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『ドラゴンテイマー』 ~追放された不遇職持ちである僕は、婚約者だった公爵令嬢と共に、何とか生き抜いていく~  作者: 保志真佐


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 いきなり、黒竜の子供が僕に対して、パパと言いだす。

 僕は目を丸くさせる。


 黒竜の子供の言葉が聞こえるのは、僕の【ジョブ】である『ドラゴンテイマー』のお陰であり、言葉の意味が分かるのは、この子供の親である黒竜が僕に「竜の言葉」が分かるように力をくれたおかげだ。


 驚いたのは、生まれたての子供がいきなり意味の分かる言葉を発した事だ。


 普通の人の場合、生まれたの子供は言葉を発しない。

 時間を掛けて、親を見て、言葉を覚えるのだ。


 ……………いや、それを考えたら、生まれたての黒竜の子供がすぐに動けるのも、可笑しい。

 黒竜に、人の常識を当てはめるものでは無い。


 ただでさえ、最強種と呼ばれるドラゴン。

 その中でも、得意な黒竜。


 その子供が普通な訳ない。


 でも、どうして僕をパパだと思ったのだろう。

 僕は今も、こうして甘えた様子を見せる黒竜の子供に尋ねてみる。


 「なんで……僕がパパなの?」

 『パパから特別な力を感じる!』

 「特別な力?」

 『うん!パパからボクと同じ力を感じる!』


 ボクと同じ力。

 つまり、黒竜の力。


 身に覚えはある。

 竜の言葉を理解できるように、黒竜が僕に知識を与えた。


 恐らく、それが黒竜の子供が言う特別な力。

 何と言うか………これだと、親である黒竜から子供を奪った気分だ。


 と言っても、黒竜は光となって消える前に、僕達に子供を託したのだから、別に良いのか。


 「その黒竜は何と言っているのですか?」


 『ドラゴンテイマー』である僕しかドラゴンの声が聞こえないので、黒竜の子供と会話しているように見える僕を見て、訝し気に問う。


 僕は黒竜の子供の言った事を、レーナに伝える。

 レーナが目を点にさせる。


 「黒竜が………そんなことを。それにしても、リックが………パパなんて」

 「うん、僕も驚いたよ」


 これから黒竜の子供をどうしよう。

 黒竜から託されたとはいえ、僕とレーナは追放された身。


 もう、アーカイブ領には戻れない。

 ならば、この黒竜の子供は、僕達が連れて行くことになる。


 最強種であるドラゴンを僕達が。


 ここで、レーナがあることを思いつく。


 「リック、もしかしたらですけど…この黒竜の子供を調伏しては、どうでしょう?」

 「え、調伏?!」

 「はい。リックは『ドラゴンテイマー』です。ならば、黒竜の子供も理論上テイム可能です。この子が調伏を拒否しなければですが。しかし、ここまで懐いているのなら、拒否はしないと思います」


 レーナの言葉は、まさに盲点だった。


 僕は一度、アースドラゴンに調伏を行ったが、想像通り弾かれた。

 だから、黒竜になんて効かないと思っていたけど、確かに、もしかしたら行けるかもしれない。


 本来、調伏と言うのは、テイマーが調伏をする者を超える強さを持っていないと成立しない。


 けれど、テイムの基本がそれであって、実は、テイムされる者がテイムを快く受け入れた場合、調伏を成立するのだ。


 テイマーがテイムするのは、大体が魔物であり、人よりもずっと生物的に優れた存在。

 そんな存在が人の調伏を快く受け入れるはずないという先入観があった。


 「そうだね。ものは試しだ」


 僕は今も潤んだ目を向けてくる黒竜の子供に向かって、手をかざす。

 そして、唱える。


 「〈調伏〉」


 僕の魔力が黒竜の子供に向かう。

 向かった魔力は、黒竜の周囲を纏い始める。


 黒竜は分かるのか、周囲に首を回す。


 『わ!なにこれ!パパの力が周りに集まってる!』


 当の黒竜は、調伏を全く拒否するどころか、警戒もしていない。

 黒竜の子供は友好的である。


 「調伏を受け入れてくれる?」

 『チョウブク?よく分からないけど、これを受けれれば良いの?』

 「うん。調伏が出来れば、僕の従魔になる」

 『良いよ!』


 そう言った黒竜の子供は、〈調伏〉を受け入れる。


 すると、


 『調伏が成功しました。黒竜をテイムしました』


 僕の頭の中に誰かの声が聞こえる。

 それと同時に、


 「う?!」


 僕は疼く。


 「リック、大丈夫ですか?!」


 心配したレーナが僕を支える。


 僕はレーナに大丈夫と言いながら、流れ込んできた力の放流に驚愕する。

 物凄い力が流れ込んでくるのを感じる。


 まるで、大河の水が一斉に僕に流れ込んできたような感覚。

 調伏を通じて、黒竜の子供の力の一部が僕に流れ込んできたのだ。


 これはテイマーとしての特性だ。


 テイマーは何かをテイムすると、テイムした従魔から力の一部が貰えるのだ。

 そうして、テイマーは力を付ける。


 力を付けたテイマーは、さらに強い従魔をテイムすることが出来る。

 さらに強い従魔をテイム出来れば、当然テイマーはもっと力を付けられる。


 そうして、テイマーはどんどんとテイムを繰り返し、強力な力を付けていくのだ。


 これこそが、テイムの大原則。


 でも、何て力だ。

 一部なのに、飛んでも無い万能感に満ち満ちてる。


 さっきまで鉛入りの鎧を着ていたのに、身体が羽毛のように軽い。


 僕は思い立って、思いっきり上に飛ぶ。


 シュン!

 すると、僕の身体能力とは思えないほどの距離をジャンプできた。


 レーナも驚いている。


 「なんて、肉体強化。ドラゴン…しかも、黒竜とは言え、テイムしただけで、ここまでの力を付けるとは。リックの体からは私にも負けない程の魔力を感じられます」


 半魔人のレーナにも負けない程の魔力。

 何て魔力量だ。


 僕とレーナが調伏の結果に驚いている一方、黒竜の子供は何かを期待している顔をしていた。


 『ねぇ、ねぇ、パパ。ボクに名前を頂戴』

 「ん?名前?」


 そこで、また頭に誰の声が聞こえる。


 『黒竜に名前を付けますか?』


 それはテイマーがテイムした従魔に名前を付けられるシステム。

 と言っても、名前を付けたからと言って、何かが変わる訳では無い。


 だから、テイマーの間では名前つけのシステム何て、何の得もない仕様だと思われている。


 でも、初めての従魔なんだ。

 名前つけないと可哀想だ。


 僕は少し考えて、名前を思いつく。


 「よし。名前はクロだ」


 かなり安直かな?


 『クロ!』


 だけど、当の黒竜…………クロは嬉しそうである。


 『黒竜の名前をクロとしました』


 頭の中の声が黒竜の名前をクロと認定する。




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