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『ドラゴンテイマー』 ~追放された不遇職持ちである僕は、婚約者だった公爵令嬢と共に、何とか生き抜いていく~  作者: 保志真佐


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15魔人




 「そう…レーナは半魔人なんです」


 僕は黒竜の声が聞こえないレーナに、さっき黒竜が話したことを伝える。


 レーナの反応は一瞬驚きつつ、納得顔で俯く。


 「ドラゴンには、分かるのですね。私は…人とは違うと」


 レーナは自身の右手で、左腕を握る。

 彼女の姿は完全に人だが、人は違う。


 レーナは、ずっとその事を、気にしないように生きてきた。

 けれど、やっぱり半魔人だと、自分は普通の人間では無いことを実感するのだろう。


 『そうだな。お主は明らかに人とは違う』


 黒竜は目を伏せる。

 同情をしているのか。


 そして、僕の口から語られるのは、人と魔人の歴史。









 この世界には、魔人という人とは違う生き物がいる。


 定義的には、人の姿をした魔物…と言うことで、魔人だ。


 魔人は他の魔物とは違っている。

 それは、人と概ね同程度の姿かたちであり、知能があり、様々な能力を持っていることだ。


 魔物が、ただの獣なら、魔人は魔物の強さを持った人間だろうか。


 彼ら魔人には、色々と種類がいる。

 人に近い姿の魔人もいれば、人と見分けがつかない姿の魔人もいる。


 とはいえ、どの魔人も言葉を話し、魔人同士で作戦を立てられ、力を合わせて、人間を殺そうとする。

 なぜ殺そうと知るのかは不明。


 数百年前は、多くの人間と魔人同士が戦争していたのだ。

 強力な力を持つ魔人に対して、人間側は【ジョブ】の力で対抗できた。


 【ジョブ】は人だけが持つ力。

 魔人には、【ジョブ】が無い。


 レーナとか言う半魔人の例外を除いて。


 レーナは半分人、半分魔人なので、魔人特有の強靭な体を持ちつつ、人の特権である【ジョブ】を持っているのだ。


 大勢の人間に対して、魔人側は人間の総数の一割の人口に満たなかったとされている。

 それでも、戦争は常に拮抗していた。


 魔人は強靭な肉体に加え、【ジョブ】に近い特殊な能力を持っていたからだ。

 だから、互角の戦争だったのだ。


 レーナに関しては、強靭な体以外見たことが無い。

 もしかして、レーナも特殊な能力が使えるのか。


 拮抗していた戦争にも終わりを迎える。


 拮抗していたはずの戦争が突如、人間側の優勢に変わったのだ。

 勢いを付けた人間側は魔人たちを駆逐した。


 そうして、生き残った魔人たちは何処かへ消えたと言われている。


 戦争が終わってから数百年間、誰も魔人の姿を見た者はいない









 これが、僕がアーカイブ領で学んだ人間と魔人の戦争の全容だ。

 僕だけでなく、セイクリッド王国民全員が知っている一般常識だ。


 『ふむ…その歴史で概ね合っている。我も遥か上空で、その戦争を見ていたが、中々白熱した戦いだった』


 黒竜が、僕が言った人間と魔人の歴史について同意する。


 『その魔人……いや、半魔人が、そこの娘とは、何とも不思議なものだな。人と魔人のハーフとは。初めて見たな』


 黒竜がレーナを見て、言う。


 そうなのだ。

 ここで、問題なのはシンギュラル公爵家の長女のレーナが半魔人なのかと言う事だ。


 『魔人は本来、魔力で出来た生命体。肉体で出来た人間とは混じらないと思っていたが、何とも面白い』


 ドラゴンの声は僕にしか聞こえないけど、黒竜が自身の事情を聴きたいことは伝わったのだろう。


 黒竜の凝視に、レーナは自身の出自を話し始める。


 「私は……そもそもシンギュラル公爵は、元々…初代当主である半魔人が建てた貴族家。人と魔人側の中で唯一、人と手を組んだ魔人がいました。その魔人と人との間に生まれたのが、シンギュラル公爵家の初代当主です」


 レーナの口から発せられるのは、人と魔人との戦争の裏の歴史。

 シンギュラル公爵しか知らない事実。


 「人と魔人との戦争の特異点は、まさに魔人側の一人が寝返ったからです。何故寝返ったのかは分かりません。しかし、そのお陰で人は魔人との戦争に勝ちました。魔人はいなくなり、その後…数百年に渡って、シンギュラル公爵家から魔人の血は薄まっていき、そして…殆ど無くなくなりました」


 そこまで行って、レーナは顔を上げる。


 「私が生まれるまでは」


 数百年かけて、ほぼ無くなりつつあった魔人の血は、レーナの時に再発する。


 「何故、突然私だけが魔人の血を受け継ぎ、半魔人として生まれたかは知りません。恐らく先祖返りなのでしょう。しかし、お父様…私の実の父は、その事実を許しませんでした」


 思い出すのは、【ジョブ】の儀式の場で、不遇職を得たレーナに対して怒るレーナの父のシンギュラル公爵。


 あの人は一度として、レーナを名前で呼んだことは無いそうだ。

 レーナを嫌ってのことではない。


 もっと根本的な、半魔人を憎悪する感情があったのだ。


 「家としての外見や家の歴史を考えて、私は処分されませんでした。けれど、ことあるごとに、父は私を化け物呼び。初代当主が私と同じ半魔人であり、自分にも魔人の血が少しでも流れている父は、自身の血統にも嫌悪しました。そして、昨日の【ジョブ】の儀式。あれで不遇職を得た私に対して、父は私と言う異分子を家系から追放するのに好都合と捉えたのでしょう」

 『それは何とも気の毒』


 レーナが半魔人であることは、ずっと前に知っていた僕でも同情する話だけど、黒竜まで同情するとは。


 『レーナ…と言ったか、お主…肉体を持ちつつ、内に強力な魔力を持っているな。人よりも強靭な力を持っている。お主、不遇職と言ったが、何の【ジョブ】を持っているか?』


 黒竜がレーナの【ジョブ】を聞く。


 僕が黒竜の言葉を代弁する。


 「レーナ、黒竜がレーナの【ジョブ】を聞いてる」

 「え?……ああ、私の【ジョブ】は『呪導師』です」


 レーナが自身の【ジョブ】を言う。


 『呪導師』…それは、世間一般で不遇職。

 それを聞いた黒竜は、目を見開く。


 「『呪導師』?!それは良き【ジョブ】を得たな!』

 「え?」


 黒竜の声が分かる僕だけが、黒竜の発言に真っ先に口を半開きにして驚く。




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