことで、敵にデバフを掛けた攻撃を同時に仕掛けられる。

 『魔闘術』を使うレーナにとって、とても相性が良い。


 『ママ、強い!!』


 クロがレーナの戦いを見て、はしゃぐ。


 そんなクロと僕の近くにも、ワイルドウルフが。


 僕はナイフを構えて臨戦態勢を取る。

 来ている防具と待っている武器は、生前に集めた物である。


 レーナの足手まといに成らないように、防御力高めの鎧を着こんでいる。


 けれど、数秒後…その防具も必要が無かったことを思い知る。


 『うりゃあ!!』


 気合を込めたクロの尻尾による薙ぎ払いが、ワイルドウルフを襲う。


 その薙ぎ払いは、傍目から見ても、尻尾の攻撃よりも丸太の薙ぎ払いだ。


 それによって、ワイルドウルフは瞬く間に薙ぎ払われる。


 流石は、黒竜。

 子供なのに、ただの尻尾の振りが必殺レベルの攻撃になっている。


 レーナとクロによって、ワイルドウルフに群れは、物の数分で討伐された。


 「やりましたね、リック、クロちゃん」

 『うん!ママもカッコ良かったよ!』


 グウウウウウ!!!

 その時、地面が大きく揺れる。


 僕とレーナが身構えていると、前方の地面が大きく盛り上がる。


 盛り上がった地面は、そのまま巨大な人の様な形を取る。


 「あれは、ロックゴーレム!」


 それは全身岩で出来た人型の魔物であった。


 全長10メートルもある巨人であり、全身が岩で出来ているので、下手な攻撃は通じない。

 怪力も飛んでもなく、下手なドラゴンよりは強いかもしれない。


 あれは全てが岩と魔力で作られているので、生物に聞く毒や麻痺は効かない。


 恐らく、今のレーナには倒せない魔物。

 レーナも大きく警戒して、僕の方へ寄る。


 ロックゴーレムの額の目に相当する二つの光が僕達を捉える。


 そんな中、ロックゴーレムに向かう一つの影があった。

 それはクロだった。


 『ボクに任せて!!』


 クロは何か名案があるのか。

 口を大きく開き始める。


 数瞬後、そこに魔力が集中されるのを感じる。


 『これでも……………喰らえぇぇ!!!』


 クロが口を大きく開く。


 次の瞬間。

 ゴオオオオオオ!!!


 その口から放たれたのは、業火。

 空気に含まれる水気が一気になくなるほどの熱量を持ったクロの炎が、ロックゴーレムに向かって放たれる。


 思い出すのは、地面からアースドラゴンを焼き尽くした炎。


 あれはクロの親である黒竜が欠伸をした際に履いたブレスだが、あれに匹敵するかもしれない。


 シュウゥゥ…。

 ロックゴーレムは、クロの炎のブレスによって、溶かされる。


 岩が火によって溶けた後が、離れた僕にも聞こえる。


 『やったー!』


 喜ぶクロ。

 そこへ、よくやったと褒める僕とレーナ。


 「行こう、レーナ」


 僕はレーナに手を差し出す。


 「ええ、勿論」


 その手をレーナは当然のように受け取る。


 そして、僕達は進む。

 『ドラゴンテイマー』として、婚約者であったレーナと共に生きていくんだ。




これにて、『ドラゴンテイマー』は一旦終了。

余力があれば、また書くかもしれません。

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